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Ahmadiyya Mosque

Akhaltsikhe, Georgia : アハルツィヘ・ジョージア  Akhaltsikhe城もしくはRabatiと呼ばれる要塞の中にビザンツ様式のモスクの史跡や正教会などが立ち並ぶ。モスクのみならず要塞全体を丁寧にリノベーションしたため、モスクは今でも礼拝に使用しているような外観であるが、もう既に礼拝の場としての機能はなく、遺構として保存されているのみである。また、直前までモスクとして使用されたのでもなく、最後に使われたのは正教会としてであった。城壁の内部は多様性を表現したテーマパーク風で、観光客を呼ぶために造り上げた感がするが、Akhaltsikheの街はトルコ国境に近く、ジョージアを訪れる観光コースから大幅に外れており静かな街である。辺境に近い場所であるがこのモスク跡を訪れているムスリムのツアー団体は実によく見かけたので、わざわざここまで来ているのだろう。外観のミナレットと礼拝堂内部にミフラーブが残されているので、モスクとして使われていたことがわかるが、構造的にはイスラーム建築の要素はほぼない。正方形の礼拝堂にドームが架かる集中式と呼ばれるビザンツ建築で、トルコ・イスタンブールの現 Hagia Sophia Grand Mosque を参考にしたそうである。玄関を入ると真正面にキリスト教会での後陣(アプス)と呼ばれるやや細長い半ドームが載った、内部から見ると窪みがあり、そこだけは入場不可になっていた。モスクとしては広過ぎる感もあり、最初からモスクとしてのデザインで建てるつもりでもなかったようにも思われる。周囲は同じように再建された回廊と池、背後にはテラスのあるマドラサ(学校)も建っている。

Bur Dubai Grand Mosque

Dubai, United Arab Emirates : ドバイ・アラブ首長国連邦  ドバイ旧市街、歴史建築が立ち並ぶクリーク沿いに建つアラブ様式のモスク。周囲は要塞と美術館やスーク(市場)、アラブ家屋が立ち並び、古くから栄えたアラビア風情のある地区で、モスクもそれに溶け込んでる。現在でもドバイを代表する旧市街では最大級のモスクで、建造が礼拝堂上部に9個の大ドーム、それを囲むように建物の輪郭に沿って45個もの小ドームが並ぶ。ミナレットは断面が2個のバルコニーを挟んで四角形から八角形、頭頂部は円になり高さは70mもある。付近は高い建築物はないので遠くからでも目立つものだ。外装はシンプルで、アーチにはめ込まれたステンドグラス様の装飾が光を透かして礼拝堂の中へと入る。内部は9個の大ドームが3列×3列で配置され、それを支える柱が並び、シャンデリアが光輝く。ドームには小さな丸い灯り取りの窓がつく。

Laleli Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  市内中心から丘へ向かう大通りの緩やかな坂の途中に一段高く造られた。ストライプ模様が粋なのであるが、見上げるとドームは意外に武骨な造りで、オスマン様式とバロックの折衷のデザインである。全体にシャープな印象なのだが、ドームのあるキブラ壁側の端にある、孔の開いた緩い曲線のフライングバットレス状のデザインが随分それを和らげている気がする。同じくドームにも一部ある、同じような控え壁の機能としては多分意味がなさそうな、装飾だけで付け足したようなこのデザインが個人的に好きである。他にイスタンブールのÜsküdar地区にある Selimiye Mosque 等でも見られたのだが、趣きあるものだ。礼拝堂内部はカラフルなステンドグラスと絡み合うようなシャンデリアで絢爛。

Sultan Ala'eddin Royal Mosque

Selangor, Malaysia : スランゴール・マレーシア  クアラルンプール近郊、スランゴール州の小さな街Bantingにコロニアル建築のモスクで、その美しさはマレーシアでも随一のものであると思う。市内からも遠く離れた椰子が生い茂る小さなカンポン(集落)に、このモスクとIstana Bandarというスルタンの元宮殿があり、マレーシアの歴史建築マニアであれば是非訪れたいところである。モスクは1900年初頭から中期前のもので、スルタンの住む上述の邸宅そばに造られた。Istana Bandarは入場できるようであるが、今回は入場できず。いつできるかは不明なので事前に確認要。共にマレーシア国内では有名ではあるようだが、交通が不便な為かどちらも観光客とは一人も会わずであった。建築はメインドームとピラミッド型の台座、柱状の装飾、深いオレンジ色の瓦屋根に白い壁とインド・サラセン様式で建造されたKL市内の歴史建築群と同じような雰囲気である。ミナレットは礼拝堂に躯体を半分埋め込まれた状態で、2段のバルコニーをもつ。鍾乳石模様ではなく、多数の持ち送り構造でデザインされており、重厚なインド風に見える。礼拝堂は多数の白いアーチで支えられ、ミフラーブのあるドーム直下は2重の馬蹄形アーチで回廊のように囲われている。

Bab Al-Islam Gifu Mosque

Gifu, Japan : 岐阜・日本  日本では現存のビルや家屋などの建築物を転用することが多い。モスクらしいモスクとでも言おうか、今回訪れた通称岐阜モスクのようなイスラーム建築には、なかなか出会えないものだ。出迎えてくれたイマームはシリアから来た元留学生とのことで、以前は四国でのモスクの転用に携わり、ここに来たという。外装のデザインは3個のドーム、2本のミナレット、ミニマムなアラブ風であるが内部はオスマン様式のデザインだ。ちなみに建築家は南米ペルーのキリスト教徒で、宗教建築の知識がありお願いしたそうだ。田園の緑の中に白いモスクが際立って見える。2008年に完成し、内部は教育施設もあるムスリムのための文化センターとしての役割もある。長方形で2回建ての礼拝堂は前述の通りトルコからオスマン様式の花の文様のタイルは貼られ、UAEからのシャンデリアが吊り下がる。メインドームもトルコ風のシンプルな花の文様で飾られている。

Jamia Al-Musulman Mosque

Ho Chi Minh City, Vietnam : ホーチミンシティ・ベトナム  ホーチミンシティ中心部、ショッピングモールや高層ホテルが並ぶ繁華街近くに、ペールグリーンのモスクが建つ。ファサード上部のオーナメントには建立された1935年の数字と、旧宗主国のフランス語でモスクを表す「Mosquée」の文字が刻まれている。礼拝堂は正方形で、メインドームはない。4隅に玉葱型ドームを冠した4本のミナレットが聳える。奥の隅のミナレットはほぼ正面からは見えず、裏庭に回ると見ることができる。正面の通りから見ると樹木の茂る小さな庭と階段があり、登ったところが中庭になっている。靴を脱いで礼拝堂に上がると回廊があり、2階正面部分の更に中が礼拝室がある。訪れた時は礼拝室は閉じていたので、見学できたのは回廊部分のみ。ファサードは7個の多弁形アーチが造られ、ベトナムの幾つかのモスクと共通してインド系住民が建立に携わっていたようで、このモスクも色合いや小さなドームなどの雰囲気はシンガポールやマレーシアなどで見られる南インド系住民のモスクに似ている。

Ali Kuscu Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  イスタンブール郊外に建造された、世界でも最大級のイスタンブール空港に付随するモスク。その名はオスマン帝国の数学・神学・天文学学者のAli Qushjiから採られた。モスクもまた巨大で、空港の到着ターミナルより地下鉄のイスタンブール空港駅へ歩いて向かい、駅へ着くとその視線の斜め先にお椀を伏せたようなドームが景色に浮かぶ。遠くに見えるが駅とは通路で繋がっていて、橋を渡り、緩やかな公園のような道を10分ほど歩いてモスクの門へ着く。構造自体は長方形の回廊に囲まれた中庭とサブドームのあるエントランス、奥に傘のようなドームがせり出した2重のドームで、ドームそのものが礼拝堂になった現代建築とオスマン様式の折衷のデザインである。ミナレットは2本が建ち、鉛筆型のオスマン様式で造られた。礼拝堂はドームまでの高さのある幾何学文様の細長いステンドグラスで日光を取り込み、淡いターコイズブルーで厳かに照らされていた。

National Mosque

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  最近はクアラルンプールの郊外に大・中規模なモスクが造られているが、依然市内中心部では最大級のモスクである。モスクは国立で1965年に完成、全体で1万5000人を収容できる。ドームはエメラルドグリーンの先端が鋸の歯状の傘を開いたようなデザインで、伝統的なモスク建築が主流だった当時では斬新であったと思う。後に有名なShah Alamの ブルーモスク も手掛けた、当時の公共事業局の専任技師であった故Baharuddin Abu Kassim氏によるもの。礼拝堂前には長方形のプールがあり、水面に鋭角のミナレットが浮かび上がる。礼拝堂内部は2階建てのバルコニーが囲み天井のドームも外観の通り傘状である。細い柱の立ち並ぶ回廊は中東の多柱式のモスクにインスピレーションを得たと思われるものだ。街の中心から近く、付近も観光地が多いので気軽にイスラーム建築を感じるツーリストでにぎわい、皆で写真を撮っている。2階のプールのある回廊の先端からはクアラルンプール市内が一望できる。

Aliyid Daroin Mosque

Ayutthaya, Thailand : アユタヤ・タイ  アユタヤ最古のモスクのひとつで、一見タイでよく見かけるコンクリート造りの礼拝堂であるが武骨な感じはなく、木製の窓やドア、アーチ文様の飾りで重厚で美しくデザインされている。平屋建てで、壁に内接してフラットな屋根からミナレットが2本突き出ている。ミナレットは6角柱からバルコニーを経て4角に、頭頂部は角錐に金のオーナメントが飾られている。礼拝堂にはドームはないが横に据えられた廟の上に大きなエメラルドグリーンのドームが据え置かれている。モスクのあるPhu Khao Thong地区はスーフィー派の指導者Shakh Muhummad Ali Sukariを始祖とする集落で、独特の音楽を使う祭事で知られている。

Mihrimah Sultan Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  オスマン帝国時代の天才建築家ミマール・スィナン設計のモスクとその巨大な複合施設で、ヨーロッパ側のEdirnekapıに建つ。同名のモスクが海を隔てたÜsküdarにもある。その名は珍しく女性の名を冠し、オスマン帝国のスルタンであるスレイマン1世の娘のMihrimah Sultanから採られた。2つのモスクの建造の資金援助はMihrimah Sultanからのもので、こちらは2番目に造られたものである。モスクは地上から階段を上がる台地の大きな敷地の中に建ち、階下はよくあるように家賃収入のためのいくつかの商店が入っている。長方形の中庭はドームの載った長い回廊で囲まれ、マドラサ(神学校)として使われた部屋が残っている。モスク自体は伝統的なオスマン様式の建築で、ミナレットはこの規模のモスクに珍しく1本のみ。内部はメインドーム直下の正方形の礼拝堂と、3個のサブドームとアーチで支えられた2本の側廊から成る。中庭反対側の東南の庭からは立ち上がるキブラ壁方向のモスクを望め、4隅の塔状の柱と側廊に、階段のようなデザインのバットレス (控え壁)が付いているのが見える。

Al-Sultan Abdullah Mosque

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  地上118階建て、既存のマレーシアの超高層建築を凌駕するMerdeka 118の膝元にある。Merdeka 118と共にモスクも新しく造られ、美術館とにも見えるような洗練されたデザインである。ファサード側は細長い庭園に沿って一直線に伸び、その庭園の延長線上でモスクとビルは結ばれている。オレンジ色の緩やかに湾曲し、先端が鋭角となったユニークなデザインの屋根がモスク全体を覆っている。モスク自体は直角二等辺三角形で鋭角の端にミナレットが建つ。ドームは外からは見えないが礼拝堂に幾何学文様のメインドームがある。

Juma Mosque

Tbilisi, Georgia : トビリシ・ジョージア  ジョージアのあるコーカサスは古くから現代まで戦火が絶えず、現在は領土問題は抱えつつもジョージア、トビリシ付近は比較的安静ではある。過去にはオスマントルコやペルシアに支配されていたため食文化をみてもイスラーム時代を感じ取れることもある。しかし、現代ではグルジア正教が国民に行き渡り、街や建築は西洋化、もしくはソ連時代を匂わせるものが普通で旧市街以外でイスラーム文化はあまり見当たらないのだが、実は意外にもムスリムは多いようだ。地方都市にもいくつか古いモスク、新築したモスクなどがある。このモスクは現在は改築されているが、トビリシの中心的なモスクで、それほど大きなモスクではないが重要なイスラーム建築でもある。ナリカラ要塞へ向かう急勾配の坂の途中にあり、切妻屋根の赤いレンガ造りで、教会のようなゴシック建築で造られている。頭頂部に菱模様の玉子を切ったような形状のドーム、ほぼ角柱に近い8角形のどっしりとしたミナレットが目立つ。礼拝堂は2列にアーチで2部屋に区切られており、左右対称で2個のミフラーブをもつ。スンニ派、シーア派ともに礼拝できるようにしていたそうである。内装は淡いブルーのオスマン調の植物文様で飾られている。

Pertevniyal Valide Sultan Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  緻密な礼拝堂の外装を大通りの交差点向けて建つ、目をひくデザインのモスクで、映える重厚な外観からか観光客が幾人も背景に入れ撮影をしていた。外観に目を引くようなデザインを取り入れない典型的なオスマン帝国時代の様式のモスクと異なり、オスマン様式にゴシック様式その他を折衷したものに見える。ミフラーブのある交差点側、礼拝堂のキブラ壁の窓枠の装飾は、最早ゴシック教会そのままである。礼拝堂4隅の尖塔の先端には、玉葱型というよりもバングラデシュのオールドダッカのモスクで見かけたような南瓜型の小さなドームが載っている。どちらが正面なのかわからないほど緻密な飾られたのと逆にエントランスのホール側はそれほどの密度の装飾はない。ミナレットは2本、ドーム自体のデザインはオスマン様式であるが半ドームや小ドームを組み合わせるようなデザインはなく、メインドーム1個のみ。玄関壁には1871完成の碑が貼られている。建築は明らかにヨーロッパ系の建築家によるもので、諸説あるがモスクの公式の案内板では、当時西洋建築の技術でモスクや宮殿を建造していた建築家一家のSarkis Balyanらによるものと考えられるようだ。表通りから掘り下げた門も同じく緻密に造り込まれているので、そちらも見るとよいと思う。

Goowatin Islam Mosque

Bangok, Thailand : バンコク・タイ  モスクはチャオプラヤー川沿いに佇み、川辺にテラスと小さな船着き場をもつ歴史建築である。寄棟造りの緑色のタイル屋根に白い壁と、旧市街付近に古くから立ち並ぶコロニアル建築と趣きはさほど変わらないが門や壁にはアーチが彫り込まれおりモスクであることがわかる。ミナレットは川側からしか望めず、川が生活の中心であった時代を感じる。ドームは礼拝堂になく、テラスの休憩所の上に飾られているおり、こちらも陸側からは殆ど見ることができない。現在はこの付近にはインド系のコミュニティはないが、モスクは過去、マレーシアやインドからのムスリム移民のために造られたもの。付近一帯は成功したインド系の富豪ナナ家の土地で、当時はインド系住民が多く住んでおり、赤いレンガの倉庫が立ち並んでいたそうだ。近くにある Saifee Mosque もインド系のコミュニティの史跡のひとつである。他にもナナ家の経営する会社の名の入った記念のゲートも再建されたものではあるが、近くに残されている。おそらく今ではムスリム自体がこの地域に殆どいないようで、今回は好意で礼拝堂まで入ることができたが、本来はモスクは閉じており、金曜日にのみ開けているとのことである。

TNB Bangsar Mosque

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  マレーシア随一の巨大電力会社TNB-Tenaga Nasional Berhadの敷地内にある、モスクと複合施設で全体をKompleks Balai Islam An-Nurとも呼ばれている。2019年完成の現代建築でで、モスクは角が丸い不規則な5角形の3階建てでできている。白い優美な曲線と対照的なシャープなミナレット、控えめな高さのドームのミニマムなバランスが絶妙である。昼下がりの暑さの中、モスクはそよ風が通り抜け、付近の高層ビルを水面のように反射する床はひんやりとしていた。社の敷地内にあるため、従業員のためだけのモスクなのではないかと思っていたが、そうではなく外部からの礼拝は可能とのことだ。訪れたのは日曜日で誰もおらず、英語と少しの日本語を話せる警備員と話をした。

Al-Ehsan Mosque

Chau Doc, Vietnam : チャウドック・ベトナム  このモスクのあるDa Phuoc Cham村は市中心部から橋で河を渡った対岸先にあるムスリムの村である。高床の家が並び、買い物にムスリマ達が集まる小さな市場を見るとベトナムとは思えない、不思議な雰囲気だ。チャウドック市内中心はそれほどイスラームを感じない。対岸側へ渡り少し辺鄙な場所まで来ると、大乗仏教や中国発祥のベトナム文化と全く異なった世界が広がっていてなかなか面白い。実際に2組の観光客がガイドに連れられてモスクと村を訪れていた。このモスクも失礼ながら村の規模に比べると随分立派で、5行からなのか数に特徴のある5本のミナレット、金色の大きな8角のドームが随分遠くからも目立つ。外見だけでなく、礼拝堂内部も白、金、エメラルドグリーンで飾られ、美しくメンテナンスされている。礼拝室はミフラーブ側、ドーム側と2カ所にアーチで区切られている。ここは他に比べそれほどアーチやドームのデザインに南インドらしいの様式は感じられず、タイにあるモスクに相似を感じる。

Kariye Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  ビザンツ帝国時代に建造されたギリシャ正教会のThe Chora Churchをオスマン帝国の占拠後に転用したモスクであり、現在は博物館とモスクの複合施設として使用されている。教会からモスク、そして世俗化し博物館へ、その後モスクに戻され、一部を博物館と共用することになった経緯がある。訪問時点ではモスクになってから数年間の最後の修復が終えたところであった。構造は1本のミナレット以外ビザンツ様式の正教会ほぼそのままで、ドームは6個、外壁に大きなバットレスが突き出ている。内部は大きく4箇所に分かれ、うちL字型の内部拝廊と外部拝廊(インナーナルテックスとアウターナルテックス)、墓廟礼拝堂(パレクレシオン)には、ギリシャ正教会時代のフレスコ画とモザイクが残されている。L字に囲まれた現在礼拝室として使用しているナオス(内陣)には、ミフラーブ、ミンバルが置かれている。礼拝室左右と柵があるため見えにくいがエントランス真上の壁3箇所にはまだモザイクのパネルが残されている。うち1枚は聖母子のモザイクでよく目立つのだが、スタッフに礼拝時はどうするのか聞いたところ、パネルの上にロールカーテンがあり、礼拝時間はスクリーンとしてカーテンを下すとのことであった。 Hagia Sophia Grand Mosque とは規模は違うが、立ち位置は似ているので興味があればお勧めのモスクである。

King Hussein Mosque

Amman, Jordan : アンマン・ヨルダン  まるで要塞のようなヨルダン最大級のモスクがアンマン北西の小高い丘に建つ。公園に隣接しており、モスクの周囲は樹木で覆われているが、遠くから赤銅色のメインドームと四角形の大きな4本のミナレットがとても目立つ。モスクは完全な正方形で、石材はヨルダン産の淡いベージュ色の石灰岩が使用されている。デザインは地中海近辺のモスクに似ており、礼拝堂の大きなアーチのエントランスはストライプ模様のレバント地域で見られるものだ。モスクは半分が中庭で半分が礼拝堂になっており、外の庭からモスクへ入ると、柔らかい光の差分が美しい交差ヴォールトの回廊をくぐり抜けて礼拝堂に向かう。礼拝堂は金色の巨大なシャンデリアが中庭と同じ交差ヴォールトの天井に吊り下がり、ベージュの壁と絨毯の差し色の黒と赤の色合わせが現代風の洗練された雰囲気である。画像では見えにくいが、ドーム直下のミフラーブとミンバルとキブラ壁は木製で、イスラーム文様のモザイクとカリグラフィーの彫刻で装飾されている。

Mubarak Mosque

Chau Doc, Vietnam : チャウドック・ベトナム  チャウドック市街地の川を挟み対岸側に建つ、前に紹介した Jamiul Azhar Mosque 近くにあるモスクである。それほど人通りの多い集落でもないのであるが、近辺はモスクがいくつかあり、住民のチャム族のイスラーム信仰の深さを感じる。メインドームは2つあり、8角形のベランダに小ドームを載せた2層のミナレットは中央に1本、礼拝堂の4隅に小ドームの載せた尖塔が建つ。ファサードの回廊のアーチはインドのイスラーム建築で使われる多弁形アーチを使用している。どことなくマレーシアで見られるインドサラセン建築やムガール建築の要素が見られるようだ。ベージュ色、白を基調にターコイズグリーンの差し色で装飾されており、月と星のオーナメント以外に装飾は見られず、シンプルだ。礼拝堂内部の2つのドームは各々4本のターコイズグリーンのモザイクの柱で支えられている。

Miktat Agaoglu Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  このモスクはイスタンブール郊外のMaslakと呼ばれる、工科大学や中高層ビル群が立ち並ぶモダンな新興開発地区に造られた。それに相応しく、モスクも一見そうとは見えぬデザインである。ミナレットは鉄骨が剥き出しのままで、礼拝堂を囲む屋根が先端で鉄骨を挟んで天を突き上がっていくユニークな構造である。モスクは建設や観光業を営む私企業会長のAli Ağaoğlu氏により建造され2020年に完成した。亡き父の名を冠している。本人も建築家であるそうで、黒字に金色の円を組み合わせた文様の屋根、星の幾何学文様が透けるガラスに捻りの入った円の幾何学文様の格子パネルを重ね、伝統の意匠とモダンを組み合わせたスタイリッシュな礼拝堂を造り上げた。内部も黒字に金を差し色のカリグラフィーを配した落ち着いた雰囲気で、天井のルーバーの直線的な構造に大小3個の円のドームがよく映えている。ルーバーの一部の緩やかな張り出しにドームの内側文様部分が埋め込まれており、ドーム自体の内壁は見ることができない構造になっている。

As-Salt Grand Mosque

As-Salt, Jordan : サルト・ヨルダン  丘陵にクリームイエローの壁の建物がひしめき合う、独特な景観のAs-Saltにある大モスクである。モスクの原型は現在のエジプトを中心としてたマムルーク朝の時代に造られたものだが、現在は全く新しく改築されている。1階は商店と礼拝堂、2階ではムスリマが集まり何か講義をしていた。商店のファサードはアラブ風でもありながら直線を使った現代建築にアレンジされている。とは言え、ドーム本体のデザインや角が落とされた台座と窓のデザインはマムルーク建築を意識しているのではないかと思う。ドームは鈍く光るグレーに塗られている。ミナレットは1本で円柱形と円のバルコニーに八角形の屋根がつく。

The Foundation of the Islamic Centre of Thailand Mosque

Bangok, Thailand : バンコク・タイ  一風変わった、朝顔の花びらのようなコンクリート造りの6角形の傘の屋根に覆われたデザインが目を引く。ブルータリズム建築とイスラーム建築の融合で、エントランスには日除けとして、同じデザインで礼拝堂の天井屋根へと続いている。屋根のメンテナンスは大変そうであるが、この日は屋根に掃除のスタッフが上がっていて、ホースで水を撒いていた。この地域はムスリムが多く、モスクは礼拝堂の他に、イスラム財団、図書館、ホールや食事のスペースなどもある、地域のコミュニティセンターとして利用されている。六角形の礼拝堂はイスラーム文様の青いステンドグラスに覆われ、黒と金を基調にした厳かな内装であった。ドームはないが、前述の優美な曲面と鋭いエッジの天井はまるで万華鏡のようで実に美しいものだ。

Jamiul Azhar Mosque

Chau Doc, Vietnam : チャウドック・ベトナム  チャウドックの対岸側はムスリムのチャム族が住んでおり、モスクがとても多くある。そのうちのいくつかしか見てはいないが、ここはこの地区でも比較的大きいモスクであるかと思う。門は煤けてしまっていたが、白い3個のドームやミナレットはきちんとメンテナンスされていて、青空に映えている。色調やデザインはマレーシアに住むインド系ムスリムの好むようなムガール様式に近く、白を基調に、エメラルドグリーンの差し色で彩られた、端正なモスクである。敷地は広く、集落側から入ると古い門と道があり、それを進むとムガール調の白い門と広大な墓地が広がり、その奥に礼拝堂がある。裏庭側にはマドラサ(学校)が建っている。完成は1959年、月のオーナメントにその数字が刻まれている。この遠いベトナムの地でこのデザインの影響力は不明だが、チャム族の出自は海を渡ってきたマレー系であることも関係しているのだろうか。