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Al-Farooq Omar Bin Al Khattab Mosque

Dubai, United Arab Emirates : ドバイ・アラブ首長国連邦  ドバイ市内海岸線寄りの静かな住宅街であるAl Safa地区にある、オスマン様式のモスク。Khalaf Ahmad Al Habtoor財団によって現在の姿へと再建されたのは2011年になる。クリームを基調に、淡くグレーがかったブルーが差し色になった柔和な組み合わせの色合いをし、頭頂部がブルーの2段のバルコニーが付いた65mの鉛筆型ミナレットを4本もち、礼拝堂の上部にあるブルーに塗られたメインドームは4つの半ドームと内部の4本の柱で支えられている。トルコ・イスタンブールの Sultan Ahmed Mosque 、通称ブルーモスクからインスパイアされたデザインと公式にアナウンスされているとおり、伝統的なトルコのモスクを見ているようだ。ドームは大小合わせ21個、ステンドグラスは124枚にもなるという。あまり知られていないことではあるが、UAE国内にいくつかある開放されたモスクであり、モスクの内部まで訪問が可能である。礼拝堂内部は2000人を収容し、頭上のストライプのアーチや、緻密なドーム内側のパターンを望むことができる。

Noor Al Deen Mosque

Muscat, Oman : マスカット・オマーン  2015年にマスカット市街に完成したモスクで、3面のエントランスに配した柱廊を模した半円アーチが特徴。アーチは骨組みだけの構造で天井に当たる部分は吹き抜けになっている。建物全体は柔らかな白一色でシンプルだが垂直を強調した直線と繰り返すアーチの曲線を用いており洗練されたデザインだ。礼拝堂の隣に付属する施設の棟と合わせ合計4個のガラスのドームをもち、メインドームは昼は外部から自然の光を礼拝室に取り入れることができる。またそれは夜になると内部からの照明で闇にドームが美しく浮かび上がる仕組みになっている。残念ながら内部の見学はできなかったが、ドームの内側には透かし彫りの細工がはめ込まれており、差し込む光をドームの模様にして映すというデザインになっている。デザインはドイツとオマーンの合弁企業であるHoehler + alSalmyによる。

Sultan Ismail Petra Mosque

Kota Bharu, Malaysia : コタバル・マレーシア  マレーシア東岸の中都市コタバルにある1992年に完成した大きなモスクで、メインの礼拝堂は2,400人を収容する。4本のミナレットと2個の大ドーム、4個の小ドームをもつ。コタバル市はマレーシアの中でも際立ってイスラーム色の強い敬虔なマレー系住民の多い街であるが、このモスクはマレーシアに多い、伝統的マレーシアのデザインという感じはあまりしない。建物は大きな長方形で、外壁は大きなアーチが連続しており、紺とグレーの色合いにより強くそれを感じるというわけでもないのであるが形状だけはアラブ地域の新しいモスクに似せたデザインである。紺に塗られたドームとミナレットの下方にはミニマムな花のモチーフが続き、重厚な全体のデザインに可憐なアクセントになっているのが面白い。礼拝堂は全体に白と金色を基調にしたシンプルで静寂感のあるデザインで、ドーム内側は文様のない空と同じ青一色に塗られている。ドーム直下の半円がそのまま湾曲した壁となっており、イマームが説法のために上がるミンバルが、通常背後のキブラ壁に接している通常のモスクと違い、独立して据えられているのが特徴的である。

Sheikh Abdulla Bin Zaid Al Mahmoud Islamic Cultural Center / Mosque

Doha, Qatar : ドーハ・カタール  ユニークな螺旋状のミナレットをもつモスクとイスラームを紹介する文化センターからなる複合施設で講習会、アラビア語教室なども主催されている。いくつかの名で通っており、FANAR、Qatar Islamic Culture Centerとも呼ばれているが正式な名称はカタールのイスラーム学者の名から取られている。ミナレットのデザインはイラクのSamarraにあるGreat Mosqueのミナレットをモチーフにして造られたもので、周囲にあまり高い建物がないためにSouq Waqif周辺からはよく目立つ。夜間のライトアップは幻想的で、ドーハのランドマークとして記憶する観光客は多いと思う。1階は展示室となり、モスクや図書館、教室などの施設は階上にある。外観からはわからなかったが、内部の礼拝室の前はミナレットを見上げることのできる吹き抜けの中庭となっていた。

Kobe Muslim Mosque

Kobe, Japan : 神戸・日本  ターコイズに黒いストライプの入ったドームが映える日本最古のモスクである。古くから海外に開かれていた港街である神戸に、インド系ムスリムのFerozuddin、M.A.K Bochia両氏そのほか多数のインド・タタール・トルコ系信者達の尽力や寄付金により建造されたのは1935年のことだ。強固な構造により第2次世界大戦の爆撃でも焼失を免れ、その後の阪神大震災でも破壊を免れている。モスク入り口の受付にある当時の写真のうちの一つから、1945年の戦時の瓦礫の中でもその姿を失っておらず壮絶な歴史を経験して来たのがわかる。設計は当時日本に移住していたチェコの建築家であるJan Josef Švagr氏。このモスク以外にも同じ港街である横浜にも歴史建築を残している。

Saifee Mosque

Bangkok, Thailand : バンコク・タイ  三角屋根の倉庫街にある細くて暗い通路、その先の光の向こうにモスクがあるとは誰が想像できようか。今までたくさんのモスクを訪れたが、ここまで不思議な日常からの隔絶感を味わったことはないと思う。このモスクのある古い倉庫街はスパイスやハーブの貯蔵庫として今でも現役で、訪れた日は大勢の人々が路上いっぱいにスターアニスを洗い、天干ししており芳しい香りに満ちていた。モスクへはこの倉庫街の隙間にあるトンネル状の通路を抜けて出る。そしてたどり着くやすぐ目の前にゴシック様式で造られた薄いベージュの美しいモスクと明るい庭が現れる。このモスクはバンコクのほかのモスクと違い、シーア派の一派であるDawoodi Bohraと呼ばれるタイではわずかな珍しいコミュニティに属しており、この派のモスクはタイで唯一だ。インドのグジャラート州スーラト出身の貿易商人らによって、1910年に造られた由緒ある歴史をもち、その名は「剣」を意味するという。モスクはコンクリート製の長方形の箱型で屋上のバルコニーには小さな装飾の尖頭がついているが、メインのミナレットやドームはない。また、モスク内部にはミンバルもない。また礼拝堂内の2階のバルコニーには扉が付き、吹き抜けの4方向すべてをぐるりと囲っているのが特徴で、ほかでは見かけない仕様だ。2階へ上がる階段は透かし彫りの装飾の付いた木製で建物横に大きく取られている。ステンドグラスの尖頭アーチ窓、透かし彫りのアーチで飾られたポーチや玄関扉などもまた、重厚で美しい。木々茂る庭には川沿いへ向かう門も残っていたがどんな事情なのか使われず閉鎖されてしまっていた。

Haydar Pasha Mosque

Lefkosa, Northern Cyprus : レフコシャ・北キプロス  垂直の高さのある控え壁(バットレス)と細長い尖頭アーチ窓をもつゴシック様式のモスクであったが、現在はすでにモスクとして使われていない。もとになったのは14世紀に建造されたSaint Catherine's Churchと呼ばれるゴシック教会であり、キプロスへ侵攻したオスマン帝国軍によってミナレットを付け足されモスクとして1570年に転用された。長くモスクとして使われておらず、近年の修復の後、現在はHP Galleryとも呼ばれる展示スペースとして使用されている。3枚の扉のうち南の正門側にある扉には、今でも当時の緻密な彫刻や紋章の細工が残っている。内部は残念ながら見学できず。名称は現在もモスクの名のままで通用しているため、そのままタイトルとした。

King Faisal Mosque

Sharjah, United Arab Emirates : シャールジャ・アラブ首長国連邦  シャールジャ市街の基点となるランドマークのような存在のモスクで、シャールジャの景色として紹介されているのをよく見かける。地域最大級の大きさを誇り、サウンジアラビアの王の財団King Faisal Foundationによって建設され1987年に完成した。Al Ittihad Square Parkと呼ばれる大きな公園に隣接しており、全貌が遠くからでも窺える。約17,000人を収容することができ、内部には図書館も併設されている。2本のミナレットと1個の装飾のない卵型のシンプルなドームをもち、モスク全体が3段で造られている。コーナーのシャープなステップ状のデザイン、そしてファサードと両サイドのカーブを帯びて斜めに突き出たカンチレバー構造の日除けとアーチが特徴的である。

Al-Khamis Mosque

Manama, Bahrain : マナーマ・バーレーン  バーレーン最古のモスクといわれ、名称はモスクとのままであるが現在はすでに礼拝の場としての機能はなく歴史建築物として保存されている。敷地はモスクの遺構とその紹介をする資料館となるビジターセンターで構成されている。名称のKhamisは木曜日という意味で、モスク近くで木曜日に開かれていた市場から取られた。モスクの原型は8世紀初頭に建造され、11世紀ごろに改修、その後にミナレットを付け足した。現在は2本のミナレットと、円柱とそれに載るアーチが残されているのみ。クルアーンを刻まれたミフラーブの石碑はセンター内部で保存されている。2本の高さ約21mのミナレットは小さなドームを頭頂部にもち、バルコニーが付属している。ミナレットは東西わずかながら高さが異なり、建てられたのも同時でなく、最初の1本は12世紀に、その後14世紀にもう1本が追加された。その後もミナレットやモスクに何度かの修復があり、現在に至る。

Said Bin Taimur Mosque

Muscat, Oman : マスカット・オマーン  赤銅色の多数のドームをもつモスクで、オスマン様式で1999年に建造された。メインドームは2個の半ドームで支えられ、礼拝堂にはミフラーブをカバーするものも合わせ大小14個ものドームで飾られている。中庭の回廊にも16個の小さなドームが配され、イスタンブールの Sultan Ahmed Mosque へのオマージュを感じるデザインだ。50mの高さの2本のミナレットも、鍾乳石飾りのついた2段のバルコニーをもつ伝統的なオスマン様式の筆型で造られている。シャープに尖った頭頂部もドームと同じ赤銅色に塗られており青空に映えるデザインだ。モスクの名は現国王Qaboos bin Saidの父、亡きSultan Said bin Taimurの名を冠している。

Bang Uthit Mosque

Bangkok, Thailand : バンコク・タイ  チャオプラヤー川沿いの古い船着き場と倉庫街をリニューアルした観光スポットであるAsiatique The Riverfrontの前に、小さなモスクが建っている。一見、バンコク下町のムスリム街区で時折見かける大きくはない普通のモスクだが、エントランスと内装にバンコクの多くのモスクとは違う特徴がある。チャオプラヤー川沿いのこの地区周辺は古くから河川を使った貿易の拠点となっており、ほかにも外交施設や教会などの歴史的建築物が多く残っている。このモスクも20世紀初頭に建造されており、当時のシャム王国のムスリムとオスマン帝国皇帝Abdul Hamid II との間で送られたイスラームへの忠誠を示す紋章をエントランスに残しており、必見だ。モスクはそのような関係からトルコの政府機関によって現在は改修されており、ドームのないフラットな天井に丸くオスマン様式の美しい装飾を施され、トルコからの白い大理石で造られた美しいミンバルとミフラーブをもつ。

Sultan Sulaiman Royal Mosque

Klang, Malaysia : クラン・マレーシア  イギリスの建築家Leofric Kestevenによって設計されたこの王立モスクは、アールデコ様式で建造されたモスクとしては珍しいキリスト教会に似た外観である。深い卵黄色に塗られたメインのドームを白い4個のサブドームが囲み、周囲には8本の小さなミナレットと中央のドーム手前に1本の背の高いミナレットをもつ。特にメインのミナレットには直線が強調されたアールデコのデザインを感じる。当時のマラヤではまだ珍しかった鉄筋コンクリート造りで完成は1932年。その後、2015年に内装と外装の改修が始まり2017年に完了している。独特の形状をした天井をもつアーチのアーケードを通り、ポーチから内部には入ると、金のドームを頭上に頂く木製のミンバルが目に入る。モスクであることは明白であるが、礼拝室の8角形の壁には直線的な幾何学模様のステンドグラスがはめられており、モザイクを通して照らされた光に拠るものなのか外装のデザインだけでなく礼拝室もキリスト教会の雰囲気を感じる。ドームの内側にもあまり例をみないカラフルなステンドグラスがはめられており、天井から光を通して輝いていた。

Al-Warqa'a Mosque

Dubai, United Arab Emirates : ドバイ・アラブ首長国連邦  ドバイ郊外の住宅地に佇むこのモスクを訪ねたのは、WEBサイトで見かけたミニマムなデザインの現代建築のモスクを見てみたかったからだった。外壁は砂漠の砂のオレンジ色の壁とシンプルなアーチで造られ、中庭を包む白い花の形のミニマムな幾何学パターンの内壁との間は回廊になっている。小さく開いた門をくぐると、真っ白な丸みを帯びた角をもつ長方形の中庭が広がり、3本の樹が植わっていた。隅に建つミナレットは外側の白い壁と同じパターンの円柱形だ。礼拝室のガラス窓とドアは、中庭とは外壁と同じデザインのアーチで区切られており、礼拝者の意識を外から門、中庭を経て礼拝室に入ることを意識させるという儀式を模したようだ。内部は2層に区切られ、天窓があり光が差し込んでいる。デッキ状の中2階は同じ幾何学パターンで装飾されているが、それ以外白いドームとミフラーブにも一切の装飾はない。外から見てもドームには何の装飾もない真っ白なものであった。実際に訪れてみて、このモスクのデザインはそぎ落としたミニマムさではなく、モスクの原点、礼拝の場としての機能と様式美をすべて併せもつ空間であることに気がついた。設計はドバイにある建築事務所Ibda DesignのWael Al Awar氏とKenichi Teramoto氏2人の建築家によるもの。門越しから中庭を見据えた空間が日本的に感じるのはそのためか、とても好きなデザインだ。

Msheireb Mosque

Doha, Qatar : ドーハ・カタール  ドーハの古い市場を改装したSouq Waqifのすぐ隣はMsheireb地区と呼ばれる再開発地区となっている。ツーリストで賑わう商業地区であるSouq Waqifから通りを隔てわずかに離れただけであるが、静寂の中にミナレットと白い石造りの立方体で構成された美しい現代のモスクが佇んでいた。外観は非常にシンプルで、長方形の敷地の正面に幾何学パターンで装飾された門と、先端に向かって細くなる円柱形のミナレットがある。門をくぐると屋根のある廊下に挟まれた吹き抜けの中庭があり、泉の奥に礼拝堂への大きな扉が開いていた。扉は高く、円形がモチーフの金のパターンで覆われている。デザインはイギリスの建築事務所であるJohn McAslan + Partnersによる。外観は直線的な現代建築であるが、モスクとして非常にわかりやすい、余分な装飾をそぎ落とした基本の伝統的なモスクの構成であると思う。残念ながら内部は見学できなかったが礼拝堂内部は照明を使わず、文様による採光と遮光のデザインがされているとのことで、過去のカタールのモスクとのつながりもモチーフであるようだ。

Dawatagaha Mosque

Colombo, Sri Lanka : コロンボ・スリランカ  コロンボ中心の車やバスや三輪タクシーが行き交う喧騒の中に、林立するムガール様式の白いミナレットと金色のドームをもつモスクが建っている。1885年完成の文字が刻まれた門をくぐると、いくつかの建物に分かれているのがわかる。向かって右側に表通りに面して建つ、小さなドームの付いた6本のミナレットのある建物が礼拝室となっていた。天井はフラットで2階がバルコニーとなっており、1階のみ見学ができたので最上階にある金色のドームは望むことはできなかった。入って中央すぐ右横には、頭上に緑色地に白い幾何学文様の入ったドームの付いた小さな部屋がある。この部屋は聖人であるSheikh Usman Waliullahの廟になっており、跪き祈りを捧げる人々が絶えない。ドーム内側はクリーム色に、内装は白と金で美しく装飾されている。入って正面の真ん中の少し背の高い塔には金色のドームが乗り、内側は濃いグリーンに塗られている。塔は吹き抜けで、1階から頭上のドームを見上げることができた。この棟は他のモスクとは違う特徴でもある、民間伝承の信仰の場になっており、油のランプが置かれている。その奥の部屋も表通りからは見えなかったが小さなドームをもち、内側は淡いグリーンの光で照らされていた。ここでは油売りの女性が油の鍋を壊してしまい、稼ぎがなくなり途方に暮れて眠りについてしまったところに緑の衣の老人が現れ、彼女を救うため油を地面から噴き出させたという奇跡が語り継がれている。そのため、非ムスリムであっても油ランプの部屋に緑の布を結びつけ願いを祈るために訪れるという珍しいモスクとなっている。

Hajjah Fatimah Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  その名はモスク建造の土地を提供した実業家Hajjah Fatimah氏より取られ、女性の名がつくモスクは珍しいのではないかと思う。1846年に完成し、デザインはムーア様式と西洋建築の折衷で、ベランダのついた3段のミナレットは教会の尖頭を模しているようでもある。そのミナレットは全体を俯瞰すると心なしか傾いて見えるのであるが、錯覚ではなく本当に傾いており、工事でこれ以上倒れないように止めているとのこと。金色のドーム内部は淡い緑色で塗られ、尖塔形をした教会風でもある緑色のステンドグラスが明り取りにはめ込まれている。ファサードは市内に立ち並ぶショップハウスでも馴染みのオレンジの瓦屋根も覗かせており、実にいろいろな要素が感じられるモスクだ。

Mohammed Al Ameen Mosque

Muscat, Oman : マスカット・オマーン  赤茶けた岩山をすり抜けるハイウェイの向こうに真っ白な大理石に覆われた荘厳なモスクが建つ。モスクの大きさに比べ門のある表庭以外の周囲のスペースは少なく、高さを感じさせる立体的で重厚な造りの壁はまるで城砦や船のような印象であった。館内には図書館や教室も擁するという。高台に建っており、緻密な透かし彫りのアイボリー色をした3個のドームと84mの2本のミナレットはかなり離れた場所からもよく目立つ。特に夜になるとライトアップされ岩山に浮かぶ幻想的なドームをSultan Qaboos Stからも望む機会があるかと思う。

Shaikh Isa Bin Salman Al Khalifa Grand Mosque

Muharraq, Bahrain : ムハラク・バーレーン  故バーレーン初代首長の名を冠した、2016年完成の白い透かし彫りと照明のついたドームをもつモスクだ。敷地に入ると一番最初に高さ45mのミナレットが目に入り、1本のアーチの廊下でエントランスへ繋がるという造りになっていた。800人以上を収容するメインドームのある礼拝堂は、中庭に面する大きな扉のメインエントランスとアーチのあるポーチをもち、頭上には小さな八角錐のガラスドームが収まっていた。中庭をはさみ対面にはマジュリスと呼ばれる集会所や図書館が入った建物がある。庭の周囲は美しいストライプ模様と彫刻で装飾された柱をもつ回廊に囲まれ、アーチが美しく並んでいる。ドームは夜間になり下地の照明が灯ると文様が浮き出てくる仕組みになっている。

Al-Ismaili Mosque

Wakaf Bharu, Malaysia : ワカバル・マレーシア  敬虔なムスリムの多いマレー半島東海岸にあるクランタン州ワカバルにあり、この街は地域最大のコタバル市街に川を挟んで接している。クランタン州内の街の看板はアラビア文字をもとにしたジャウィ文字も併記されており、イスラーム世界を強く感じた。このモスクはコタバルから向かうとケランタン川に架かる橋を越えた少し先にあり、1500人を収容する礼拝堂の白い壁に金色の光り輝く大きなドームが映えて見える。マレーシアでは珍しいことにミナレットは5本もあり、ムスリムの義務である五行(五つの行動)がテーマになっているとのことだ。ドームは大小合わせ合計で6個あり、こちらもムスリムが信じる六信(六つの信条)から来ているとのことである。

Gazi Mehmet Pasha Mosque (Bajrakli Mosque)

Prizren, Kosovo : プリズレン・コソボ  1563年から1574年にかけて、モスクやマドラサ(高等学校)、図書館などで構成される複合施設として建造された。周囲にはオスマン時代のハマーム(トルコ式の浴場)や他のモスクなどの歴史的建造物が集う。デザインは伝統的なオスマン様式により、正方形の礼拝堂は3方をポーチに囲まれ、上部は8角形の台座にドームをもつ。ポーチを覆う大きな屋根は茶色の木製で白い壁やアーチとのコントラストが映える。内部のミフラーブとミンバルは大理石で造られており、壁の塗装は1996年に大規模な修復を受けて今に至る。

Sinan Pasha Mosque -Gazimagusa (Famagusta)-

Gazimagusa (Famagusta), Northern Cyprus : ガジマウサ (ファマグスタ)・北キプロス  Church of Saint Peter and Paulを転用したゴシック様式のモスクであったが、すでにモスクとしては使われていない。その名は現在もモスクのままであるが、展示などの市民のためのスペースとして使用されており、内部は自由に見学できる。原型の教会は商人の寄付で1369年にかけて建てられた教会で、その後の1571年のオスマン帝国の侵攻によってモスクへと改変・改名された。その後も引き続きモスクであったのではなく、穀物倉庫として利用された時代もあった。外観はほぼ教会の姿から変化しておらず、教会の身廊と側廊の壁を支えるための頑強なフライングバットレスが2段で列になって並んでいる姿は勇壮である。リブヴォールト天井や側廊尖頭アーチは形状もそのままを保っており、唯一モスクらしいのはミナレットを付け足されていることだ。しかし後に崩壊してしまい、現在は途切れた状態のままで修復されている。また、中庭にはオスマン帝国の政治家高官・大使のMehmed Efendiの墓が残されている。

Kamalun Islam Mosque

Bangkok, Thailand : バンコク・タイ  バンコク郊外のムスリムが多く住むミンブリー地区近くにある、バンコクでは比較的大きなモスクで1,000人を収容する。当時のタイのSai Buri、現マレーシアのケダ州からの移民達が荒地に村を開き、現在のモスクは改築後の姿であるがその原型を200年ほど前に建造したという。センセープ運河と呼ばれる運河沿いに建ち、この流れは遥か遠くバンコク市内中心まで続いている。過去には運河を行くラーマ5世国王(在位1868-1910)の乗る船が偶然故障してしまい、岸に上がった際に改築中のモスクを訪れたというエピソードがあった。ドームは白を基調に緑と黄で塗られたメインドーム、緑が基調のミフラーブ上に置かれたサブドーム、またエントランス側の3本あるミナレットの真ん中の1本に小ドームが配置されている。内部はチーク材の天井をもち、2個のドームのガラスを通して淡く緑に照らされ、柱や窓のアーチが整然と並んでいる。全体に装飾は控え目ですっきりとしているが、それゆえにガラスのパターンが際立って見えた。茶と白で塗り分けられた窓の扉だけはイスラーム様式でなく、タイ様式のパターンを取り入れているようだ。

Al-Noor Mosque

Sharjah, United Arab Emirates : シャールジャ・アラブ首長国連邦  シャールジャの高層ビルを対岸に眺めるKhalid Lagoonの遊歩道沿いに造られた、その名はアラビア語で「光」を意味するモスクだ。トルコ・イスタンブールの Sultan Ahmed Mosque 、通称ブルーモスクの影響を受けたと公式なアナウンスもあり、伝統的なオスマン様式のデザインを引き継ぎ2005年に完成をした。52mの2本のミナレットと34個のドームをもつ。シャルージャの統治者の妻となるHer Highness Sheikha Jawaher Bint Mohammed Al Qasimiの命で建造されたのが理由なのか、正面のポーチに配した3つのアーチや、屋根の縁の植物や花をモチーフにした装飾は繊細で非常に女性的に思える。内部も伝統的、典型的なオスマン様式の装飾であるが、アーチのストライプも濃淡の差が際立ってなく、差し色もわずかにドーム台座の紺とミフラーブのえんじ色と金色以外見あたらず物腰柔らかい優美な印象だった。メッカに向かうキブラ面のアーチは床まで届けず吊り下がった状態でミフラーブを望む視界を遮らない飾りとなっている。

Imam Muhammad Ibn Abd Al-Wahhab Mosque (State Grand Mosque)

Doha, Qatar : ドーハ・カタール  色合いも形状もアラブの砂漠の城砦を思わせるような威容を誇るモスクで、2011年に完成した。イスラームの指導者の名を冠した国立モスクとしてカタール最大級の大きさを誇り、約1万2千人の礼拝者を収容する。広大な敷地に建設され、地上より1層持ち上がった広大な台座状のスペースに表庭とモスクが載っているような外観だ。表庭に面して、正門と左右の門をもつアーチの回廊が接しており、1本のミナレットが端に建つ。長方形の中庭を囲んでいる回廊の天井には65個もの小さなドームが据えられており、内部の装飾は緻密に造られていた。その奥にある礼拝堂にはメインとなる大ドームはなく、天井に規則的に28個のドームが並んでいるという独特な構造となっている。装飾のないすべてのドームに連続して、シャンデリアの光が淡く映る姿は荘厳であった。

Rashid Al-Zayani Mosque

Muharraq, Bahrain : ムハラク・バーレーン  バーレーンの慈善事業を活動の主とするRashid Al-Zayani財団によって2015年に完成したモスクで、名はその団体名から取られている。オスマン様式の直径16mの青銅色のメインドームと8mのサブドーム、メインドームを支える5個の半ドームをもち、玉のある噴水と中庭をアーチの続く回廊が囲んでいる。1段のバルコニーの付いた鉛筆型のミナレットは2本あり、伝統的なトルコのモスクを模して造られている。1,500名を収容し、内部は教室もあり、地域のコミュニティセンターとしての役目をもっている。

Al-Mukminin Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  シャープな扇形の屋根をもつ礼拝堂に金属の質感のある外装と、鋭角の屋根に沿って湾曲したモザイクが美しい現代建築のモスクだ。頭上をMRTが走るJurong East Central側は、いくつかの窓を除き鋭角の黒と銀の現代的に解釈したイスラームの幾何学パータンが繰り返されている。ミナレットは四角の金属のパネルをモザイク状に配置し、その側面は鋭角に切り取られた光と影を反射して見せる。Jurong East Street 21の交差点側では半円筒形のガラスのフォルムへと変化する。その後に独立して建つ礼拝堂が続いていて、不規則に切り取られた壁とも屋根とも意味をもつカラフルなアルミ製のスクリーンが大きな背景となっている。青、緑、黄色などのスクリーンは空や水や大地を表現し、光や影の影響で効果的にモザイクを表現している。デザインはシンガポールの建築事務所であるForum Architectsに拠るもので、シンガポールのモスクとしてはSembawang地区の Assyafaah Mosque も手掛けている。ここは礼拝の場としてだけでなく、学校や会議場などの施設も付随した地域のコミュニティセンターとなっている。モスクの原型は1987年に完成し、その後2006年の改装を経て現在は約4,500人を収容するモスクとなった。

Ferhadija Mosque (Ferhat Pasha Mosque) -Sarajevo-

Sarajevo, Bosnia and Herzegovina : サラエヴォ・ボスニア ヘルツェゴヴィナ  サラエヴォ旧市街中心のカフェや数々のショップが並ぶメインストリート沿いに建ち、多くの観光客を集めている。1561年もしくは1562年ごろに造られた典型的なオスマン様式のモスクで、1本の鉛筆型のミナレットをもち、1個の鉛色の大ドームと3個の小ドームがポルティコ上に並ぶ。サラエヴォの知事であったFerhad-beg Vukovic-Desisalićによって建造されたが、過去の火災により初等学校などの他の建造物は消失し、現存するのは礼拝堂のみとなってしまった。また、内戦によりドームは破壊されてしまったがその後の修復活動により現在の姿となった。内部の傷んだ壁画の修復は2011年に開始され2013年に完了し、ドームの鮮やかなオレンジや淡いグリーンで彩られた植物や花のモチーフを望むことができる。

Sabah State Mosque

Kota Kinabalu, Malaysia : コタキナバル・マレーシア  1975年に完成した、5,000人を収容する州立モスクである。グレーと金の六角形のハニカム状のモザイクに覆われたドームに、金色の小ドームを据えたどっしりとした16本の柱が6角形の礼拝堂を囲んでいる。鉛筆型のミナレットは約65mの高さで3段のバルコニーをもち、礼拝堂の内部から天井のガラスを突き抜けるように聳え立つ。重厚さが独特の設計はDato' Ar. Hj. Baharuddin Abu Kassim氏率いるマレーシアの建築事務所であるJurubina Bertiga Internationalによるものだ。彼らはこのモスク以外にも Sultan Salahuddin Abdul Aziz Shah Mosque (ブルーモスク)や An-Nur Jamek Mosque などの著名なモスクも手掛けている。ドーム内側は茶色に塗られ金のカリグラフィーが映える美しいデザインだ。

Jumeirah Mosque

Dubai, United Arab Emirates : ドバイ・アラブ首長国連邦  アラブ首長国連邦(UAE)国内にいくつかしかない、異教徒の見学が可能なモスク。UAEではアブダビの Sheikh Zayed Grand Mosque とともに美しさでも有名なモスクであり、世界中からの観光客が多数見学ツアーに参加し混雑していた。外装はベージュ単色で幾何学パターンの浮き彫り細工を施された、メインドームに4つの小のドームと2本のミナレットをもつ。デザインにシリアとエジプトの建築様式を取り入れて建造され、1979年に完成した。内装は淡いクリーム色、ピンク、ブルーに塗られた装飾をアーチや天井に施され、半球の大小ドームを支える台座には3角形に縁取られた文様が入っているのが印象的だ。

Arcapita Mosque (East Park Mosque)

Manama, Bahrain : マナーマ・バーレーン  アメリカ・シカゴで設立された世界中の超高層建築を手掛けていることで名高いSkidmore, Owings & Merrill (SOM)の設計で、マナーマ湾岸の新開発地域に建造された。モスク名のArcapitaはバーレーンの銀行であり、モスクは同じくSOMが設計をした本社ビルの一部を構成している。ソリッドな石造りの立方体の外観と、イスラームの意匠はミナレットの月のみという革新的なデザインは、現代のモスクデザインの評議会Abdullatif Al Fozan Awardより賞を勝ち取った。立方体の内部は2階建てで、離れて50mのミナレットをもつ。外観からは見えないが、外壁に均等に配置された3角形の切り込みには3角形の細い天窓があり、最小の熱でモスク内部へ光を取り込める。

Jami Ul-Alfar Mosque

Colombo, Sri Lanka : コロンボ・スリランカ  コロンボ下町の喧騒の中に、赤の白のストライプと格子模様のレンガに覆われた個性的なモスクが建つ。通りに立ち並ぶさまざまな商店が突如として途切れ、周囲と異なる色彩が現れる。その色合いから、別名Red Mosqueとも呼ばれている。2nd Cross StreetとMain Streetの交差点に跨って建っているが、交差点はモスクと関係のない独立した商店になっている。Main Street側は奥行きのあるファサードとなっているが、隣のビルの壁にモスクの壁と同じ赤白のストライプと格子の壁をつくり、擬似的な窓の形までも取っているのが面白い。インド・サラセン様式を取り入れたデザインで造られ、1909年に完成した。メインのミナレットには時計が付き、上部にあるドームは石榴をイメージした形状とのことだ。

Education City Mosque

Al-Rayyan, Qatar : アル ライヤーン・カタール  ドーハ郊外のアル ライヤーン地区に、カタール財団によって設立されたEducation Cityと呼ばれる大学などの複合教育地区が建設された。その広大な敷地に忽然と巨大なモスクが現れる。最初に目に入ったのは三角形の平面的なパネルで構成された、白い緩やかな曲線をもつ外観であった。周囲に沿って歩くと突然パネルは立体感をもち、丸みを帯びた生物のような躯体に変化する。今まで見ていた平面はまるでその断面であった印象だ。面は柔らかな曲線を造りながら徐々に高度を下げ、やがてシャープなデザインの斜めの2本のミナレットになるという斬新なデザインだ。どこを見ても同じ要素がない、連続した曲線が優美な設計はイギリスとスペインに本拠を置く建築事務所であるMangera Yvars Architectsによる。外装だけでなく、浮き彫りされたクルアーンで飾られた中庭を囲むガラスの壁や、吹き抜けの階段、1,800人を収容する真っ白なドーム状のメインの礼拝堂と金色の立体的な三角形の輝くミフラーブなど、見所が多い。内部は教室などをもつ複合施設になっており、先に見た外観と内部の構造を比較しながらほぼ全体を歩くことができる。

Sultan Qaboos Grand Mosque

Muscat, Oman : マスカット・オマーン  オマーン国王であるQaboos bin Saidの命により2001年に完成した、白いインド産の砂岩造りの重厚なデザインのモスクである。広大な敷地をもち、モスクへと続く美しく花が咲き手入れされた樹木が茂る庭園にまず圧倒された。淡い茶色のアーチの続く長い廊下は庭園とモスクを区切り、2本の廊下の両端に2本の短いミナレットをもつ。うち表側片方のみメインの白い90mのミナレットが付随する。格子状の透かしの入った金色のドームと中庭がある礼拝堂は、2本の廊下に間に広大な床のスペースを擁し建っている。外装だけでなく、長廊下や回廊の天井のドームや木彫り細工も美しい。また、巨大なシャンデリアと淡く緻密な文様が光り浮かび上がる礼拝堂のドーム内側には圧倒される。内装はペルシア様式を取り入れており、ミフラーブとその上部を飾る鍾乳石文様もまた必見だ。

Al-Bukhary Mosque -Alor Setar-

Alor Setar, Malaysia : アロースター・マレーシア  マレーシアの実業家であるTan Sri Syed Mokhtar Al-Bukhary氏が創設したAl-Bukhary財団によって建造された。モスクは広大な土地に大学などの複合施設の一部として造られ、1万5千人を収容する。前面には泉を模した水の流れるブルーとグリーンのタイル地の池と椰子の樹が並ぶ整然とした中庭がひろがっており、白いモスクとのコントラストが映えてとても美しい。2本の48mのミナレットを礼拝堂の背後に、1個の大ドームを礼拝堂上に、ファサードと庭を囲む両側の施設上に6個の小ドームをもつ。デザインは世界のモスクのデザインからインスパイアされており、ミナレットは預言者のモスクを、内部のミフラーブはイランのAbd al Samad廟をモチーフにしている。大ドームの外側にはクルアーンのカリグラフィーとブルーとグリーンの美しいイスラーム文様が描かれ、こちらはイランの王のモスクをモチーフにしている。クアラルンプールにも財団による同名の Al-Bukhary Mosque があるが、やはりドームのデザインはだいぶ似せている。ドームを支える内部のアーチは、鍾乳石装飾を全面に使用しておりマレーシアではあまり見かけない様式である。

Emin Pasha Mosque

Prizren, Kosovo : プリズレン・コソボ  プリズレンにモスクや時計塔などの建築物を残した貴族一家のMehmed Emin Pashaによって造られ1832年に完成した。歴史のあるモスクであるが、2014年に庭やモスクの外装と内装の修復があり、特に内部のブルーが基調の植物文様の装飾は美しく描かれている。トルコの機関からの援助があり、修復完成時の式典にはトルコの首都アンカラからのビデオリンクでエルドアン大統領も参加したという力の入れようだ。オスマン様式のモスクであるが、おそらくプリズレンで観光客が一番最初に訪れることが多いであろう Sinan Pasha Mosque に似ており、そのコピーとして建てられたとのことである。特に奥へ突き出したミフラーブの上部に半ドームが載った構造はまったく同じであり、描かれた絵も同じく太陽のモチーフに4本のミナレットのモスクが描かれていた。もし時間があれば見比べるのも面白いと思う。

Malabar Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  南インドのタミールや、ケララのマラバールと呼ばれる地域からの移民商人コミュニティによって運営されている1963年に完成したモスク。大通りの交差点に建ち、金色に輝く大ドームと3個のドームと8角形のミナレット、そしてブルーの外壁がよく目立つ。近くに寄ると壁は3色の白に近い薄いブルーから濃いブルーまで、そして金色の小さなタイルで緻密な幾何学文様のパターンで造り込まれているのがわかる。現在のタイル外壁に改修されたのは1995年のことで、完成当初のデザインはまだタイルで覆われておらず、クリーム色の壁で造られていた。ファサードのアーチをくぐると2階の礼拝室に続く階段があり、上りきると角屋根のメインの礼拝室になっている。階段はさらに3階まであり、登りきるとドームが見え、その真下にも小さな礼拝室があった。バルコニーのついた3階の回廊からは、2階の礼拝室を眺めることができる。

Satuk Bugra Han Mosque

Bishkek, Kyrgyzstan : ビシュケク・キルギスタン  ビシュケク市のはずれ、中低層のアパートが続く景色の中に大きなモスクが現れる。トルコの支援によりKyrgyz-Turkish Manas Universityの敷地内に2012年に建設が始まり、2016年に完成した。4,000人を収容するという大きな礼拝堂は典型的なオスマン様式のデザインで造られ、3個のバルコニーの付いた59mもの高さの2本の鉛筆型のミナレットをもつ。内装も中央アジアの伝統様式は感じられず、ストライプのアーチやステンドグラスの配置など、まったくトルコのモスクのデザインだ。モスクの名称はテュルク系王朝のカラハン朝の始祖であり君主の名から取られた。

Omar Ali Saifuddien Mosque

Bandar Seri Begawan, Brunei : バンダルスリブガワン・ブルネイ  通称オールドモスクとも呼ばれるブルネイを代表する国立モスクの一つ。1958年に完成し、ブルネイの28番目のスルタンの名を由来としている。ムガール様式の金色に輝くドームと、市内では一際高いミナレットをもつ。薄いベージュ色の外壁は全体に直線的なデザインであるが、ポーチや回廊はロープをモチーフにした捩れのある独特な柱と曲線のアーチが組み合わされている。敷地の中には整備された庭園と大きな弧を描く人工のラグーンがあり、対岸からは水面に写るモスクの姿を望むことがきる。モスクの前から伸びる2本の橋のうち1本はラグーンの周囲を巡る対岸の遊歩道へ、もう1本は池の真ん中に浮かぶ王室船を模したモニュメントへ続いており、どちらも通行できる。内部は撮影はできないが、白地に金の装飾の入った荘厳な天井は息を飲む美しさであり、必見。

Koski Mehmed Pasha Mosque

Mostar, Bosnia and Herzegovina : モスタル・ボスニア ヘルツェゴビナ  モスクはモスタル市内を流れるNeretva川の崖上に建ち、裏庭からはモスタル観光のハイライトであるStari Mostと呼ばれる橋の正面に据えて眺めることができる。モスクの入り口は橋へ向かう人々が行き交う旧市街の商店が並ぶ小道にあり、低いアーチの門をくぐると洗い場のある中庭が拡がりを見せる。このモスクへもたくさんの観光客が訪れていた。モスクの原型は1618年ごろに完成しているようであるが、近年の内戦で破壊されてしまい現在の姿は再建後のものだ。モスタル出身のオスマン帝国の軍人Mehmed Pasha Koskiの命で作られたが彼は完成を見ず亡くなっておりその兄弟が後を継いだ。典型的なオスマン様式のモスクであるが、木製の斜めになった庇形の屋根がポルティコを覆っているのが特徴でこれは近くにある Karadjoz Bey Mosque にも似ている。メインドームのほかに3個の小ドームをポルティコ上部にもち、28mになる鉛筆型の1本のミナレットをもつ姿も似ている。だが、こちらのミナレットにはバルコニーに鍾乳石状装飾(ムカルナス)がなく、台座にのみわずかにシンプルな装飾があるのが違いであった。

Almaty Central Mosque

Almaty, Kazakhstan : アルマトイ・カザフスタン  アルマトイ市内の大通り交差点に面して建ち、建物のバランスに比べると大きめの金色に光るドームが目立つ。大小計2個のドームと4隅に4本の短いミナレットをもち、外側にある1本のメインのミナレットは47mの高さがある。白い大理石で造られたペルシア様式のモスクは通りに沿って横に長く、ドームとミラーブは交差点側にあり、その反対側に青地に白い文字で描かれたカリグラフィーで飾られた大きなイーワーンがある。据えられたドアをくぐると、すぐに対面のミフラーブまで側廊を携えた細長い通路状のホールがまっすぐに続くという独特な構造になっている。キリスト教会を訪れたときに感じる距離感がこのモスクにもあった。

Sultan Salahuddin Abdul Aziz Shah Mosque

Shah Alam, Malaysia : シャーアラム・マレーシア  ブルーモスクの名で呼ばれ、首都クアラルンプール近郊においてプトラジャヤの Putra Mosque 、通称ピンクモスクとともに多くの観光客が訪れる有名なモスクである。4本のミナレットは142mもの高さを誇り、3段のバルコニーをもつ鉛筆型をしており、ミナレットだけはオスマン様式の特徴を取り入れていると感じる。ただし、デザインは現代的にアレンジされて、先端はブルー1色に塗られ、1段目だけは鋸の状の幾何学模様で彩られている。アルミニウム製という巨大なドームもブルーが基調となった格子状の幾何学模様と白地に青いカリグラフィーが描かれている。上部を切り取った4角錐の屋根を8枚の板状の柱で支えており、その上に先端がやや尖った玉子を切った形状をしたドームが載っているの特徴である。外装だけでなく中庭の屋根やステンドグラスから入る光で内部もブルーに照らされ、ブルーモスクと呼ばれる所以だ。

Luang Kocha Itsahak Mosque

Bangkok, Thailand : バンコク・タイ  倉庫やショップハウスの立ち並ぶ古いバンコクの中華街の路地に美しいモスクが唐突に現れる。ミナレットもドームもないコロニアル風の2階建て西洋建築で、黄色く塗られた姿が通りから一瞬だけ見えるが、時折通りかかる外国人の観光客は知らずに通り過ぎてしまうだろう。タイは植民地時代がなく古い西洋建築は多くはないが、過去にバンコクの中心であったこのチャオプラヤー川周辺にはまだ残っており、このモスクもその一つだ。その名になったLuang Kocha Itsahakは、当時のタイのSai Buri、現マレーシアのケダ州から来たマレー語の通訳をする役人で、祈りの場がないムスリム商人のために土地を手に入れ、この地にモスクを造った。

Bandung Grand Mosque

Bandung, Indonesia : バンドン・インドネシア  3個のドームをもち、広場に面し大きく南北に広がった姿が特徴だが、近くではとても全貌を見渡すことができない。低層であるが、奥行きもあり、1万3千人を収容する大きなモスクだ。81mの高さの2本のミナレットが遠くからでも良く目立つ。モスクはかなりの数に亘る改装を繰り返し、現在の姿になったのであるが、1930年代に改装された際のインドネシア伝統建築様式の3段屋根のデザインは現在もオマージュとしてミナレットの上部の飾りに残されている。また、当時の礼拝堂の真ん中にあったその3段屋根の位置に現在ではクリーム色のメインドームを配し、当時の南北にある2段屋根の位置に金色の小ドームを配するという、構造にもオマージュを込められている。

Abdul Gaffoor Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  シンガポールのインド人街、リトルインディア地区にあるユニークな外観のモスク。1859年にインド系イスラーム教徒が多かったこの街に木造のモスクが造られたのが始まりとなった。その後弁護士事務所の書記官であったShaik Abdul Gaffoor bin Shaik Hyderが老朽化したモスクの代わりとなる新しいモスクのために資金を作り、1907年に建設を始めさせた。完成したのは彼の死後の1927年となり、モスクにその名を残した。その歴史から1979年に国定記念物に制定されている。繰り返す星のモチーフを散りばめられた緑と黄色の外壁と、建物を囲むムーア様式の多弁式アーチが特徴。メインエントランス上には日輪型をした預言者のカリグラフィーが、屋上に林立したミナレットには月のモチーフが並んでおり、その対比が面白い。建物自体はムーア様式だけでなく、ムガールとゴシックを合わせたインド・サラセン様式のデザインを取り入れており、特に円柱や柱や壁の持ち送り装飾は古典的な西洋建築のデザインを感じる。玉葱型のドームが西洋風の欄干に囲まれているのもマルチカルチャーのシンガポールらしく、多様多彩で個性的なモスクであると思う。

Jashar Pasha Mosque

Pristina, Kosovo : プリシュティナ・コソボ  オスマン帝国時代の現在マケドニア・スコピエ市の総督も後に務めたJashar Mehmet Pashaの名を冠したモスクであり、プリシュティナ旧市街にいくつかある歴史的建造物の一つ。モスク自体は15世紀ごろに建造されたものであるが、プリシュティナの裕福な市民であった彼の資金提供により1834年に、今の原型に改築された。一見、鉛で覆われたドームと鉛筆型のミナレットをもつ典型的なオスマン様式のモスクであるが、通常のオスマン建築にあるようないくつかの小ドームが載った柱廊玄関は道路の拡張で破壊され、このモスクの特徴でもある木製のポーチに置き換えられた。その後、ポーチも含め全体をトルコの機関により修復されている。ポーチと礼拝堂を区切るファサードの壁やドア、ドームなど内部の装飾は、緑や青や茶色を使い、植物をメインのモチーフに使っており可憐で美しい。バルコニーは大きくオレンジ色が使われ、ミンバルやドームの花のモチーフなどにも差し色で使われているのがわかる。

Osman Fazil Polat Pasha Mosque

Gazimagusa (Famagusta), Northern Cyprus : ガジマウサ (ファマグスタ)・北キプロス  北キプロスの港街ガジマウサに2015年に完成した新しいモスクで、オスマン様式で建造された。トルコとその周辺で造られた典型的なオスマン建築と違ってシンプルな白い外壁が特徴のデザインで、ドームまでも同じく白1色で塗られたモスクは南北キプロスでは見られないと思う。大きさに対して細身で3段のバルコニーのついたミナレットが青空に映える。その名の由来はキプロス紛争時のトルコ軍指揮官Osman Fazil Polat中将から取られたものである。

Klang Royal Town Mosque

Klang, Malaysia : クラン・マレーシア  クラン川の岸に建ち、市内へ入る橋を渡ると金色のドームが目立つ姿を現す。クラン市に従来からあった2箇所のモスクでは増加する礼拝者を受け入れることができなくなり、1,500人の巡礼者を収容するこのモスクが計画されることになった。2003年に建造が始まり、長い期間を経て2009年に完成した。上から見ると星型八角形で造られ、中心の大ドームは8個の同じく金色の半ドームで支えられている。内部は全体に白と淡いピンク色で塗られ、見上げると半ドームの直下に半円形のベランダがせり出している。ドームの装飾はシンプルで天井が高く感じられる。無数に開いたひし形の窓から光が入り、アクセントになっていた。

Taza Pir Mosque

Baku, Azerbaijan : バクー・アゼルバイジャン  ロシアのサンクトペテルブルグで学んだアゼルバイジャンの建築家であるZivar bey Ahmadbayovにより、モスクの原型は1914年に完成し、その後すぐの旧ソビエト連邦時代には工場・倉庫に使われるという不遇の時代を経ていた。その後大統領イルハム・アリエフの命によって 2009年に再建されている。シルヴァン・アブシェロン様式のデザインでファサードのポーチは3つのアーチで支えられ、1個のメインドームと長方形の礼拝堂の前面両側に2本のミナレットをもつ。ミナレットは建物に対して高さはなく、どっしりとした印象だ。ミナレットの頭頂部のドームと、メインドームの縁取りの装飾やカリグラフィーには金が使われており荘厳である。敷地内に建つコの字形の建物はBaku Islamic Universityである。

Al-Serkal Mosque

Phnom Penh, Cambodia : プノンペン・カンボジア  2014年にその名になったアラブ首長国連邦のEisa Bin Nasser Bin Abdullatif Al-serkal氏の資金提供にて建造された。開会式典には氏と、そしてフンセン首相が参加している。近隣諸国では見かけないオスマン様式のデザインで、1,200人を収容するカンボジアで最大のモスクとなった。現在のカンボジアは人口のほとんどが仏教徒であるが、特にチャム族と呼ばれるマレー系イスラーム王朝であるチャンパ王国の末裔は現在もイスラーム教の信仰が続いている。この地にも1968年に造られたモスクがあったが2012年に解体されその跡地に新しくこのモスクが置き換えられることとなった。ドーム外装は茶ともえんじ色とも取れるような不思議な色合いをしている。内部の壁は薔薇も色で、天井の花のモザイクとドームは柔らかな色味のクリームとターコイズブルーで彩られている。紺地に金のカリグラフィーはアルジェリアの職人の作品である。 

Sultan Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  モスクの名称となった英領時代以前のジョホールの王Sultan Hussein Shahの命で、1824年にこの地Kampong Glamでモスクの建設が始まった。完成当時の1階建てのモスクから現在に至るまで数回の改築を経ている。現在の大きな姿の原型は1932年に完成し、以降2016年に施設は修繕され今に至る。デザインは当時から数々の歴史的な宗教・商業建築を手がけていたシンガポールの建築事務所Swan&Maclaren ArchitectsのDenis Santryによるもので、英領時代のインドのコロニアル建築で見られる、ゴシックとムガールを合わせたインド・サラセン様式を取り入れた。1975年には国定記念物として指定されている。金色のドームのすぐ下の黒く塗られた台座は、注意深く見ると凸凹になっている。そこにはガラス瓶がはめ込まれており、王が貧しい教徒でもモスクの建設に参加し貢献できるように瓶を寄付として集めた、という逸話が残っている。