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Sinan Pasha Mosque -Prizren-

Prizren, Kosovo : プリズレン・コソボ  プリズレンはコソボ南部にあるオスマン帝国時代の文化遺産の残る街で、モスクはツーリストで賑わう中心部を見下ろすように建つ。すぐそばを流れるPrizren Bistricaと呼ばれる川にかかる石橋とともに街のランドマークとなっている。 オスマン帝国の政治家Sofi Sinan Pashaにより建造され1615年に完成した。以降幾度かの修復を経ている。通りから見ると近隣の商店街の2階くらいの高さにエントランスがあり、4つの柱と3個の小ドームをもつポルティコへは階段を上っていくことになる。オスマン様式の建築で正方形の礼拝室の上部は8角形の台座で大ドームを支えている。ミフラーブは壁から大きく突き出ているのが特徴で、奥行き感があり上部には半ドームが載っている。内部の装飾はバルカン半島で時折見かけるデフォルメされていない花や植物文様で彩られ、ミフラーブ上のドームには4本のミナレットのモスクが描かれていた。

Sarena Mosque

Tetovo, North Macedonia : テトヴォ・北マケドニア  このモスクは「Painted Mosque」「Colorful Mosque」との名でも呼ばれており、独特の装飾が施された外壁と内装をもつ。原形は1495年に建造され以降19世紀初頭に装飾の改装があり、近年に修復されている。Pena川のほとりに建っており、瓦を葺いた石垣越しに、カードをはめたような不思議な模様の壁が見て取れる。遠目で見るとパネル状の凹凸感があるが色彩の濃淡で影を表現しており、近くで見ると構造的な部分の一部を除き平面である。くすんだオレンジ色と緑色で、星を模したのであろう幾何学模様と、花柄で壁一面が装飾されている。たくさんの信者が訪れていたが、装飾には意に介さず、誰もが日々日常といった感じで礼拝をしてるのが不思議な印象であった。バルカン半島の小さなモスクでよく見られる外観はドームのない寄棟屋根と1本のオスマン様式のミナレットをもつ。内部は目が眩むほどの細かい手の込んだ塗装で埋め尽くされ、特に内部からは見上げることのできる天井のドームは必見。植物と幾何学文様のペイントを施され、窓の形に区切られた円の中に花瓶と交互に、モスクの見える都市の風景が描かれている。

Lala Mustafa Pasha Mosque

Gazimagusa (Famagusta), Northern Cyprus : ガジマウサ (ファマグスタ)・北キプロス  Cathedral of Saint Nicholasとの名であった教会を転用したゴシック様式のモスク。現在の名は当時ヴェネツィア共和国の支配下にあったキプロスを陥落させたオスマン帝国の軍人Lala Mustafa Pashaに因んで付けられた。外観を見る限り、転用後に足されたミナレット以外はヨーロッパにあるゴシック教会の様相を保っている。側壁はフライング・バットレスと呼ばれる6枚の控え壁が垂直に突き出て天井を支えている。双塔の上部は地震と戦乱で崩壊したまま修復されていない。教会の建設から1328年の完成当時はフランス系がキプロス王位を継いでおり、デザインはフランスのランスにあるノートルダム大聖堂に触発されたそうである。内部はキリスト教に繋がる装飾は撤去され、またイスラーム文様も付け足されてもいないので、逆にゴシック様式の教会の特徴である交差リブヴォールト天井や尖頭形のアーチが引き立っていた。足を踏み入れた途端感じる奥行き感は独特であった。

Moscow Cathedral Mosque

Moscow, Russia : モスクワ・ロシア連邦  元来この地には1904年にタタール人によって造られたモスクが存在していた。旧ソビエト連邦時代にも閉鎖されなかったという歴史のあるモスクは、イスラーム教徒の増加や経年劣化より論争の末2011年に解体され、2015年にその跡地に現在のモスクが完成した。外装や小ドームのエメラルドグリーン色は解体した旧モスクの色に似ており、オマージュとして採用されたのかも知れない。メインのドームは高さ46m、メインのミナレット2本は高さ78mを誇り、計12kgの金を使用している。1万人を収容する巨大な建築で、内部は3層で造られ2階の一部はイスラームの文化を紹介する博物館にもなっている。内装はトルコの政府の援助と技術工の協力で造られ、クルアーンの描かれたドームの内側で渦を巻く独特な文様は荘厳の一言だ。

Ebu Bekr Mosque (Al-Zamil Mosque)

Shkoder, Albania : シュコドラ・アルバニア  過去このモスクのある場所には、Fushe Cela Mosqueと呼ばれる古いモスクが建っていたがアルバニアの政策によって破壊されてしまった。その跡地にサウジアラビアのSheh Zamil Abdullah Al-Zamil氏からの援助により新しいモスクが1995年に造られた。モスクの名は預言者ムハンマド死後の指導者、初代カリフとなったアブー・バクルの名に因んで付けられた。氏の援助の功績により、Al-Zamil Mosqueとも呼ばれている。オスマン様式にガラス面を多く取ったモダンなデザインである。2本のミナレットは41mの高さがある。

Omeriye Mosque

Nicosia, Cyprus : ニコシア・キプロス  Church of Saint Maryと呼ばれていたキリスト教会を転用したゴシック様式のモスクである。元の教会はオスマン帝国の侵攻で一部破壊されたが、帝国のララ・ムスタファ・パシャによって1571年にモスクとして改築されオスマン様式のミナレットを追加された。建物は教会時代そのままに60mほどもあるという奥行きを保っており、ミナレット側から望むと非常に長い建物に感じる。裏庭側にはフライング・バットレスと呼ばれる側廊の外壁の支えが残っていた。内装はほぼ白一色でアーチが連続して奥まで続いており、ここでも通常のモスクであまり感じることのない奥行き感を味わえる。

Kapitan Keling Mosque

Penang, Malaysia : ペナン・マレーシア  移民の南インド系イスラームコミュニティーの主導者であるカピタン・クリンによって1801年に原型が建造された。創始者の祖国インドで主流のムガール様式で建造されたペナンで最古のモスクと言われる。その後改築されており、ドームやエントランスのアーチなどにムガールの影響を感じるが、回廊のアーチは多弁形アーチのほかに馬蹄形アーチも見られ、ムーア様式も取り入れているのではないかと見える。マレーシアの商店でよく見かける簾がアーチの裏に添えられているのが興味深い。ドーム内部は全体に白く、金色のカリグラフィーで飾られている。文様は少なくシンプルな印象だ。ドーム直下は、多弁形アーチで支えられた台座の窓から入った光で、黄色に淡く照らされていた。

Sultan Mehmet Fatih Mosque (Mbretit Mosque)

Pristina, Kosovo : プリシュティナ・コソボ  その名となったSultan Mehmet II Al-Fatihの命よって建設され1461年に完成した。トルコ政府機関の援助により修復されている。「皇帝=Mbretitのモスク」との別名もあり、プリシュティナでは一番の大きさである。オスマン様式で建造され、鉛筆型の1本のミナレット、1個の大ドームと入り口のポルティコ(柱廊玄関)上に3個の小ドームをもつ。ファサードの2枚の窓だけは丸く愛嬌がある。モスク全体の装飾として主に反復する青い植物文様が描かれている。

Nakhoda Mosque

Kolkata, India : コルカタ・インド  赤い砂岩の外壁の1万人を収容するコルカタで最大のモスク。3層に渡って続くバルコニーのアーチが美しい。ムガール様式で建造され3個のドームと2本の46mのミナレット、25本の小さなミナレットをもつ。行き交う車や人々で混み合う交差点に面した1階には店舗が入り賑わっている。西インドのイスラーム教徒のコミュニティのKutchi Memonsからの資金提供により、以前からあった小さなモスクは1926年に現在の形となった。デザインはムガール帝国時代のアーグラのアクバル廟を模したとされている。

Sultan Ahmed Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  トルコを代表する、世界で最も有名であろうオスマン様式のモスク。トルコの天才建築家ミマール・スィナンの弟子、メフメト・アーの手による。名称は建設当時のオスマン帝国の皇帝アフメト1世より名づけられた。内装に使われた青いタイルから、「ブルーモスク」の名ももつが、現在では冴えた青さは見られなくなってしまっている。スィナンの理想とも言える建築のスタイルを継承し、大ドームを4個の半ドームで支える工法や、手違いで6本を建ててしまったという逸話のある、鍾乳石飾り(ムカルナス)のバルコニーの付いた鉛筆の形ミナレットが特徴である。内部は2万枚を超える植物文様のタイル、200枚を越えるステンドグラスで飾られ、巨大な円形のシャンデリアがドームから釣り下がり、正に圧巻である。