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Showing posts from August, 2023

Quba Mosque

Madinah, Saudi Arabia : マディーナ・サウジアラビア  Madinah市内中心からやや外れにある、イスラーム史上では最古とも呼ばれるモスクである。Madinahにおいて Al-Masjid An-Nabawi(Prophet's Mosque) に続く聖地にあたり、礼拝に訪れる信者で溢れている。モスクとして原形が完成したとさせるのは西暦622年、ムハンマドがマッカから迫害を逃れて、この街に移り住んだ年である。イスラーム暦はヒジュラ暦と呼ばれるがこの年がヒジュラ暦での「1年」になる。現在のモスクは再建されたものであり完成は1986年。サウジアラビアで多数の、Jeddahの King Saud Mosque もデザインしたエジプト人建築家のAbdel-Wahed El-Wakil氏によって造られた。デザインは重厚な長方形で建物の真ん中に大きな中庭がある。礼拝堂上に明かり取りの窓がついたメインドームは6個、うち1個が一際大きく造られ、小ドームが合計56個ある。4本のミナレットは礼拝堂4隅に建てられており、四角形の土台から上部へ向けて八角形、円柱と変化する。エジプトでよく見られる形状で、2段のバルコニーにムカルナス装飾が施されている。以前のモスクはミナレットが1本の古い画像で見る限りでは四角形の似た雰囲気のモスクだが、これは完全に壊されて再建された。

Hagia Sophia Grand Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  トルコの首都イスタンブールで Sultan Ahmed Mosque(ブルーモスク) と双璧を成す巨大モスクであり、「Hagia Sophia=聖なる知恵」と名付けれたビザンツ様式の歴史建築である。トルコ語ではAyasofyaと呼び、対外的にそのようにも呼ばれている。激動の時代を耐え、元々は栄華を誇ったビザンツ帝国時代に、キリスト正教会のMegale Ekklesia(大聖堂)として建造されたものであった。ラテン帝国の一時的な支配下でローマカトリック教会の時期があったが、正教会に戻った後もやがて、オスマン帝国の侵攻によって滅亡したビザンツ帝国の終焉を経てモスクへと転用されることになる。その後は世俗化した博物館となり、2020年にまたモスクに戻るという数奇な運命を経て今に至る。構造自体も現在のモスクとなる建造物の原型は3代目にあたり、初代と2代目は暴動で焼失、破壊されて残っていない。3代目の建造に当たって当時の最高峰の技術を集め、巨大な長方形で、メインドームとそれを挟んで2個の半ドーム、4本の柱とアーチでメインドームを支え、主身廊と2本の身廊、聖堂に入ることを許されない人々のためのナルテックスと呼ばれる細長い部屋で構成された基本的に現存している今の姿で完成した。現在でもヨーロッパで見かける標準的な長堂のバシリカ様式建築と、ドームを抱く正方形の集中式建築を融合させた「円蓋式バシリカ」と呼ばれることになる斬新な設計である。その後はしかしながらドームの崩壊、修復やバットレスを付け加えたりと段々と姿は変わっていくがおよそ現在の姿を保ってはいる。オスマン帝国時代になり、Mehmet2世によってキリスト教会から更にミンバルやミフラーブ、ミナレットなど付け加えられモスクとして運用されることとなった。最初に建てたミナレットはこれもまた崩壊してしまい、新たに建てた4本のミナレットが現存している。うち2本はオスマン帝国の天才建築家のミマール・スィナンによる。偶像崇拝を禁じたイスラームでもさすがにこの巨大建造物への畏敬の念からか内部の破壊はほとんどなかったようで、モザイクは漆喰で塗りつぶしていただけであったので現存している。ミフラーブが置かれている主身廊の一番奥、正教会の時代の至聖所(アプス)の頭上にある聖母子の宗教画は現在は

Emperor's Mosque

Sarajevo, Bosnia and Herzegovina : サラエヴォ・ボスニア ヘルツェゴヴィナ  サラエヴォ旧市街にある、オスマン様式の端正なデザインをしたモスクで、原型は1457年完成とボスニア最古であった。当時、ボスニアを統治していたIsa Bey Ishakovićからの資金の提供によって造られ、現在の姿はその後に再建と改装されているものだ。ビザンツ帝国を滅ぼしたオスマン帝国皇帝Mehmet2世に捧げられ、皇帝のモスクと呼ばれている。旧市街の横を流れるMiljacka川の橋を渡った反対側に佇んでおり、中心部にあるいくつかのモスクに比べ立地が多少離れているせいか、観光客は他より少なく静かな印象だ。見ていると近くで働く人々が足繁く通っているようだ。構造は古典的なオスマン様式で1本の鉛筆型のミナレットと8角形の台座に載った水色のドームが1個である。ポルティコと回廊で囲まれた中庭は正方形で真ん中に噴水があり、礼拝堂側にはドームはないが回廊上にいくつか小さなドームが並んでいる。通りから見ると、ゲートを挟んで特徴のある緑色の木製バルコニーと緑のドームの建物があるが、これは1910年にチェコ生まれで在ボスニアの建築家であった故Karel Paříkによって造られた、Ulema Majlisと呼ばれるイスラームコミュニティの評議会のものであった。

Sisak Mosque

Sisak, Croatia : シサク・クロアチア  シサクはザグレブからやや離れた中央部の工業中都市で、ボスニアからの移民が多いイスラームコミュニティにより新しくモスクと文化センターの複合施設がザグレブとリエカに次ぎ建造され、2022年に完成した。クロアチアはこの後も地方に新しいモスクの建造計画があるが、特に伝統に極めて忠実なモスクのデザインには拘っていないようで、このモスクも礼拝堂そのものを3角形を張り合わせた多面体の巨大なドーム型で造る近代建築である。エントランス上にはトルコのトルコの国際支援機構であるTIKAのプレートが掲げられている。全体の構造は3角形の敷地に先述の通り、ドームを大きくデフォルメした半球状の礼拝堂と直線的なデザインの事務所や図書館、ホールなどがある文化センターの棟と噴水のある大きな広場が造られている。ドーム内部は外からは見えないが光の透過を3角形のパーツで組み合わせており、六芒星の光が床の絨毯に降り注ぐという効果を見せている。

King Khalid Grand Mosque

Riyadh, Saudi Arabia : リヤド・サウジアラビア  第4代目のKhalid bin Abdulazizサウジアラビア国王の名を冠したリヤド最大級の大きさを誇る巨大なモスクである。訪問時は礼拝時間であったためか駐車場は礼拝者の車で一杯で撮影がうまくいかず、多くの信者を集めているのがわかる。車が多すぎて角度を見つけながら周囲を撮影し散策していると、車に乗った警備員に呼び止められた。撮影禁止であったのかと思いきや、「外で何をしているんだ、中を見ないのか?」と言われ、トランシーバーで中のスタッフへ連絡し玄関まで誘導されるという経験は今までにないものだった。それは着いてから僅か10分後の話で、その後は中庭と内部の案内と記念のお土産まで頂き、この見学の後には次のモスクへ行くと言うとタクシーを拾える場所まで車で連れていってくれたので至れり尽くせりで感謝。スタッフは全員フレンドリーでサウジアラビアのモスクの印象は大きく変わった。改宗する日本人も訪れているそうである。ランドマーク的な存在のモスクなのだが、外装は非常にシンプルなアラブ様式のモスクである。ドームは1個、ミナレットは1本のみで豪華絢爛さはなく質実剛健といった様である。デザインのアクセントとしてはエントランス、回廊、窓に多くのパターンの馬蹄形もしくは尖頭馬蹄形アーチを用いている。礼拝堂内部はそれに比べると優美な雰囲気で、緩やかな曲線の馬蹄形アーチでステンドグラスからの明かりのみで飾られたドームを支えている。ミフラーブは濃い茶色の木製で細やかな彫刻で飾られ、バルコニーも同じ木製で形状からRawashinと呼ばれるサウジアラビアの住居に使われる日除けのデザインを用いていると思われる。

Sakirin Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  モスクは地図を見ると驚くが非常に広大で歴史的な墓地、Karacaahmet Cemeteryの入り口に建つ。にぶく光るメタリックな外装で覆われた大きな近代建築のドームが一体になった礼拝堂と、全体の配置としては礼拝堂に接して伝統的な正方形の回廊に囲まれた中庭のある、二つの融合が見られるデザインである。全体のデザインはトルコ人建築家の故Hüsrev Tayla氏、内装は女性インテリアデザイナーのZeynep Fadıllıoğlu氏で、その後にカタールのドーハにある Katara Mosque の内装も手掛けている。非対称に3連になった輪のシャンデリアには独特な水滴のようなデザインを用いているが、カタールでも水を模したであろうランプを使用しているので、おそらく同じような趣向なのであろう。トルコで主なオスマン様式や旧来のビザンツ様式で造られたモスクは壁からあまり光を取らないので全体に暗いことが多い。このモスクは壁は開口部が広く取られており、幾何学文様の網の目に覆われたガラスから室内に光が降り注ぐ。グラデーションになった朱色の天井と現代美術の石の彫刻のようなターコイズブルーと金のミフラーブが礼拝堂でよく映えている。モダニズムに外装は殆どグレーの色合いで、内部を色鮮やかに装飾するという、オスマン様式の意匠を含ませているのは見事だと思う。

Ferhadija Mosque (Ferhat Pasha Mosque) -Banja Luka-

Banja Luka, Bosnia and Herzegovina : バニャルカ・ボスニア ヘルツェゴヴィナ  バニャルカは首都サラエヴォに次ぐ2番目に大きい街で、ボスニア ヘルツェゴヴィナを構成するうちのスルプスカ共和国側、正教会を信仰するセルビア人が主体となる地域である。モスクの原型は、オスマン帝国の支配下にあった時代の1579年、ボスニアのオスマン帝国将軍のGazi Ferhad-paša Sokolovićの命によって建造された。オスマン帝国時代にはたくさんのモスクを含むイスラームの施設が建造されたが、その後の紛争で多くが破壊され、このFerhadija Mosqueも紛争で、直接的には当時の政府主導で1993年に破壊された。勿論、旧ユーゴ紛争全体では多くのキリスト教建築も同じように破壊されているのだが、セルビア人主体のこの地域では再建における過程でもわだかまりは消えず、暴動などもあり紆余曲折、再建は2007年に始まり2016年に完了した。3個のアーチで支えるポルティコ上に3個の小ドーム、礼拝堂上にメインドームとミフラーブ上に半ドームという伝統的なオスマン様式で造られ、控えめな外装に対してドーム内部は朱色と青を使い植物文様で絢爛に彩られている。

King Saud Mosque

Jeddah, Saudi Arabia : ジェッダ・サウジアラビア  ジェッダ市内で最大級の大きさを誇る代表的なモスクで、5,000人の礼拝者を収容する。サウジアラビアで多くのモスクを造るエジプト人建築家のAbdel-Wahed El-Wakil氏の作品。ジェッダ中心部の市を縦に貫くメインストリートに面して建っている。白い壁と3個のドームをもつ美しいアラブ様式のモスクであるが、アラビアのモスクではあまり取り入れらないペルシア様式も取り入れている。イランや中央アジアのモスクで見られるような巨大なイーワーン、開口部を持っており、市内を北上して来ると威厳をもって立ちはだかるのが見える。若干歪みのある正方形の建物から大通り側に突き出しており、この通りに面する階段を登りこのイーワーンを通じて礼拝堂へ進む。開口部の上部は緻密なムカルナスと呼ばれる鍾乳石模様の装飾が施されている。更にその上には設計した氏のルーツへのオマージュであろうか、エジプトのマムルーク建築のモスクで見られる正方形から八角形に変化し、バルコニーが段になった重厚なミナレットが聳え立つ独特のデザインとなっている。

Zagreb Mosque

Zagreb, Croatia : ザグレブ・クロアチア  首都ザグレブにある、クロアチアに現在数カ所のみあるモスクの中央的存在である。クロアチア人は伝統的にローマカトリックを信仰しており、オスマン帝国侵攻後の改宗や、人種と宗教の坩堝であった旧ユーゴスラビア時代、その後の戦争でムスリムの流入があったが全体を見るとムスリムはごくわずかである。個人的な印象であるが、旧ユーゴ諸国の中でも、クロアチアは少ないムスリム人口の割には大規模なモスクが建造されていて、人種宗教観の揉め事の多いバルカンでは割と先進的、共存共生に寛容な気がする。ザグレブはオスマン帝国に占領されずにいたためモスクは無く、新しく中央モスクと図書館や学校がある複合施設が建造された。デザインはボスニアのボシュニャク人建築家Dzemal ČelićとエンジニアのMirza Gološによるもの。従来のバルカン半島で見られるオスマン様式や箱型寄棟造りのモスクの要素はミナレット以外になく、かと言って最新のテクノロジー要素のある近代建築でもなく、緩やかな曲線のドームを3個に切り取って頭頂部をずらして開口部から光を取るというポストモダン的な要素を感じる。内部のバルコニーやミフラーブ、ミンバルも滑らかな曲線を利用してデザインされている。

Marmara Ilahiyat Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  マルマラ大学神学部に造られた一見すると近未来的な姿のモスクであるが、実はアナトリア地方の伝統的なKırlangıç Tavan=「つばめの天井」と呼ばれる建築の技巧を用いてデザインされている。木製の梁を斜めにずらして重ね積み上げて、最上部の開口部から光を取る方法をモスクのドームへ応用している。アナトリア地方以外の諸外国でも用いられているが、同じようなドームの技巧は、トルコ国内のErzurumにあるErzurum Ulu Mosqueで木製のドームを見ることができる。このモスクでは、パーツの一部を透過させてらせん状に重ねて渦巻状の模様を作っており、ドーム直下から天井のガラスを見上げるとまるで吸い込まれていきそうな感覚になる。デザインはトルコの建築事務所であるHassa Architectureによるもので、オフィシャルに「伝統とオウムガイの形のフラクタル」をインスピレーションにしたとある。この建築事務所は日本の東京に端正なオスマン様式の 東京モスク(東京ジャーミー) も建造している。

Sarena Mosque (Suleymania Mosque)

Travnik, Bosnia and Herzegovina : トラヴニク・ボスニア ヘルツェゴヴィナ  首都サラエヴォからやや離れた山間の小さな街トラヴニクに、美しく装飾された外壁のモスクがある。火災により1815年から16年にかけて現在のモスクの原型に改築され、1980年代に最終的に現在の姿に修復されている。デフォルメされた抽象的な繰り返しでなく、バルカン半島のモスクの内部の装飾で見かける写実的な樹木、花、葡萄などの植物文様が壁に整然と描かれていて、「Ornamented Mosque」とも呼ばれている。ミナレット部分が少し突き出している以外ほぼ長方形の礼拝堂と寄棟造りでドームのない屋根をもち、フラットな礼拝堂の天井には平面の文様が描かれる。画像でも僅かに見えるが、突き出している部分の外壁には果物のスイカにナイフが刺さっているのも見え、何を意図しているのか不明だが面白い。1階部分のアーチで支えられたアーケードには土産品などを売る店舗が並んでいる。エントランスは表から見えず、礼拝者は裏側に2階にあがる階段から礼拝堂へ入る。礼拝堂内部の壁や天井は、オレンジ・青・黄色・緑色の市松模様や六芒星の繰り返す装飾が施され、木製の柱や扉やミンバルも美しい色合いで塗装されている。北マケドニアのTetovoにも同名の装飾で有名な Sarena Mosque があり、現地語でのSarena(頭文字は本来Š)は英語でColorfulの意なのでそれも頷けるところだ。