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Showing posts from 2020

Salahuddin Mosque

Nakhon Si Thammarat, Thailand : ナコーンシータンマラート・タイ  マレーシアのクランタン州から当時のナコーンシータンマラート(リゴール)王国の首都であるこの街に移民したムスリム達が、原型となるモスクを建設したのが歴史の始まりとなる。1897年建造の原型のモスクは学校建設のために存続できず、新しい場所にモスクを建て直すのだがその場所はWat Tha Changという仏教寺院の跡地を使用していたため、法律上モスクとしての登録ができないままとなってしまったのだ。そこでラーマ9世国王へ請願し、王室の支払いにより土地の問題を解決し1954年に承認に至るという長い道程を経て今のモスクがあるという。国王は旅の途中にモスクに立ち寄り、ミンバルに座る姿を写したその当時の写真も残されている。モスクの外装はベージュ・茶とグレーの色調でまとめられ、壁に線の細い植物文様と、柱にストライプ、天井に花をアレンジした幾何学文様で飾られており、柔らかさとシャープさが相まって美しさを醸し出す。メインドームはムガール様式の影響を受けたと思われるが、半球でなく8角形の台座をもつため、面ごとに光を反射しまた影を造る。近隣のマレーシアの Zahir Mosque やインドネシアの Al-Mashun Grand Mosque と同じ技巧だ。深い緑色が南国の青空と白い雲に実に良く映える。礼拝堂から独立して立つミナレットは5段のバルコニーがあり、特徴的なデザインであるが、古い写真から後で付け足されたのがわかる。外側に階段があるが閉ざされてしまっており、2階は登ることはできなくなっていた。外から眺めると2階建て部分の壁のアーチからは空の向こうが見えるので、天井がなく飾りの壁と欄干で台座の高いドームを囲っているようである。1階の礼拝室の天井はフラットでドームは望めない。

Wilayah Mosque (Federal Territory Mosque)

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  絢爛なアラベスクで彩られたターコイズブルーの22個ものドームが幾重にも重なる、「連邦直轄領モスク」の名を冠するモスク。1万7千人を収容するマレーシア最大級の規模をもち、2000年に完成した。全体のデザインはトルコの Sultan Ahmed Mosque 、通称ブルーモスクをベースにインスパイアされたもので、特にメインドームとそれを支える半ドームのオスマン様式の構造と、あまりの大きさに全容が掴みにくいが門をくぐり壮大な中庭の向こうに立つモスクの配置にそれを感じる。ほかに、メインドームと半ドームの外装はイランのImam Mosque(王のモスク)からの黄色の植物文様をモチーフにし、オスマン様式のドーム外装は通常では地味な配色であるが、このモスクは艶やかな色彩である。回廊の馬蹄形アーチと多弁形アーチはモロッコからの、内装の木材の彫刻はマレーからの、四角の2本のミナレットはエジプトからのと多岐に渡るデザインソースを融合させている。また、中庭の正面に見据える礼拝堂へのメインエントランスの大きなアーチはインドのタージマハルのメインゲート(白い著名な廟ではなく、赤い門の建造物)がモチーフとされている。そのゲートと同じイメージで施された花柄の装飾はペイントではなくモザイクで造られている。Saray Designというカリグラフィーの彫刻やモスクの内外装を手掛ける職人グループの作品で、ほかにアブダビの Sheikh Zayed Grand Mosque の回廊の柱も手掛けており、このモスクでも見せる緻密で可憐な細工は必見だ。内部は結婚式場などもある複合施設になっており、中庭、その後ドームのある礼拝堂へとガイドによって導かれる。礼拝堂のドームは外装からもわかるようにトルコの伝統的なモスクと相似の構造で、色彩は全体に淡いクリーム色とブルーを組み合わせている。ドーム内側は植物のモチーフは使われず小さいのサブドームの外装で使われている幾何学文様を施されているのが見える。

Al-Akbar Mosque -Colombo-

Colombo, Sri Lanka : コロンボ・スリランカ  このモスクの建つSlave Islandは、コロンボ市内のフォート地区からベイラ湖の運河を隔てた半島状の地区であり、長い植民地時代に連れてきた奴隷達を住まわせていたことからそう呼ばれている。ポルトガル時代からオランダ時代を経て、イギリス時代となる1859年にTalep Akbarと呼ばれた商人によって建立された。正面真ん中の大きなアーチ上部に欄干に隠れて上手く見えないがメインドームあり、バルコニー型の装飾付いた4本のミナレットがそれを囲んでいる。ベージュ色の重厚なコロニアル建築に聳えるシャープなミナレットのバランスが美しい。内部は思いのほか広く、いくつかの礼拝室があった。訪問時は広い駐車場にたくさんの車が停まっており、そのすべてではないであろうがたくさんの人が訪れていた。メインドームは一度入り口から入った後に廊下を伝い、見上げることができるが礼拝室上ではなく左右からの廊下と廊下が交わるアーチに囲まれた狭い真っ白な空間にある。然して重要な空間ではないのか、短い時間ではあったが滞在中に誰も来ることはなかった。

Mukaram Mosque (Bang Tao Mosque)

Phuket, Thailand : プーケット・タイ  タイの有数のリゾートであるプーケット島にある、プーケット県内では最大級のモスク。敷地は広く取られており、庭から正面を見ると背後の緑濃い山並みに抱かれ、月の紋章が乗ったダークグリーンのメインドーム、台座の隅に4個のサブドーム、ドームの載ったバルコニー付きの4本のミナレットと、美しいバランスをもった配置であるのがわかる。建物はほぼ長方形で礼拝堂は道路に平行に建ち、ミフラーブのあるキブラ壁は海岸の方角へ向く。1966年に建てられ、その後改装されている。朝に訪れたのだが、モスク前の路上にはハラールの軽食を売る露天が並んでいて地元の人々が集まっており、近くに住んでいるというムスリムの青年から日本語で話しかけられるという出来事があり驚いた。礼拝堂の内部は2階建てで、1階から丸く切り取られた吹き抜けのあるバルコニー越しに白いドーム内側を見上げることができる。

Muhyiddin Juma Mosque (Vizhinjam Mosque)

Kovalam, India : コヴァラム・インド  コヴァラム海岸沿いの入り江の突端にあり、モスクはインド洋と湾の両側を見渡せる高台に建っている。なぜかそのさらに突端側のすぐ隣にも、もう一つ少し小さな別のモスクが建っているという不思議な立地である。コヴァラムビーチで有名なランドマークの灯台であるVizhinjam Lighthouseを越えた漁村で、モスクの庭からは湾に沿ってたくさんの船が浜辺に並ぶのが見える。付近には小さな地元民向けの海鮮料理店などもあり、車で高台からの景色を見に来たインド人観光客らが幾組もいた。モスクはインド、スリランカ、ミャンマー辺りで見かける小さな商店が一体となった建物で、商店のある1階道路側からは階段を登り、門をくぐると庭になる。訪れた時間にはモスク2階の四角の窓が並ぶ部屋で授業があり、制服を着た子供達がたくさん入って来た。門に書かれた「Dargah Sharif」はローマ字転写の表記に揺れがあるが、インド国内で一般的にいうイスラーム神秘主義(スーフィズム)の廟を意味するのと思う。塗装は良くメンテナンスされていて、時折塗り替えられているのだが、色の組み合わせをその都度変えてしまっている。付近の街の名前から「Vizhinjam Mosque」とも呼ばれ、また商店の壁には「Muhiyideen」と書いてあったが一般的にはMuhyiddin Juma Mosqueと呼ばれているらしいので、それに倣った。

Tengku Kelana Indian Muslim Mosque

Klang, Malaysia : クラン・マレーシア  インド人街の真ん中にあり、繁華街となった大通り沿いから見る表側は平面的だが、どっしりとした3重のバルコニーのついたミナレットが目立つ。正面玄関は3つの多弁形アーチをもち、大きな真ん中の開口部は地面のレベルからすぐに階段となっている。モスクの前だけは歩道は広く取ってあるが、商店街の通りの入り口から2階のホールを経てガラスドアで区切られたドームのある礼拝堂へ繋がっている。モスク横側に回るとテラスと吹き抜けになった構造を覗け、壁や門にイスラーム建築の立体的な技巧が伺える。メインドームはターコイズグリーンに金の菱模様が入っている。金色の塗装は大部分が剥げてしまい、ほとんど濃い緑色になっている。ドームを囲むミナレットは等間隔に4本あるが、ドームはその中心に無く大通り側から見ると少し奥に配置されている。モスクの原型は、南インドのタミルナードゥ州からのムスリム移民コミュニティによって礼拝所が造られたことから始まり、やがて1910年にモスクが完成した。その後解体され、1973年になって新しいモスクができ、さらに2009年に3階建ての現在の姿となった。礼拝堂の天井は八角形のドーム台座の上段に窓、下段に星の文様を薄いクリーム色のムカルナスで造り、小さな半ドーム状の飾りを繰り返すものだ。ドーム内側も同様に装飾されている。星はブルーの五芒星(いわゆる、星)・六芒星(ヘキサグラム)の両方からなるもので、特に六芒星はユダヤ教のイメージがあるがイスラーム建築でも使用されている。たくさんの六芒星を際立たせてドームに使う例はあまり見たことがないのだが、マレーシアではほかにZahir Mosqueでアーチ部分の装飾に使われてもいる。

Meera Maccam Mosque

Kandy, Sri Lanka : キャンディ・スリランカ  キャンディ市内の商業地区の端、喧騒が途切れた辺りに建つ。敷地は道路から少し高台になった土地にあるため、街を抜けてモスクに着くと階段からモスクを見上げることになる。モスクに上がる階段真正面は線路が走っており、モスクに着くとちょうど、列車が走り抜けて行った。1824年に建造されたモスクの建物は長方形で、長い辺の側にミナレットやドームを模した装飾が繰り返し並ぶ特徴的なファサードをもつ。メインのミナレットやドームはなく、平面的な装飾を建物に貼り付けているような構造だ。 過去の資料を見ると、訪問時は白を基調に緑のアクセントを入れた塗装であったが、白とオレンジ、ほかにも緑の濃淡の組み合わせと、時折まったく違う色に塗り替えられている。訪れた時点では外壁の白さはくっきりしており、塗り替えられてあまり時間は経っていないようだ。内部は木製の扉とステンドグラスのアーチでいくつかの部屋で区切られており、立ち並ぶ窓からの柔らかい光に照らされていた。

Nakhon Si Thammarat Central Mosque

Nakhon Si Thammarat, Thailand : ナコーンシータンマラート・タイ  ナコーンシータンマラートはタイ南部ではイスラーム色が特に強いという街並みでなく、テーラワーダ仏教やヒンドゥー教の史跡も多い中都市である。それでもムスリム人口は多くこの地域にはそれほど大きくはない古いモスクは数あるが、2017年に完成したこのモスクは地域では最大級の大きさで州のイスラーム委員会事務所ともなっている。モスクは8角形の真ん中に金のドームがあり、壁面はアーチ型のデザインの窓を配し、形状だけであればエルサレムの「岩のドーム」を模したのかタイのモスクとしては珍しいデザインである。8角形の各々の角にはメインのミナレットが4本と小さなミナレットが4本と付いている。中心にメインドーム、その周りを4個の小ドームが囲んでいる。合計8本のミナレットの頭頂部にもドームが付き、正面のエントランス前から離れて見ると規則的な配置が確認できる。空港と街を結ぶ幹線道路上にあるため、金のドーム群はよく目立つ。2階の礼拝堂は中心のドーム台座も8角形に切り取られ、区切りがない大きな空間となっていた。内部はミニマムかつモダンな造りでステンドグラスに色味があるくらいで、ドーム内部には装飾はなくミフラーブは壁面に大きく平面のモザイクを使って表現されている。

Palayam Juma Mosque

Trivandrum (Thiruvananthapuram), India : トリバンドラム (ティルヴァナンタプラム)・インド  トリバンドラム市中心地区の大きなモスクで、白いドームと40mの2本のミナレットをもつ。訪れたときはメンテナンス後であったのか、まだ完成したばかりのように曇りのないクリームの色合いを保っていた。モスクの創設は非常に古く、1813年のことだが、以降1967年に現在の姿に改築され現在に至る。インドで数々のモスクを手掛けている建築家であるDr. G. Gopalakrishnanの手によるデザインで、独学でモスクのデザインを始めた氏の最初の作品という。ムガール様式をベースにしたインド・サラセン様式で壮大なドームをもつ威厳のある美しいモスクをデザインすることでその後著名になった。ここでも紹介した同市内の Beemapally Mosque も彼の作品で、そのデザインとともに実はヒンドゥー教徒であることも驚きをもって迎えられたという逸話がある。現在における賞賛だけではなく、独自の解釈から過去には批判を浴びたりもした。この訪れた日、モスクの礼拝堂内は隣接する学校の小学生くらいの年齢の子供達でいっぱいで、外にいたスタッフにドームを見られるか確認し、中へ進んだ。

Al-Bukhary Mosque -Kuala Lumpur-

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  クアラルンプール市内を巡るKLモノレールの車窓から、美しいアラベスクを描かれたドームを見かけたツーリストも多いのではないかと思う。このモスクは、クアラルンプールのイスラーム美術館創設も手掛けた、マレーシアAl-Bukhary財団によるもので、白いミナレット、ブルーと黄色が冴えたコントラストのドームが街並みから際立って目立つ。ドームの文様はイラン・イスファハンのShah Mosque、王のモスクやイマームのモスクなどとも呼ばれる、からインスパイアされたもので、またミナレットの形状はマディーナの預言者のモスクからのものだ。この構成は同じ財団が建造したアロースターにある同名の Al-Bukhary Mosque にも採用されている。現在このクアラルンプールのモスクのドームは、塗装の修復後に以前より青みが強いものになったが、以前はやや緑がかったイランのオリジナルに近いターコイズ色をしていた。ちなみに前述のイスラーム美術館のドームにも類似の文様を採用しているのは興味深い。礼拝堂内部は金のカリグラフィー以外はほぼ真っ白でドーム内部は花や植物のモチーフが彫刻されている。

Ketchimale Mosque

Beruwala, Sri Lanka : ベルワラ・スリランカ  ベルワラはコロンボからゴールへ向かう途中にある小さな漁港の街で、その港に突き出した岬の小高い丘に真っ白なモスクが建っている。街には1024年ごろからムスリムの商人達が訪れており、このモスクもスリランカ国内最古のうちの一つとしても知られている。モスクを囲む左右のテラスからはインド洋と港をそれぞれ望め、訪れた昼過ぎは参拝客なのであろうか、地元の人々がピクニックを楽しんでおり、絶好の観光スポットになっているようだ。小さなモスクの周りにはあまりに多くの人々がいて写真を撮ることが難しい位であった。モスクのある丘を登る手前は小さなビーチになっており、ここにもたくさんの人が憩いのときを過ごしていた。周りの喧騒を忘れたようにモスクの中は静寂で、窓の向こうには海が広がっていた。礼拝堂は黄色く塗られた壁と白いシンプルなミフラーブ、独特な黄色と白色の市松模様のフラットな天井をもち、窓からの光で照らされていた。モスク内部のドームのある側の部屋は、イエメンから来た王子であるAsh-Shaikh Ashraff Waliullahがこの地に移り住み死を迎え、それを弔う霊廟になっている。モスクの門番に案内をされ、少しだけ覗かせてもらうことができた。

Tokyo Camii / Mosque

Tokyo, Japan : 東京・日本  東京・代々木にある日本最大とも言えるオスマン様式のモスク。通りの街路樹の間から空と雲を溶かしたような不思議なブルーのメインドームと尖ったミナレットを覗かせていた。金曜日の集団礼拝を行うための大モスクに冠するジャーミィを名乗り、日本では一般的にも東京ジャーミィの名で通っている。ここはトルコではないのかと見紛う外装からもわかるように、トルコ政府機関の基金により建造が始まり、多数のトルコ人技術者と現地からの資材によって工事が進められた。設計はトルコの建築家であるMuharrem Hilmi Senalp氏であり、氏の率いるHassa Architectureは数々のモスクを手掛けている建築事務所だ。メインドームは6個の半ドームで支えられ、高さ約40mのミナレットは鍾乳石飾りをあしらったバルコニーをもつ鉛筆型をし、L字型のポルティコは上部に小ドームを配しストライプのアーチで屋根を支えている。すべてが伝統的なオスマン様式に則りデザインされ、それを現在に蘇らせている。内装もまた荘厳で見事に造られ、通りに面した1階の玄関、応接間から上層の礼拝堂のドームの文様やステンドグラス、金をあしらったミフラーブ、カリグラフィーなどのオスマン様式の装飾には息を呑むばかりで圧倒される。

Songkhla Central Mosque

Hat Yai, Thailand : ハートヤイ (ハジャイ)・タイ  タイ南部のムスリム人口の多いソンクラー県を代表する新しいモスクであるが、ハートヤイ市(ハジャイとも呼ばれる)は中国系タイ人の造った街でイスラーム色はほとんど感じられない。歩いても市の中心にはモスクは見かけず、このモスクも郊外にある。タイのモスクとしては最大級の大きさで、正面から見ると屋根までの巨大な7個のアーチが威容を誇る。広大な敷地に建つモスク前面側に配した大きな池は金色のドームと4本のミナレットを映し出していた。タージ・マハルを彷彿させる姿からか幾組かの観光客が入れ替わり撮影をしていた。道路から礼拝堂へ登る階段の真ん中は水路となり下の池へと水が落ちて行く。階段を上りメインエントランスのアーチをくぐると、上部はガラス天井になっており、上から光が入る。礼拝堂は天井の高い1層でできており、外は酷暑なのだが中に入るとひんやりとした空気の張り詰める巨大な空間が広がる。礼拝堂に入り正面から眺めると四角のドーム台座に角度をつけており、菱のように切り取られて見えるシャープなデザインだ。ドーム本体も真下から望むと装飾のない無機的な骨組みの梁で、車輪のようなメカニカルな形状をしている。鏡面状の床に柱と窓が淡い青色に反射され、その中で一人礼拝をする信者の姿があった。

Beemapally Mosque

Trivandrum (Thiruvananthapuram), India : トリバンドラム (ティルヴァナンタプラム)・インド  ピンク色で彩られたこのモスクはトリバンドラムを訪れるインド人観光客の間でも有名らしく、ムスリムの拝観者以外にもおそらく外見・服装からヒンドゥー教徒も多数訪れていた。ここは神の力を持っていたとされるアラビアから布教に来たムスリマSyedunnisa Beema Beevi、もしくは地元ではBee Ummaとも、の霊廟でもある。モスクへの礼拝だけでなく、特に病を治す力があると信じられておりその参拝にも訪れる。市内はずれの海岸近くにあり、近くの空港へ着陸する寸前の飛行機の窓からもくっきりと見えた姿が映え、非常に印象的であった。1個のメインドームと3個のサブドーム、ミナレットは建物横エントランスにメインの2本と端のサブドーム側エントランスに4本をもち、典型的なムガール様式でデザインされている。

Tengku Ampuan Jemaah Mosque

Shah Alam, Malaysia : シャーアラム・マレーシア  クアラルンプール郊外のセランゴール州シャーアラムにある、2012年に完成したモスクで、ブルーモスクとして著名な Sultan Salahuddin Abdul Aziz Shah Mosque に続く王立モスクとなった。4本のミナレットと1個のドームをもち4,000名を収容する大きなモスクだ。デザインや構造に特徴があり、マレー様式を取り入れずほぼ純粋にアラブ様式で建造されている。極わずかに赤みを感じるクリーム色の外壁で際立った装飾はほぼなく、外見はまるで中東のモスクだ。ドームも装飾は鋸状の線が入っているのみ。内部の構造もメインエントランスから事務所などのある棟の通路を進み、連なるアーチを横に見ながら中庭を突き抜け礼拝堂へ入るという、いかにもモスクらしい、日常から心の切り替えをしながら礼拝へ望むスタイルだ。礼拝堂のシャンデリアも中東のモスクでよく見かける円状のランプが吊るされたタイプであった。ドームの内側も装飾はなく真っ白なタイルで格子を組んだ構造上の線が見えるのみであった。

Hanafi Mosque

Kandy, Sri Lanka : キャンディ・スリランカ  キャンディ市内の繁華街にある、ストライプと格子で彩られたモスク。食事や買い物をする人々で賑わう通りの商店と商店の間に隙間なく建っており、礼拝の場が日常から1区画だけ切り取られたように忽然と現れる。現在はファサードすべてが赤と白の配色で統一され建物全体がモスクに見えるが、以前は階上の窓の並ぶ層は現在の市松模様と違い緑色に塗られていた。その当時は3角屋根の箱型のビルにモスクの装飾がはめ込まれた状態で、ミナレットなどの装飾は建物とは一体となっていない様子であった。裏路地にも回ってみたがモスクの横と後ろ側の壁は今でも全部緑色のままであった。赤と白のストライプと格子を組み合わせたデザインはコロンボのJami Ul-Alfar Mosqueを彷彿させ、同じく地元ではRed Mosqueとも呼ばれている。天井にドームはなく、ミナレットは10本あり、そのうち2本が屋根から突き出している。建物は真正面からよく見ると左右非対称で、左右両端のミナレットの位置が異なるのが面白い。白を基調に茶と金を使った礼拝堂内は吹き抜けの絶妙な緩いカーブが美しく、階上から届く金色の光に淡く照らされていた。

Koh Panyee Darussalam Mosque

Ko Panyi (Phang Nga), Thailand : パンイー島 (パンガー)・タイ  プーケット近くのマングローブ生い茂るパンガー湾内に、ほぼ全体が巨大な岩の島の岩盤にモスクを建て、浅瀬に杭を打ち造られた水上家屋の漁村がある。パンイー島と呼ばれるこの島の語源Panjiはムラユ語で旗を意味し、定住のためのよい漁場を見つけた知らせになる旗から来た。住民の祖先はインドネシア・ジャワからの漂海民ですでにタイ化しているが、今でもイスラーム教を信仰している。この村のモスクは島へ近づく船からもとても目立ち、村の規模を考えると大きいものだ。島は断崖絶壁の岩がほとんどを占めており住居や学校やサッカー場などは水上にあるが、モスクと隣接する墓地は限られたわずかな地面の上にあり、そこにも信仰の深さを窺うことができる。周囲は表玄関以外は水上家屋に囲まれており、モスク全体を俯瞰することはほぼできず、遠く離れてもほぼ民家の屋根越しに眺めることになる。2階建てのモスクの頭上には金色に輝くメインドームと、2個のサブドーム、アーチで飾られた2本のミナレット上にも2個のドームがあるのが見える。建物全体をアーチのデザインで囲んでおり、ミフラーブの曲線のあるキブラ壁以外の3方はバルコニーとなっている。アーチを支える柱は四角の鏡やパターンのモザイクで装飾されており、美しく光に輝いていた。外観は新しく見え、2017年に修復されているとのこと。

Aspire Mosque

Doha, Qatar : ドーハ・カタール  ドーハ中心部からやや離れた、Aspire Zoneなる広大な複合競技場施設のうちの一つとしてこのモスクは造られた。周囲はKhalifa Stadium、Aspire Dome、この地区のランドマークでもある高さ300mのThe Torch Dohaなどの錚々たる巨大な建造物が建ち、このモスクは決して大きくはないが、850人を収容する。背面から持ち上がり円柱で支えられたペン先の型状の5角形の屋根の鋭角の頂点が正面となり、丸みを帯びた礼拝堂のアクセントになっている。両脇に少し離れて左右高さの違う直線的な2本のミナレットが建つ。カタールのモスクは伝統的な意匠を好む感じがするがこのモスクはそうではなく、流線型の躍動感のあるモダンなデザインを取り入れ、周囲の競技状施設群との景観と調和を図っている。

Sri Sendayan Mosque

Seremban, Malaysia : スレンバン・マレーシア  このところ、マレーシアで最も美しいモスクと声を聞くことが多くぜひこの目で確かめてみたくなり、クアラルンプール郊外のセレンバン、さらにその遠くBandar Sri Sendayan地区を訪れた。以前はクアラカンサーの Ubudiah Mosque がその代名詞であったと思うが、このモスクで出会ったマレーシアの人々もここはマレーシアで一番だと口を揃えていたのが印象的だ。2015年に完成した5,000人の礼拝者を収容するという大きな礼拝堂、図書館、多目的ホールなどの施設をもち、白い外壁に高く聳える2本のミナレットと白い4個のドームが優美なモスクである。外観に伝統的なマレーシア様式のデザインは取り入れておらずアラブ様式で建造されており、特にミナレットはサウジアラビアのマディーナにある「預言者のモスク」にインスパイアされたのではないかと思える。頭上に小ドームを頂き、正面に5個、側面に6個のアーチで支えられたポルティコの天井は黄味がかったガラス張りで、柔らかな光が内部を照らしていた。小ドームの奥に巨大なメインドームを配し、正面から見据えるとその姿はタージ・マハルをも彷彿させる。モスクはマレーシアの金融グループであるRHBのTan Sri Abdul Rashid Hussain氏の寄付により計画され、またマレーシアの建築家であるZailan Yusop氏によって設計された。建材はエジプト、トルコ、UAE、モロッコなどから運ばれたそうで、シンプルな外装から一転、淡いブルーやベージュを組み合わせた荘厳な内装や純金を塗られたドーム内壁には息を呑み目を見張るばかりである。

Bilal Mosque

Bangalore (Bengaluru), India : バンガロール (ベンガルール)・インド  伝統的なオスマン様式を新しく書き換えた独特のスタイルをもつモスクである。2015年に完成し、4階建てで6,500人を収容とバンガロールで最大級の大きさを誇っている。エントランスのアーチや2段バルコニーの鉛筆型ミナレット、4個の半ドームでメインドームを支える構造はオスマンの伝統的なデザインに則っている。しかし、装飾を減らして平面でドームを、直線でアーチを強調したアレンジでインドでは見かけることのない近未来的でもある雰囲気をもつ。モスク全体は白に近い薄いクリーム、ドームは艶のない薄いグレーで塗られ、縁取りとミナレットの縦ストライプに濃紺を使って直線的で引き締まった印象を与えている。オスマン様式のモスクなどは大抵そうであるが、こちらも外観と反対にドーム内側に手の込んだ装飾を施しており、四角に切り取られた吹き抜けのバルコニー越しに見上げる天井は万華鏡のようであった。

Meeran Jumma Mosque

Galle, Sri Lanka : ゴール・スリランカ  モスクの門をくぐると「ここは教会ではないんだよ。」と早速門番から声を掛けられた。離れてよく見れば控え目な5本のミナレットやファサード頭頂部の月の紋章、2本の尖塔上の小さなドームに気が付くが、一見しただけではキリスト教会に見紛う重厚な建築だ。様式についてはインドのゴアなどで見られるポルトガル植民地独特のバロック様式で建造されていると思うのだが、1904年完成との通説ではイギリス領セイロン時代となり様式が合わない。モスクはそれ以前に原型があった様子なので、その年に現在の外観に改築されたのではないか。このモスクのあるゴール旧市街は城壁に囲まれた要塞の街で長くポルトガル、オランダ、イギリスに支配されていた。今も当時のコロニアル建築が数多く残っており、ヨーロッパとアジアの混じったデザインの柱やアーチのあるファサードと白い壁、オレンジ色の屋根の美しい街並みが続き、多くの観光客を呼び寄せている。この白亜のモスクも道路から砦に上り眺めると、屋根の欄干とミナレット越しに付近の家屋と同じ濃淡のあるオレンジ色の瓦を覗かせているのがわかる。ゴールには古くから交易のためアラブ人達が訪れ住んでおり、特にこの旧市街にはイスラーム教徒が多いようだ。周囲にも別のモスクやイスラーム学校などもあり、礼拝に訪れていた一人も、モロッコから来た商人の末裔とのことであった。モスク内部は白い壁、柔らかい曲線のアーチ、床のくすんだオレンジのタイル、こげ茶色の木製の天井とすべてが相まって静寂さを醸し出している。礼拝堂の壁は淡い黄色で塗られ、天井は高く、見上げると2階の屋根までも吹き抜けになっている。海岸沿いの砦の先端辺りに建っているため、白い壁のアーチの窓からはぼんやりと青いインド洋が浮かんで見えていた。

Taipei Grand Mosque

Taipei, Taiwan : 台北・台湾  台湾最大級のモスクで台北市内中心にある大安森林公園すぐそばに建つ。サウジアラビアなどの中東諸国の援助もあり、1960年4月に完成した。このモスクは文化的、歴史的価値から市定古蹟にも選ばれている。荘厳な雰囲気を醸し出すデザインは、台北を代表する建築物となった中正記念堂や圓山大飯店を手掛けた台湾の建築家である楊卓成氏により設計され、イスラーム建築と彼の作品の特徴である鉄筋コンクリート建築を美しく融合させている。それは、四角い塔に乗った2個の小ドームからエントランスの3個のアーチと正面上部の白いモザイクをはめ込まれたアーチの意匠、両翼のアーチ、そして金のドームとその奥の高さ20mの2本の円柱のミナレットへと続き、それらの重厚な雰囲気をまとめた氏の手腕を感じさせる。正面の塔や縁に配された赤い大小の菱形のモザイクパターンはイスラーム文様ではなく台湾先住民の伝統文様ではないかと思うのだがどうであろうか。

National Central Mosque

Bangkok, Thailand : バンコク・タイ  バンコク郊外の水田の広がる県境付近の広大な土地に、金色のドームが輝く淡いピンク色のモスクがあった。国立モスク、国立イスラームセンターとなる施設なのであるが、たどり着くにはバンコクの市街地からは随分と遠く離れた地域となる。ここはバンコクではかなり大きいモスクになるかと思う。敷地のなかにはモスクや事務所棟、多目的に使えるホールがあり訪問当日は結婚式が開かれていた。モスクの手前は大きく芝生の広場が取られ、周囲も椰子などの樹木を美しく配している。長方形の礼拝堂は3層に分かれ、メインホールは入り口から階段を上った2階にあった。長方形の建物から少し離れて、タイではあまり見ないバルコニー下に鍾乳石装飾をもつ3本のミナレットが聳え、2階と橋で繋がっているという独特の形状をもっている。ミナレットは建物正面のメインエントランス側から向かって右に1本、左に2本とありデザインが左右で異なっており、右1本のみ大ドームと似た玉葱状のドームの飾りが付いている。メインホールは外部から熱を遮断して風が取り込めるように、開放的なアーチの壁造りになっており若干暗く感じたが、涼しく過ごせるようになっている。小鳥も飛び交う、南国らしい構造だ。ドームの内側は薄らとクリーム色に塗られているのみだが、頭頂部にかすかに8枚の花弁のような文様があるのが興味深い。