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Sultan Ibrahim Jamek Mosque

Muar, Malaysia : ムアル・マレーシア  ムアル川沿いに建つ、寄棟造りの屋根とイギリスの西洋建築が融合したコロニアル風のモスクで、意図は不明だが対岸の Sultan Ismail Mosque はこのモスクの1887年の完成の後、相似のデザインで建造されている。建物側面にせり出したキューポラの載った大きなドームは、モスクというよりも植民地時代の政府関係の庁舎にでも使われるような美しいデザインで、当時のジョーホール州のイギリスとの結びつきを感じる。ミナレットも独特で、正方形のバルコニーに円柱状の塔のような西洋風のデザイン造られた。対岸のモスクとの大きな違いは礼拝堂上部の天井のドームの有無で、こちらのモスクには無く、天井はフラットである。浄め(ウドゥー)を行う水場もまた独特で、天井に円形の吹き抜けが造られ、見上げると空とミナレットが目に映る。対岸と同じくメッカの方角が側面の大ドームになるが、キブラ壁にミフラーブの凹みもないため、ガイドは無いが金細工の大きなミンバルが真ん中に立つ。

Sultan Abu Bakar State Mosque

Johor Bahru, Malaysia : ジョホール バル・マレーシア  重厚な英領コロニアル建築のモスクが、シンガポールとの海峡を見下ろす小高い丘に建っている。寄棟造りの大きな屋根をもつ礼拝堂にメインドームはなく、天井はフラットである。礼拝堂は長方形で左右対称であるが、建物自体は庭を前から見て左側が長い。ミナレットは4本あり、うちメインの2本はファサードと裏庭の側玄関の礼拝堂に張り出している。大きなアーチで車寄せを造り、その上に小さなドームの載った8角形のミナレットが建つ。最上階には丸い窓、ドームには冠のようにキューポラが載り、ミナレットらしかなるイギリスの時計台風の荘厳なデザインであるが、インドのムガール・ゴシック建築の折衷も感じられる。礼拝堂への訪問はできなかったが、開いたドアから金色の天井を少しだけ見ることができた。名称となったSultan Abu Bakarはイギリスのビクトリア女王と関連が深く、その治世である、ビクトリア時代に影響された建築がジョホール州に多く造られており、このモスクもその影響下にある。その名を冠したモスクが完成したのは1900年のことであるが、本人は完成を待たず滞在中のイギリスで亡くなっている。

Sultan Ismail Mosque

Muar, Malaysia : ムアル・マレーシア  ジョホール州には過去、統治していたスルタンがイギリスと強く結びついており、その後の植民地時代を通じて西洋建築の技術を取り入れた建築物が多くある。ジョホール州境手前に近いムアルに街を代表する大きなモスクが2箇所あるのだが、このモスクも、また Sultan Ibrahim Jamek Mosque と呼ばれるモスクも英国植民地時代を彷彿させる西洋建築とイスラーム建築が融合したデザインで造られた。街を流れるムアル川を挟んで、どちらもなぜかほぼ同じような構造である。寄棟造りの屋根と西側面に大きなドーム、反対側の東側面に細い柱で支える四角形のバルコニーと窓のあるミナレットと、一見ではパーツごとの区別は難しいくらい似ている。礼拝堂内部はアーチや柱頭に西洋建築らしさも感じるが、マレーやアラブの文様なども取り入れている。大きな木製の彫刻が施されたミンバルが独立して立っており、キブラ壁にある凹みをもつ形状のミフラーブはない。その背後にはブロークン・ペディメントで装飾された星の文様入りのドアがある。ドアの裏は外から見ると側壁の大きなドームのある半円形の部屋なのだが、特に部屋に何か宗教的な機能があるようでもなかった。寄棟造りの屋根なので、天井は外から見る限り普通の屋根だが、ドームは礼拝堂中心上部にある。

KLIA Sultan Abdul Samad Mosque

Selangor, Malaysia : スランゴール・マレーシア  クアラルンプール国際空港(KLIA)と市内を結ぶバスに乗るとちらりと見えて過ぎ去っていくのだが、際立った配色の大きなドームが記憶に残っていた。空港施設の一部として造られた正に空港モスクとしての立ち位置なのであるが、空港のターミナルからはだいぶ遠く離れていて、KL市内からは車で気軽に訪れる場所でもなくどんな人が行くのであろうかと思い訪ねてみることにした。モスクに着いた時点では、駐車場には車がたくさん止まっており、また大勢のアラブ系観光客の礼拝者が団体でモスクのエントランスにいて、観光バスも何台か止まっていた。車は地元の礼拝者か空港関係者であろうか、それ以外にも観光ツアーで自国への帰路途中に、礼拝の立ち寄りに利用されているようである。完成は2000年、名称はスランゴール州の故第4代スルタンの名から取られた。花が咲き乱れる庭園のような庭から、両端に2本のミナレット、正面のエントランス上にサブドームと、礼拝堂頭上に大きなメインドームが見える。メインドームは明かり取りのガラスが黄色い植物文様で縁取られ、頭頂部はターコイズの色の格子のパターンで飾られており、その台座は正方形をずらして重ねたようなイスラーム式の八芒星をしている。エントランスを入りそれを抜けると、円弧型に切り取られた空と屋根のついた回廊が突然現れる。中庭の向こうに先ほど外庭から見たメインドームがまたもう一度見え、視覚的な効果としても面白いのだが、実は空から見ると前述のドーム台座の「星」と弧の「月」が組み合わさったデザインになっている。航空機に乗って上空から眺めた姿をイメージしていたのだろうか。ドームの明かり取りの内側はステンドグラスになっており、透過するカラフルな光が白い荘厳な礼拝堂を鮮やかに照らしていた。

Sultan Abdul Samad Jamek Mosque

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  クアラルンプール市内の中心にあり、市の名前の語源になった二つの河の合流点に建つ。歴史的建築物としてもクアラルンプールのハイライトとして必ず紹介されている有名なモスクである。最近のマレーシアの観光スポットになるようなモスクらしい派手さはないのだが、周囲は英領マラヤ時代の建築が多く残る地域で訪れる価値は十分にある。1909年に建造され、クアラルンプールで最初の大型なモスクとも言われているのだが、比較的新しくも感じるのはおそらくクアラルンプール自体が英領時代に発展を遂げたからであろう。設計したイギリス人の名建築家であるArthur Benison Hubbackはムガール様式をベースにしたインド・サラセン様式にムーア様式を折衷させたデザインを取り入れることでも知られている。このモスクでも、玉葱型ドームの形状や3個のドームと両端の背の高い2本のミナレットとの構図がムガール調であったり、外壁にストライプ模様やアーチが馬蹄形のムーア調を組み合わせたりと、手の込んだデザインを見せている。レンガの色が薄くドームとミナレットがある真ん中の礼拝室のある建物が原型のモスクで、渡り廊下で繋がったレンガの色が濃い建物は増築部分となる。八角形のドームは植物文様の入った天井で塞がっているような状態でその内側を見ることはできなかった。ドーム台座に馬蹄形アーチをかたどった灯り取りの窓がはめ込まれていたり、ミフラーブも馬蹄形アーチ型をしているなど、内部も外装と同じような趣向のデザインを施されている。

Wilayah Mosque (Federal Territory Mosque)

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  絢爛なアラベスクで彩られたターコイズブルーの22個ものドームが幾重にも重なる、「連邦直轄領モスク」の名を冠するモスク。1万7千人を収容するマレーシア最大級の規模をもち、2000年に完成した。全体のデザインはトルコの Sultan Ahmed Mosque 、通称ブルーモスクをベースにインスパイアされたもので、特にメインドームとそれを支える半ドームのオスマン様式の構造と、あまりの大きさに全容が掴みにくいが門をくぐり壮大な中庭の向こうに立つモスクの配置にそれを感じる。ほかに、メインドームと半ドームの外装はイランのImam Mosque(王のモスク)からの黄色の植物文様をモチーフにし、オスマン様式のドーム外装は通常では地味な配色であるが、このモスクは艶やかな色彩である。回廊の馬蹄形アーチと多弁形アーチはモロッコからの、内装の木材の彫刻はマレーからの、四角の2本のミナレットはエジプトからのと多岐に渡るデザインソースを融合させている。また、中庭の正面に見据える礼拝堂へのメインエントランスの大きなアーチはインドのタージマハルのメインゲート(白い著名な廟ではなく、赤い門の建造物)がモチーフとされている。そのゲートと同じイメージで施された花柄の装飾はペイントではなくモザイクで造られている。Saray Designというカリグラフィーの彫刻やモスクの内外装を手掛ける職人グループの作品で、ほかにアブダビの Sheikh Zayed Grand Mosque の回廊の柱も手掛けており、このモスクでも見せる緻密で可憐な細工は必見だ。内部は結婚式場などもある複合施設になっており、中庭、その後ドームのある礼拝堂へとガイドによって導かれる。礼拝堂のドームは外装からもわかるようにトルコの伝統的なモスクと相似の構造で、色彩は全体に淡いクリーム色とブルーを組み合わせている。ドーム内側は植物のモチーフは使われず小さいのサブドームの外装で使われている幾何学文様を施されているのが見える。

Tengku Kelana Indian Muslim Mosque

Klang, Malaysia : クラン・マレーシア  インド人街の真ん中にあり、繁華街となった大通り沿いから見る表側は平面的だが、どっしりとした3重のバルコニーのついたミナレットが目立つ。正面玄関は3つの多弁形アーチをもち、大きな真ん中の開口部は地面のレベルからすぐに階段となっている。モスクの前だけは歩道は広く取ってあるが、商店街の通りの入り口から2階のホールを経てガラスドアで区切られたドームのある礼拝堂へ繋がっている。モスク横側に回るとテラスと吹き抜けになった構造を覗け、壁や門にイスラーム建築の立体的な技巧が伺える。メインドームはターコイズグリーンに金の菱模様が入っている。金色の塗装は大部分が剥げてしまい、ほとんど濃い緑色になっている。ドームを囲むミナレットは等間隔に4本あるが、ドームはその中心に無く大通り側から見ると少し奥に配置されている。モスクの原型は、南インドのタミルナードゥ州からのムスリム移民コミュニティによって礼拝所が造られたことから始まり、やがて1910年にモスクが完成した。その後解体され、1973年になって新しいモスクができ、さらに2009年に3階建ての現在の姿となった。礼拝堂の天井は八角形のドーム台座の上段に窓、下段に星の文様を薄いクリーム色のムカルナスで造り、小さな半ドーム状の飾りを繰り返すものだ。ドーム内側も同様に装飾されている。星はブルーの五芒星(いわゆる、星)・六芒星(ヘキサグラム)の両方からなるもので、特に六芒星はユダヤ教のイメージがあるがイスラーム建築でも使用されている。たくさんの六芒星を際立たせてドームに使う例はあまり見たことがないのだが、マレーシアではほかにZahir Mosqueでアーチ部分の装飾に使われてもいる。

Al-Bukhary Mosque -Kuala Lumpur-

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  クアラルンプール市内を巡るKLモノレールの車窓から、美しいアラベスクを描かれたドームを見かけたツーリストも多いのではないかと思う。このモスクは、クアラルンプールのイスラーム美術館創設も手掛けた、マレーシアAl-Bukhary財団によるもので、白いミナレット、ブルーと黄色が冴えたコントラストのドームが街並みから際立って目立つ。ドームの文様はイラン・イスファハンのShah Mosque、王のモスクやイマームのモスクなどとも呼ばれる、からインスパイアされたもので、またミナレットの形状はマディーナの預言者のモスクからのものだ。この構成は同じ財団が建造したアロースターにある同名の Al-Bukhary Mosque にも採用されている。現在このクアラルンプールのモスクのドームは、塗装の修復後に以前より青みが強いものになったが、以前はやや緑がかったイランのオリジナルに近いターコイズ色をしていた。ちなみに前述のイスラーム美術館のドームにも類似の文様を採用しているのは興味深い。礼拝堂内部は金のカリグラフィー以外はほぼ真っ白でドーム内部は花や植物のモチーフが彫刻されている。

Tengku Ampuan Jemaah Mosque

Shah Alam, Malaysia : シャーアラム・マレーシア  クアラルンプール郊外のセランゴール州シャーアラムにある、2012年に完成したモスクで、ブルーモスクとして著名な Sultan Salahuddin Abdul Aziz Shah Mosque に続く王立モスクとなった。4本のミナレットと1個のドームをもち4,000名を収容する大きなモスクだ。デザインや構造に特徴があり、マレー様式を取り入れずほぼ純粋にアラブ様式で建造されている。極わずかに赤みを感じるクリーム色の外壁で際立った装飾はほぼなく、外見はまるで中東のモスクだ。ドームも装飾は鋸状の線が入っているのみ。内部の構造もメインエントランスから事務所などのある棟の通路を進み、連なるアーチを横に見ながら中庭を突き抜け礼拝堂へ入るという、いかにもモスクらしい、日常から心の切り替えをしながら礼拝へ望むスタイルだ。礼拝堂のシャンデリアも中東のモスクでよく見かける円状のランプが吊るされたタイプであった。ドームの内側も装飾はなく真っ白なタイルで格子を組んだ構造上の線が見えるのみであった。

Sri Sendayan Mosque

Seremban, Malaysia : スレンバン・マレーシア  このところ、マレーシアで最も美しいモスクと声を聞くことが多くぜひこの目で確かめてみたくなり、クアラルンプール郊外のセレンバン、さらにその遠くBandar Sri Sendayan地区を訪れた。以前はクアラカンサーの Ubudiah Mosque がその代名詞であったと思うが、このモスクで出会ったマレーシアの人々もここはマレーシアで一番だと口を揃えていたのが印象的だ。2015年に完成した5,000人の礼拝者を収容するという大きな礼拝堂、図書館、多目的ホールなどの施設をもち、白い外壁に高く聳える2本のミナレットと白い4個のドームが優美なモスクである。外観に伝統的なマレーシア様式のデザインは取り入れておらずアラブ様式で建造されており、特にミナレットはサウジアラビアのマディーナにある「預言者のモスク」にインスパイアされたのではないかと思える。頭上に小ドームを頂き、正面に5個、側面に6個のアーチで支えられたポルティコの天井は黄味がかったガラス張りで、柔らかな光が内部を照らしていた。小ドームの奥に巨大なメインドームを配し、正面から見据えるとその姿はタージ・マハルをも彷彿させる。モスクはマレーシアの金融グループであるRHBのTan Sri Abdul Rashid Hussain氏の寄付により計画され、またマレーシアの建築家であるZailan Yusop氏によって設計された。建材はエジプト、トルコ、UAE、モロッコなどから運ばれたそうで、シンプルな外装から一転、淡いブルーやベージュを組み合わせた荘厳な内装や純金を塗られたドーム内壁には息を呑み目を見張るばかりである。

Sultan Ismail Petra Mosque

Kota Bharu, Malaysia : コタバル・マレーシア  マレーシア東岸の中都市コタバルにある1992年に完成した大きなモスクで、メインの礼拝堂は2,400人を収容する。4本のミナレットと2個の大ドーム、4個の小ドームをもつ。コタバル市はマレーシアの中でも際立ってイスラーム色の強い敬虔なマレー系住民の多い街であるが、このモスクはマレーシアに多い、伝統的マレーシアのデザインという感じはあまりしない。建物は大きな長方形で、外壁は大きなアーチが連続しており、紺とグレーの色合いにより強くそれを感じるというわけでもないのであるが形状だけはアラブ地域の新しいモスクに似せたデザインである。紺に塗られたドームとミナレットの下方にはミニマムな花のモチーフが続き、重厚な全体のデザインに可憐なアクセントになっているのが面白い。礼拝堂は全体に白と金色を基調にしたシンプルで静寂感のあるデザインで、ドーム内側は文様のない空と同じ青一色に塗られている。ドーム直下の半円がそのまま湾曲した壁となっており、イマームが説法のために上がるミンバルが、通常背後のキブラ壁に接している通常のモスクと違い、独立して据えられているのが特徴的である。

Sultan Sulaiman Royal Mosque

Klang, Malaysia : クラン・マレーシア  イギリスの建築家Leofric Kestevenによって設計されたこの王立モスクは、アールデコ様式で建造されたモスクとしては珍しいキリスト教会に似た外観である。深い卵黄色に塗られたメインのドームを白い4個のサブドームが囲み、周囲には8本の小さなミナレットと中央のドーム手前に1本の背の高いミナレットをもつ。特にメインのミナレットには直線が強調されたアールデコのデザインを感じる。当時のマラヤではまだ珍しかった鉄筋コンクリート造りで完成は1932年。その後、2015年に内装と外装の改修が始まり2017年に完了している。独特の形状をした天井をもつアーチのアーケードを通り、ポーチから内部には入ると、金のドームを頭上に頂く木製のミンバルが目に入る。モスクであることは明白であるが、礼拝室の8角形の壁には直線的な幾何学模様のステンドグラスがはめられており、モザイクを通して照らされた光に拠るものなのか外装のデザインだけでなく礼拝室もキリスト教会の雰囲気を感じる。ドームの内側にもあまり例をみないカラフルなステンドグラスがはめられており、天井から光を通して輝いていた。

Al-Ismaili Mosque

Wakaf Bharu, Malaysia : ワカバル・マレーシア  敬虔なムスリムの多いマレー半島東海岸にあるクランタン州ワカバルにあり、この街は地域最大のコタバル市街に川を挟んで接している。クランタン州内の街の看板はアラビア文字をもとにしたジャウィ文字も併記されており、イスラーム世界を強く感じた。このモスクはコタバルから向かうとケランタン川に架かる橋を越えた少し先にあり、1500人を収容する礼拝堂の白い壁に金色の光り輝く大きなドームが映えて見える。マレーシアでは珍しいことにミナレットは5本もあり、ムスリムの義務である五行(五つの行動)がテーマになっているとのことだ。ドームは大小合わせ合計で6個あり、こちらもムスリムが信じる六信(六つの信条)から来ているとのことである。

Sabah State Mosque

Kota Kinabalu, Malaysia : コタキナバル・マレーシア  1975年に完成した、5,000人を収容する州立モスクである。グレーと金の六角形のハニカム状のモザイクに覆われたドームに、金色の小ドームを据えたどっしりとした16本の柱が6角形の礼拝堂を囲んでいる。鉛筆型のミナレットは約65mの高さで3段のバルコニーをもち、礼拝堂の内部から天井のガラスを突き抜けるように聳え立つ。重厚さが独特の設計はDato' Ar. Hj. Baharuddin Abu Kassim氏率いるマレーシアの建築事務所であるJurubina Bertiga Internationalによるものだ。彼らはこのモスク以外にも Sultan Salahuddin Abdul Aziz Shah Mosque (ブルーモスク)や An-Nur Jamek Mosque などの著名なモスクも手掛けている。ドーム内側は茶色に塗られ金のカリグラフィーが映える美しいデザインだ。

Al-Bukhary Mosque -Alor Setar-

Alor Setar, Malaysia : アロースター・マレーシア  マレーシアの実業家であるTan Sri Syed Mokhtar Al-Bukhary氏が創設したAl-Bukhary財団によって建造された。モスクは広大な土地に大学などの複合施設の一部として造られ、1万5千人を収容する。前面には泉を模した水の流れるブルーとグリーンのタイル地の池と椰子の樹が並ぶ整然とした中庭がひろがっており、白いモスクとのコントラストが映えてとても美しい。2本の48mのミナレットを礼拝堂の背後に、1個の大ドームを礼拝堂上に、ファサードと庭を囲む両側の施設上に6個の小ドームをもつ。デザインは世界のモスクのデザインからインスパイアされており、ミナレットは預言者のモスクを、内部のミフラーブはイランのAbd al Samad廟をモチーフにしている。大ドームの外側にはクルアーンのカリグラフィーとブルーとグリーンの美しいイスラーム文様が描かれ、こちらはイランの王のモスクをモチーフにしている。クアラルンプールにも財団による同名の Al-Bukhary Mosque があるが、やはりドームのデザインはだいぶ似せている。ドームを支える内部のアーチは、鍾乳石装飾を全面に使用しておりマレーシアではあまり見かけない様式である。

Sultan Salahuddin Abdul Aziz Shah Mosque

Shah Alam, Malaysia : シャーアラム・マレーシア  ブルーモスクの名で呼ばれ、首都クアラルンプール近郊においてプトラジャヤの Putra Mosque 、通称ピンクモスクとともに多くの観光客が訪れる有名なモスクである。4本のミナレットは142mもの高さを誇り、3段のバルコニーをもつ鉛筆型をしており、ミナレットだけはオスマン様式の特徴を取り入れていると感じる。ただし、デザインは現代的にアレンジされて、先端はブルー1色に塗られ、1段目だけは鋸の状の幾何学模様で彩られている。アルミニウム製という巨大なドームもブルーが基調となった格子状の幾何学模様と白地に青いカリグラフィーが描かれている。上部を切り取った4角錐の屋根を8枚の板状の柱で支えており、その上に先端がやや尖った玉子を切った形状をしたドームが載っているの特徴である。外装だけでなく中庭の屋根やステンドグラスから入る光で内部もブルーに照らされ、ブルーモスクと呼ばれる所以だ。

Klang Royal Town Mosque

Klang, Malaysia : クラン・マレーシア  クラン川の岸に建ち、市内へ入る橋を渡ると金色のドームが目立つ姿を現す。クラン市に従来からあった2箇所のモスクでは増加する礼拝者を受け入れることができなくなり、1,500人の巡礼者を収容するこのモスクが計画されることになった。2003年に建造が始まり、長い期間を経て2009年に完成した。上から見ると星型八角形で造られ、中心の大ドームは8個の同じく金色の半ドームで支えられている。内部は全体に白と淡いピンク色で塗られ、見上げると半ドームの直下に半円形のベランダがせり出している。ドームの装飾はシンプルで天井が高く感じられる。無数に開いたひし形の窓から光が入り、アクセントになっていた。

Melaka Straits Mosque

Malacca(Melaka), Malaysia : マラッカ・マレーシア  マラッカ市の沖に造成された人工島であるマラッカ島にある水上モスク。2006年に完成した。エントランスは陸に接し、高さ30mのミナレットは陸側に建っている。モスク本体の足場は海へ打ち込まれており、礼拝堂の3面は海に面している。1面はミフラーブのあるキブラ壁となり、もう2面には礼拝室から突き出たテラスがある。ここからマラッカ海峡を望むことができ、たくさんの観光客が訪れていた。4面すべてに大きな緑色のステンドグラスのアーチが飾られ、角にある尖塔はオレンジ色のマレー式デザインの屋根がついている。内部は白1色でカリグラフィーなどはなく、幾何学文様のすかしが入った壁から漏れる光が装飾になっていた。

Kapitan Keling Mosque

Penang, Malaysia : ペナン・マレーシア  移民の南インド系イスラームコミュニティーの主導者であるカピタン・クリンによって1801年に原型が建造された。創始者の祖国インドで主流のムガール様式で建造されたペナンで最古のモスクと言われる。その後改築されており、ドームやエントランスのアーチなどにムガールの影響を感じるが、回廊のアーチは多弁形アーチのほかに馬蹄形アーチも見られ、ムーア様式も取り入れているのではないかと見える。マレーシアの商店でよく見かける簾がアーチの裏に添えられているのが興味深い。ドーム内部は全体に白く、金色のカリグラフィーで飾られている。文様は少なくシンプルな印象だ。ドーム直下は、多弁形アーチで支えられた台座の窓から入った光で、黄色に淡く照らされていた。

Crystal Mosque

Kuala Terengganu, Malaysia : クアラトレンガヌ・マレーシア  クアラトレンガヌにあるイスラーム文化を紹介する公園に接する海上に、鋼とガラスでできたそのイメージから「クリスタル」の名のモスクがある。2008年完成、4本のミナレットをもつ。ガラスは角度によって光線と反射の加減で金色から黒へ変化し、不思議な色合いを見せていた。礼拝堂内からガラスのドームを見上げると色は付いておらず透明な光が祈りの場所を照らす。内部は白と金・黄色を基調にした幾何学と植物の文様が使われ、礼拝所を囲むガラスの壁も装飾され外光に文様が浮かび上がる。