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Bayrakli mosque (Yokush Mosque)

Samokov, Bulgaria : サモコフ・ブルガリア  首都ソフィアからは50Kmほど北へ向かう山間の小さな街サモコフに、それは美しいかつてモスクであった小さなイスラーム建築が佇んでいる。現在はモスクとしての機能は既に全くなく、美術館として使われている。バルカン半島で使われなくなったモスクは得てして内装に漆喰を塗られてしまったりミナレットを落とされたりしてしまうものだが、ほぼ完全なモスクの形状を保っているのは珍しい。片隅にはイーゼルが積まれ、モスクに全く関係ない展示もされているようでもあるが、絵画的な装飾そのものが美術の継承として残されているようだ。1845年頃に完成したと伝えられ、以降修復されている。構造は長方形の2階建てで、寄棟造りのオレンジ色の屋根に青銅色の鉛筆型ミナレットをもつ。バルカン半島でよく見られるタイプのもので、他と違うのはミナレットに煉瓦の螺旋模様があること、屋根からドームが突き出ていることかと思う。4本の柱で支えられたドームは棟の真中心でなく、ミフラーブのあるキブラ壁側に寄って載っている。ファサードは2階に7個の窓が並び、正面から見て7個のアーチを8本の柱で支える柱廊玄関になっている。アーケード状の奥まった1階には、エントランスへの通路と向かって右端に階段のユニットがある。1階の壁は左右とも写実的な花瓶に生けた花の絵やカーテンが描かれている。窓枠や玄関扉などは鮮やかなブルーで、天井は紺色に塗られている。内部は正方形の礼拝堂でエントランス頭上にバルコニーがある。ドームの14枚の窓から光が注ぎ、グレーと金色のバロック調の植物文様を照らしていて、ここがモスクでないことが不思議な程荘厳であった。ドーム内側の頭頂部は六芒星が描かれているのも特徴的である。内部にはモスクのルーツについて紹介のボードも用意されていた。

Alaca Imaret Mosque

Thessaloniki, Greece : テッサロニキ・ギリシャ  オスマン帝国時代に建造された、ギリシャ国内にほぼ原形を保ったまま現存するあまり多くはないイスラーム建築である。デザインは伝統的なオスマン様式で造られ、格子模様であったミナレットはギリシャ時代になり破壊されたため崩れた土台以外は残っていない。オスマン帝国を引き継ぐトルコではビザンチン時代の正教会はモスクに転用されている。対してギリシャでは国内に残るオスマン帝国時代の建造物は基本的に廃墟のように放置か倉庫・美術館などの別の用途に転用されている。お互いの感情を察するとなかなか第3者の視点では言い切れないことも多いが、このモスクも一度美しく修復を受けアートに展示などにも利用はされたものの、現在は他あるイスラーム建築と同じくほぼ放置された状態である。公園と駐車場に囲まれており、外装だけ見に行くことは現在可能。メインドームは2個あり、ポルティコの小ドームは5個。メインドームを挟んで小ドームが2個づつ並んでいる。見慣れない煙突状の突起が側面に3本見えるのは、おそらくモスクの名前になった、「Imaret=慈善事業の食事を提供する施設」からなのではないかと思う。

Haydar Pasha Mosque

Lefkosa, Northern Cyprus : レフコシャ・北キプロス  垂直の高さのある控え壁(バットレス)と細長い尖頭アーチ窓をもつゴシック様式のモスクであったが、現在はすでにモスクとして使われていない。もとになったのは14世紀に建造されたSaint Catherine's Churchと呼ばれるゴシック教会であり、キプロスへ侵攻したオスマン帝国軍によってミナレットを付け足されモスクとして1570年に転用された。長くモスクとして使われておらず、近年の修復の後、現在はHP Galleryとも呼ばれる展示スペースとして使用されている。3枚の扉のうち南の正門側にある扉には、今でも当時の緻密な彫刻や紋章の細工が残っている。内部は残念ながら見学できず。名称は現在もモスクの名のままで通用しているため、そのままタイトルとした。

Al-Khamis Mosque

Manama, Bahrain : マナーマ・バーレーン  バーレーン最古のモスクといわれ、名称はモスクとのままであるが現在はすでに礼拝の場としての機能はなく歴史建築物として保存されている。敷地はモスクの遺構とその紹介をする資料館となるビジターセンターで構成されている。名称のKhamisは木曜日という意味で、モスク近くで木曜日に開かれていた市場から取られた。モスクの原型は8世紀初頭に建造され、11世紀ごろに改修、その後にミナレットを付け足した。現在は2本のミナレットと、円柱とそれに載るアーチが残されているのみ。クルアーンを刻まれたミフラーブの石碑はセンター内部で保存されている。2本の高さ約21mのミナレットは小さなドームを頭頂部にもち、バルコニーが付属している。ミナレットは東西わずかながら高さが異なり、建てられたのも同時でなく、最初の1本は12世紀に、その後14世紀にもう1本が追加された。その後もミナレットやモスクに何度かの修復があり、現在に至る。

Sinan Pasha Mosque -Gazimagusa (Famagusta)-

Gazimagusa (Famagusta), Northern Cyprus : ガジマウサ (ファマグスタ)・北キプロス  Church of Saint Peter and Paulを転用したゴシック様式のモスクであったが、すでにモスクとしては使われていない。その名は現在もモスクのままであるが、展示などの市民のためのスペースとして使用されており、内部は自由に見学できる。原型の教会は商人の寄付で1369年にかけて建てられた教会で、その後の1571年のオスマン帝国の侵攻によってモスクへと改変・改名された。その後も引き続きモスクであったのではなく、穀物倉庫として利用された時代もあった。外観はほぼ教会の姿から変化しておらず、教会の身廊と側廊の壁を支えるための頑強なフライングバットレスが2段で列になって並んでいる姿は勇壮である。リブヴォールト天井や側廊尖頭アーチは形状もそのままを保っており、唯一モスクらしいのはミナレットを付け足されていることだ。しかし後に崩壊してしまい、現在は途切れた状態のままで修復されている。また、中庭にはオスマン帝国の政治家高官・大使のMehmed Efendiの墓が残されている。