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Showing posts from November, 2018

Sinan Pasha Mosque -Prizren-

Prizren, Kosovo : プリズレン・コソボ  プリズレンはコソボ南部にあるオスマン帝国時代の文化遺産の残る街で、モスクはツーリストで賑わう中心部を見下ろすように建つ。すぐそばを流れるPrizren Bistricaと呼ばれる川にかかる石橋とともに街のランドマークとなっている。 オスマン帝国の政治家Sofi Sinan Pashaにより建造され1615年に完成した。以降幾度かの修復を経ている。通りから見ると近隣の商店街の2階くらいの高さにエントランスがあり、4つの柱と3個の小ドームをもつポルティコへは階段を上っていくことになる。オスマン様式の建築で正方形の礼拝室の上部は8角形の台座で大ドームを支えている。ミフラーブは壁から大きく突き出ているのが特徴で、奥行き感があり上部には半ドームが載っている。内部の装飾はバルカン半島で時折見かけるデフォルメされていない花や植物文様で彩られ、ミフラーブ上のドームには4本のミナレットのモスクが描かれていた。

Sarena Mosque

Tetovo, North Macedonia : テトヴォ・北マケドニア  このモスクは「Painted Mosque」「Colorful Mosque」との名でも呼ばれており、独特の装飾が施された外壁と内装をもつ。原形は1495年に建造され以降19世紀初頭に装飾の改装があり、近年に修復されている。Pena川のほとりに建っており、瓦を葺いた石垣越しに、カードをはめたような不思議な模様の壁が見て取れる。遠目で見るとパネル状の凹凸感があるが色彩の濃淡で影を表現しており、近くで見ると構造的な部分の一部を除き平面である。くすんだオレンジ色と緑色で、星を模したのであろう幾何学模様と、花柄で壁一面が装飾されている。たくさんの信者が訪れていたが、装飾には意に介さず、誰もが日々日常といった感じで礼拝をしてるのが不思議な印象であった。バルカン半島の小さなモスクでよく見られる外観はドームのない寄棟屋根と1本のオスマン様式のミナレットをもつ。内部は目が眩むほどの細かい手の込んだ塗装で埋め尽くされ、特に内部からは見上げることのできる天井のドームは必見。植物と幾何学文様のペイントを施され、窓の形に区切られた円の中に花瓶と交互に、モスクの見える都市の風景が描かれている。

Lala Mustafa Pasha Mosque

Gazimagusa (Famagusta), Northern Cyprus : ガジマウサ (ファマグスタ)・北キプロス  Cathedral of Saint Nicholasとの名であった教会を転用したゴシック様式のモスク。現在の名は当時ヴェネツィア共和国の支配下にあったキプロスを陥落させたオスマン帝国の軍人Lala Mustafa Pashaに因んで付けられた。外観を見る限り、転用後に足されたミナレット以外はヨーロッパにあるゴシック教会の様相を保っている。側壁はフライング・バットレスと呼ばれる6枚の控え壁が垂直に突き出て天井を支えている。双塔の上部は地震と戦乱で崩壊したまま修復されていない。教会の建設から1328年の完成当時はフランス系がキプロス王位を継いでおり、デザインはフランスのランスにあるノートルダム大聖堂に触発されたそうである。内部はキリスト教に繋がる装飾は撤去され、またイスラーム文様も付け足されてもいないので、逆にゴシック様式の教会の特徴である交差リブヴォールト天井や尖頭形のアーチが引き立っていた。足を踏み入れた途端感じる奥行き感は独特であった。

Moscow Cathedral Mosque

Moscow, Russia : モスクワ・ロシア連邦  元来この地には1904年にタタール人によって造られたモスクが存在していた。旧ソビエト連邦時代にも閉鎖されなかったという歴史のあるモスクは、イスラーム教徒の増加や経年劣化より論争の末2011年に解体され、2015年にその跡地に現在のモスクが完成した。外装や小ドームのエメラルドグリーン色は解体した旧モスクの色に似ており、オマージュとして採用されたのかも知れない。メインのドームは高さ46m、メインのミナレット2本は高さ78mを誇り、計12kgの金を使用している。1万人を収容する巨大な建築で、内部は3層で造られ2階の一部はイスラームの文化を紹介する博物館にもなっている。内装はトルコの政府の援助と技術工の協力で造られ、クルアーンの描かれたドームの内側で渦を巻く独特な文様は荘厳の一言だ。

Ebu Bekr Mosque (Al-Zamil Mosque)

Shkoder, Albania : シュコドラ・アルバニア  過去このモスクのある場所には、Fushe Cela Mosqueと呼ばれる古いモスクが建っていたがアルバニアの政策によって破壊されてしまった。その跡地にサウジアラビアのSheh Zamil Abdullah Al-Zamil氏からの援助により新しいモスクが1995年に造られた。モスクの名は預言者ムハンマド死後の指導者、初代カリフとなったアブー・バクルの名に因んで付けられた。氏の援助の功績により、Al-Zamil Mosqueとも呼ばれている。オスマン様式にガラス面を多く取ったモダンなデザインである。2本のミナレットは41mの高さがある。

Omeriye Mosque

Nicosia, Cyprus : ニコシア・キプロス  Church of Saint Maryと呼ばれていたキリスト教会を転用したゴシック様式のモスクである。元の教会はオスマン帝国の侵攻で一部破壊されたが、帝国のララ・ムスタファ・パシャによって1571年にモスクとして改築されオスマン様式のミナレットを追加された。建物は教会時代そのままに60mほどもあるという奥行きを保っており、ミナレット側から望むと非常に長い建物に感じる。裏庭側にはフライング・バットレスと呼ばれる側廊の外壁の支えが残っていた。内装はほぼ白一色でアーチが連続して奥まで続いており、ここでも通常のモスクであまり感じることのない奥行き感を味わえる。

Kapitan Keling Mosque

Penang, Malaysia : ペナン・マレーシア  移民の南インド系イスラームコミュニティーの主導者であるカピタン・クリンによって1801年に原型が建造された。創始者の祖国インドで主流のムガール様式で建造されたペナンで最古のモスクと言われる。その後改築されており、ドームやエントランスのアーチなどにムガールの影響を感じるが、回廊のアーチは多弁形アーチのほかに馬蹄形アーチも見られ、ムーア様式も取り入れているのではないかと見える。マレーシアの商店でよく見かける簾がアーチの裏に添えられているのが興味深い。ドーム内部は全体に白く、金色のカリグラフィーで飾られている。文様は少なくシンプルな印象だ。ドーム直下は、多弁形アーチで支えられた台座の窓から入った光で、黄色に淡く照らされていた。

Sultan Mehmet Fatih Mosque (Mbretit Mosque)

Pristina, Kosovo : プリシュティナ・コソボ  その名となったSultan Mehmet II Al-Fatihの命よって建設され1461年に完成した。トルコ政府機関の援助により修復されている。「皇帝=Mbretitのモスク」との別名もあり、プリシュティナでは一番の大きさである。オスマン様式で建造され、鉛筆型の1本のミナレット、1個の大ドームと入り口のポルティコ(柱廊玄関)上に3個の小ドームをもつ。ファサードの2枚の窓だけは丸く愛嬌がある。モスク全体の装飾として主に反復する青い植物文様が描かれている。

Nakhoda Mosque

Kolkata, India : コルカタ・インド  赤い砂岩の外壁の1万人を収容するコルカタで最大のモスク。3層に渡って続くバルコニーのアーチが美しい。ムガール様式で建造され3個のドームと2本の46mのミナレット、25本の小さなミナレットをもつ。行き交う車や人々で混み合う交差点に面した1階には店舗が入り賑わっている。西インドのイスラーム教徒のコミュニティのKutchi Memonsからの資金提供により、以前からあった小さなモスクは1926年に現在の形となった。デザインはムガール帝国時代のアーグラのアクバル廟を模したとされている。

Sultan Ahmed Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  トルコを代表する、世界で最も有名であろうオスマン様式のモスク。トルコの天才建築家ミマール・スィナンの弟子、メフメト・アーの手による。名称は建設当時のオスマン帝国の皇帝アフメト1世より名づけられた。内装に使われた青いタイルから、「ブルーモスク」の名ももつが、現在では冴えた青さは見られなくなってしまっている。スィナンの理想とも言える建築のスタイルを継承し、大ドームを4個の半ドームで支える工法や、手違いで6本を建ててしまったという逸話のある、鍾乳石飾り(ムカルナス)のバルコニーの付いた鉛筆の形ミナレットが特徴である。内部は2万枚を超える植物文様のタイル、200枚を越えるステンドグラスで飾られ、巨大な円形のシャンデリアがドームから釣り下がり、正に圧巻である。

Selimija Mosque (Bar Islamic Center)

Bar, Montenegro : バール・モンテネグロ  アドリア海の港街バールの旧市街に、モンテネグロ=「黒い山」の国名どおりの黒い山々と空に向かって聳えるミナレットが映える美しいモスクがあった。全体の外装はベージュでアーチだけに赤茶色のストライプを配し、ドーム外装はすべて黒、幾何学文様はなく、わずかに鍾乳石飾り(ムカルナス)を模したデザインが隅に見られるほどの整然としたデザインだ。中心にあるモスクは2本の高さ42mのミナレットをもち、施設内に1,800人を収容する。トルコ政府機関の資金協力で完成した。モスクは湾曲した回廊に囲まれ、回廊には幼稚園・ハラールレストラン・図書館・ホールなどがあり、祈りの場としてだけでないイスラーム文化継承のための複合施設となっている。中庭は広く取られ、ヨーロッパの街角で多く見かけるオープンカフェとなっており人々が憩いに訪れていた。

Lead Mosque

Shkoder, Albania : シュコドラ・アルバニア  このモスクを初めて見かけたのは、池の水に沈んだ廃墟のような姿の画像であった。訪れたときは周囲が水で満ちる時期では無かったのか、思いと違い緑の草むらの中に佇んでいた。外壁は修復が行われたとのことであるが、石造りの壁の地面に近い部分は黒く変色しており、長く水に浸かっていることがわかる。モスクを囲む水が溜まる窪みには鉄の細い橋が架かっており、モスクが水の中で孤立しても信者は礼拝に向かうことができる。周囲も内部も人の気配がまったくないのだが、内部は煌々と明かりが灯っていた。過去アルバニアは宗教を否定する政治を進めていたため多くの宗教建築は破壊されたのだが、このモスクは歴史的建築の意味で破壊を免れている。ミナレットはそれ以前に破壊されたまま修復されておらず土台だけが残っていた。名称は過去、ドームが鉛(Lead)で覆われてことに由来する。

Hazrat Sultan Mosque

Nur-Sultan (Astana), Kazakhstan : ヌルスルタン (アスタナ)・カザフスタン  ヌルスルタン(アスタナ)市新市街にあるカザフスタン最大級のモスク。1個の高さ51m大ドームと9個の小ドーム、77mの高さの4本のミナレットをもち、館内は3層で構成されている。側壁の巨大なイーワーンにはペルシャ様式を感じるが、旧来の伝統的な中央アジアのモスクと異なり、外壁はほぼ白く、黒、黄色、わずかにアクセントの淡いグリーンを使用している。アラビア半島の湾岸諸国にありそうなモスクのデザインに独特のカザフ文様を組み合わせているのも特徴的だ。内部の装飾にもカザフ文様が使用され、ドームの内側でそれを見て取れる。

Selimiye Mosque

Lefkosa, Northern Cyprus : レフコシャ・北キプロス  かつて聖ソフィア大聖堂(Cathedral of Saint Sophia)と呼ばれたキプロス最大のキリスト教会は、オスマン帝国の占領によってモスクへと転用された。転用後、現在もゴシック様式のモスクとして使われている例としては、同じ北キプロスの Lala Mustafa Pasha Mosque とならぶ最大級の規模ではないかと思う。ゴシック建築の特長となるフライング・バットレスと呼ばれる側廊の外壁を支えるために屋外に張り出すかたちで設置される柱は、通常のモスクでは見ることはない。2本のミナレットは転用後に追加された。内部はキリスト教に関わる装飾は撤去されており、追加されたメッカの方向を示すミフラーブは教会として建造されたため方向と構造が合っておらず、側廊に置かれている。

Mustafa Pasha Mosque

Skopje, North Macedonia : スコピエ・北マケドニア  1492年に建造されたオスマン帝国時代の高官の名を冠したモスク。オスマン様式で建造され、以降、地震による被害の修復やトルコ政府機関による修繕を受け現在に至る。ミナレットは1本で高さは47m、礼拝堂に1個の大ドームとファサードに3個の小ドームをもち、ポルティコ(柱廊玄関)のアーチと小ドームは4本の白い大理石の柱により支えられている。外壁は茶色の石積みと赤いレンガを組み合わせ造られており、独特な模様と色味を生み出していた。4つのドームの装飾や内装には青、紺、グレーを基調にした植物モチーフの文様が多く用いられ、シンプルだがコントラストがくっきりとしたデザインで美しい。

Crystal Mosque

Kuala Terengganu, Malaysia : クアラトレンガヌ・マレーシア  クアラトレンガヌにあるイスラーム文化を紹介する公園に接する海上に、鋼とガラスでできたそのイメージから「クリスタル」の名のモスクがある。2008年完成、4本のミナレットをもつ。ガラスは角度によって光線と反射の加減で金色から黒へ変化し、不思議な色合いを見せていた。礼拝堂内からガラスのドームを見上げると色は付いておらず透明な光が祈りの場所を照らす。内部は白と金・黄色を基調にした幾何学と植物の文様が使われ、礼拝所を囲むガラスの壁も装飾され外光に文様が浮かび上がる。

Makkah Masjid / Mosque

Hyderabad, India : ハイデラバード・インド  インド中南部の主要都市ハイデラバードはイスラーム教徒が多く住む街だ。過去この地を統治したイスラーム系王朝であるゴールコンダ王国時代の建築が今も残っており、このモスクもその内の一つである。王国の創始者クリー・クトゥブ・シャーの命によって建設された。花崗岩と聖地メッカから運ばれたという土のレンガで造られ、1万人の礼拝者を収容できるハイデラバード最大のモスクだ。正面から眺めると角に2本のミナレットと5個の大きなアーチがあり、3面の計15個のアーチで礼拝堂を支えている。その名もメッカのGreat Mosqueに因んで付けられた。

An-Nur Great Mosque

Pekanbaru, Indonesia :  プカンバル・インドネシア  プカンバルの市内中心に建つ、グリーンを基調にした重厚な雰囲気をもつモスク。公園のように整備された広大な敷地にあり、たくさんの人々が礼拝や憩いに訪れていた。ムガール様式とインドネシアの大きなモスクで見かける重厚さを融合させたデザインで、正面から眺めると特にインドのタージ・マハルに影響を強く感じる。ブルーとグリーンのタイルを格子状に組み合わせた模様の大きなドームを中心に、合計10個のドームと4本のミナレットをもつ。3階建てで、最上階は礼拝室となっており、1階からはエスカレータで上がることもできる。モスクだけでなく、図書館や幼稚園から高等学校などの教育施設も付随しており、プカンバルのイスラーム文化の継承を担っている。内部へは立ち入っておらず画像のドームは入り口ホール上のもの。

Bibi-Heybat Mosque

Baku, Azerbaijan : バクー・アゼルバイジャン  元々、この場所には13世紀に造られた同名のモスクが存在していたが、1934年に旧ソビエト連邦政権による反宗教運動の対象となり破壊されてしまった。その後当時のアゼルバイジャン大統領Heydar Aliyevの命により、建築家Sanan Sultanovの手で、石灰岩を外装に、3個のドームと2本のミナレットをもつ現在のモスクが建設された。当時の資料から見比べると波型に溝のあるドームと、ミナレットのデザインは復元されているように思える。その3個のドームのうち、2個を見学することができた。南側1個はブルーと金で書かれたクルアーンで彩られ、また真ん中のドームはグリーンと同じく金で彩られ、霊廟として使われている。

Kota Kinabalu City Mosque

Kota Kinabalu, Malaysia :  コタキナバル・マレーシア  ボルネオ・サバ州の州都コタキナバルにある美しい水上モスクとして多数の観光客がここへ訪れる。マレーシアにいくつかある水上モスクと違い、このモスクは実際には浮かんでいるのではなく、人工池の水に囲まれるように造られている。2000年に完成し、ブルーの大ドームと小ドーム、4本のミナレットをもち、1万2千人の礼拝者を収容するサバ州の主要なモスクだ。直線的な構造の礼拝堂が水に写る姿は凛とした印象を与える。そのデザインはサウジアラビアのマディーナにある「預言者のモスク」にインスパイアされたものだという。