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Showing posts from November, 2024

Bayrakli mosque (Yokush Mosque)

Samokov, Bulgaria : サモコフ・ブルガリア  首都ソフィアからは50Kmほど北へ向かう山間の小さな街サモコフに、それは美しいかつてモスクであった小さなイスラーム建築が佇んでいる。現在はモスクとしての機能は既に全くなく、美術館として使われている。バルカン半島で使われなくなったモスクは得てして内装に漆喰を塗られてしまったりミナレットを落とされたりしてしまうものだが、ほぼ完全なモスクの形状を保っているのは珍しい。片隅にはイーゼルが積まれ、モスクに全く関係ない展示もされているようでもあるが、絵画的な装飾そのものが美術の継承として残されているようだ。1845年頃に完成したと伝えられ、以降修復されている。構造は長方形の2階建てで、寄棟造りのオレンジ色の屋根に青銅色の鉛筆型ミナレットをもつ。バルカン半島でよく見られるタイプのもので、他と違うのはミナレットに煉瓦の螺旋模様があること、屋根からドームが突き出ていることかと思う。4本の柱で支えられたドームは棟の真中心でなく、ミフラーブのあるキブラ壁側に寄って載っている。ファサードは2階に7個の窓が並び、正面から見て7個のアーチを8本の柱で支える柱廊玄関になっている。アーケード状の奥まった1階には、エントランスへの通路と向かって右端に階段のユニットがある。1階の壁は左右とも写実的な花瓶に生けた花の絵やカーテンが描かれている。窓枠や玄関扉などは鮮やかなブルーで、天井は紺色に塗られている。内部は正方形の礼拝堂でエントランス頭上にバルコニーがある。ドームの14枚の窓から光が注ぎ、グレーと金色のバロック調の植物文様を照らしていて、ここがモスクでないことが不思議な程荘厳であった。ドーム内側の頭頂部は六芒星が描かれているのも特徴的である。内部にはモスクのルーツについて紹介のボードも用意されていた。

Sharif Hussein bin Ali Mosque

Aqaba, Jordan : アカバ・ヨルダン  アカバ市内の中心にあるモスクで、1975年に完成したアラブ様式のモスク。モスクのエントランスは中庭を囲む回廊の一部で、そこから中へ入ると水場のある大きな中庭になっており、その先に礼拝堂のエントランスがある。中庭は天井に幕を張っており、日陰になっているが写真の撮影が難しく、訪問後は背後の高台へ向かっていく庭園側へ登り、全景の写真を撮った。長方形の礼拝堂は幅が随分と広く、天井には1個のメインドームを抱く。ミナレットは8角形で3段のバルコニーをもち、中庭に隅に建つ。ミフラーブ、ミナレット中段とドームの外装は鋸歯状の波線文様で装飾されている。モスクの名はオスマン帝国への蜂起、独立運動の指導者であり、現ヨルダン国王家の先祖でもある故Sharif Hussein bin Aliから採られている。

Yildiz Hamidiye Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  オスマン様式とネオゴシック様式の折衷でデザインされ、重厚な雰囲気のモスクの敷地内には同じ折衷様式の時計塔も建てられている。モスクはオスマン帝国のスルタンAbdul Hamid IIのために、アルメニア人の西洋建築一家Balyan家のSarkis Balyanによって造られたもので、隣接するスルタンの宮殿にも氏のデザインの邸宅が建つ。ドーム屋根自体だけはオスマン様式だが、ミナレットの先端、ゴシック様式のアーチ窓やファサードの冠のような3角形のオーナメントなど全体のシルエットは西洋的で、かと言って教会にも見えない絶妙なデザインである。礼拝堂のドームも少し変わっていて、すっくと立ちあがる4本のまっすぐな柱と多弁形アーチで支えられているのも特徴的。

Jamae Mosque (Chulia Mosque)

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  シンガポールのチャイナタウンの真ん中に2本のミナレットが目立つモスクが建っている。ミナレットは角柱型で、頭頂部には左右とも玉葱型ドームが載っている。周囲はショップハウスが立ち並ぶ、絵に描いたような中国系住民の世界であるが(これはシンガポール全体的にでもある)1ブロック向こう側にはヒンドゥー寺院が建ち、他民族国家らしい立地だ。元々は他あるシンガポールの古いモスクと同じくタミール系インド人ムスリムの移民が造ったものである。門は狭く、隣は道路を隔てる塀とブロック両端はショップハウスがあるため、敷地はあまり大きく見えないが、実は随分と奥深く、中に入るまではそれに気が付かなかった。礼拝堂はオレンジ色の瓦屋根のコロニアル風で、アーチの並んだ平屋建て。天井はフラットでドームはない。礼拝堂は大きく区切られていて、訪れた時は手前側で説教中で沢山の礼拝者が集まっていたが、奥のミフラーブのある側は使われていなかった。内装は全体に薄い緑色で、列柱が並ぶ。ミフラーブは鋭角の三角アーチの変わった形をしている。

Sheikh Zayed Mosque

Aqaba, Jordan : アカバ・ヨルダン  赤茶けた岩山を背後にし、真っ白なドームを抱くモスクが紅海を望んで立つ。街並みから外れて建つため、全く以て端正なアラブ様式のモスクのデザインが風景に相まって、静粛な雰囲気を醸し出していた。2012年に完成、設計はヨルダンの建築事務所であるDar Al Omranによるもの。デザインは2本の角柱型のミナレットと横長の長方形にメインドームと2個のサブドームが並ぶ。噴水のある中庭は長方形で、それをアーチのアーケードがぐるりと囲む。アーケードの頭上は小さなドームが並び、中庭と外庭への門と礼拝堂のエントランスの2箇所の頭上だけやや大きなドームが据えられている。礼拝堂内部は3個のドームごとにアーチで区切られ、内装は白、黒、金で統一され唐草調の植物文様が全面に使われている。ドーム内側も唐草調の白い緻密な植物文様に、差し色で金の葉が描かれていてキラキラとドームの窓からの陽を浴びて輝いていた。

Tuanku Mizan Zainal Abidin Mosque (Iron Mosque)

Putrajaya, Malaysia : プトラジャヤ・マレーシア  銀色に鈍く光るドームが無ければモスクであることもわからないかも知れない。まるでスタジアムのような全景をもつ巨大建築で、全体の構造の約70%を鉄が占め、「鉄のモスク」の異名をもつ。規模としてもマレーシアのモスクではシャーアラムの Sultan Salahuddin Abdul Aziz Shah Mosque 、通称ブルーモスクの次の大きさで最大2万3千人を収容するという。地上からはよく構造が見えないので、上階の庭園に上り、ファサードを真正面から見据える。繰り返すアーチと鉄のリブ・ヴォールト状の梁が絡みあうのはなかなか格好いい。設計はマレーシアの建築事務所のKumpulan Senirekaで近隣のPutra Mosqueも設計している。外見の特徴は他にもミナレットが無いことで、付き添いのガイドの青年によれば、もはや伝統の意匠に従わず現代の様々な要素、輸入した素材や技術でモスクを創り上げたとのことであった。ミフラーブは巨大なガラスからできており、ドイツから輸入されたものである。礼拝堂内部は装置に頼らない自然の換気を取り入れていて、涼しい風が循環しており、過ごしやすい。ガイドはマレーシア人ではなくガーナからの移住者で完璧な英語でユーモラスな建築やイスラームの解説をしてくれて、滞在時間を面白く過ごせたのでここに礼をしたい。

Selimiye Mosque -Istanbul-

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  オスマン帝国スルタンのSelim III統治時代に造られた、オスマン建築とバロック建築を融合した優美なデザインが特徴。円と格子を組み合わせた窓枠や曲線を用いた外壁、変則的なデザインのミナレット、礼拝堂のミフラーブのムカルナスも用いない曲線を使った彫刻のような装飾などが美しく幻想的である。ミンバルの壇上へ上がる階段、バルコニーにも彫刻や楕円や緩やかな曲線がデザインに用いられていて、古典的なオスマン様式とは異なっているのが見て取れる。アーチのアーケード上に西洋建築風の住居のような部屋が付属していたり、礼拝堂の尖塔にデコラティブな小さな鳥小屋が壁についていたり、他のオスマン時代のモスク建築との差異に趣きを感じる。場所が不便であるからか訪れる人は少ないようであるが(訪問時は誰もおらず)、大きなモスクの割に柵などの入場制限もないので細部の観察が容易である。

Kampong Pandan Mosque

Kuala Belait, Brunei  : クアラブライト・ブルネイ  ブルネイの石油開発の街であるSeriaから、国境の街Kuala Belaitへ向かう途中に巨大なモスクが建つ。玉子を切った形状をしたメインドームとアラブ風の2本のミナレットが遠くからも目立っていた。礼拝堂の4隅とエントランス上にドームの載った小さなミナレットが幾つも重なる。全体から見るとアラブ様式ではあるが、マレーシアやインドネシアのモスクにあるような斜面と8角形の台座でドームを支えており、マレー様式との折衷も見られる。ドーム内側は暗く線状の模様がかすかに見えたが、ほぼ装飾はないようだった。このデザインは、なぜかここからだいぶ離れた、バンダルスリブガワン首都側にあるPerpindahan Lambak Kanan Mosqueと内装も含め瓜二つである。事情はよくわからないが、単純にコピーして造っただけのようである。外装のメンテナンスには若干手が足りないようで、ドームが煤けてしまってはいるが、林立するミナレットのおかげでマッシブな印象を残し、周囲を囲む池と深い緑の樹々に映えている。池には鰐に注意の看板もあるところ、水トカゲが出てきて少し驚いてしまった。セリアやクアラブライトと、石油関連に興味があるか、国境越えでくらいしか来ることのなさそうな地域であるが来る機会があれば、訪れると面白いと思う。

Shahbeddin Pasha Mosque (Imaret Mosque)

Plovdiv, Bulgaria : プロブディフ・ブルガリア  ブルガリア中部のPlovdivに現存するモスクのひとつである。逆T字型のオスマン様式のモスクで、ポルティコに5個の小ドームと4箇所に区切られた礼拝堂の各々の頭上にドームを持つ。エントランスのホールから3方向に礼拝室があり、どちらも段差がついている。ミフラーブのあるメインホールは真正面で段差が大きく、木製の階段を登っていく。メインドームの装飾はムカルナス文様のみで内部は頭頂部のパターンが残されている以外ほぼ白く塗られている。全体の装飾はバロック調で、シャンデリアが下がるホールを区切るアーチのパターンが素晴らしい。修復中なのか途切れてしまったりはしている。ミフラーブ上のアッラーの名前を記したカリグラフィーでさえもバロック調のパターンを使っている。鉛筆型ミナレットは鋸歯状の波線が刻まれていてユニークなものである。小さなモスクであるが、見どころがまとまったモスクなのでDjumaya Mosque近辺まで散策に来たらここも外せない。

Abu Darwish Mosque

Amman, Jordan : アンマン・ヨルダン  丘陵を上がったその頂上側の端に建ち、モスク背後からはアンマン旧市街を眼下に望む。石を組んで白と黒のコントラストを作り出しているユニークな外装で有名でもある。ドームまでも石組みで菱型の幾何学文様で造られている。色の違う石組みでストライプ模様を表現するのは、近隣のレバノンやシリアの古いイスラーム建築でも使われており、レバント地域の伝統的な手法を取り入れている。全体にシャープな印象であるが、丸いステンドグラスの窓がアクセントになっている。ミナレットだけは鉛筆型のオスマン様式風のデザインであった。隣には学校が併設されていて、子供達の声は響いて来るのだが、モスクは門が閉ざされており、無人のようなので特に内部への訪問はせずに周囲から撮影したのみ。