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Showing posts from January, 2019

Al-Bukhary Mosque -Alor Setar-

Alor Setar, Malaysia : アロースター・マレーシア  マレーシアの実業家であるTan Sri Syed Mokhtar Al-Bukhary氏が創設したAl-Bukhary財団によって建造された。モスクは広大な土地に大学などの複合施設の一部として造られ、1万5千人を収容する。前面には泉を模した水の流れるブルーとグリーンのタイル地の池と椰子の樹が並ぶ整然とした中庭がひろがっており、白いモスクとのコントラストが映えてとても美しい。2本の48mのミナレットを礼拝堂の背後に、1個の大ドームを礼拝堂上に、ファサードと庭を囲む両側の施設上に6個の小ドームをもつ。デザインは世界のモスクのデザインからインスパイアされており、ミナレットは預言者のモスクを、内部のミフラーブはイランのAbd al Samad廟をモチーフにしている。大ドームの外側にはクルアーンのカリグラフィーとブルーとグリーンの美しいイスラーム文様が描かれ、こちらはイランの王のモスクをモチーフにしている。クアラルンプールにも財団による同名の Al-Bukhary Mosque があるが、やはりドームのデザインはだいぶ似せている。ドームを支える内部のアーチは、鍾乳石装飾を全面に使用しておりマレーシアではあまり見かけない様式である。

Emin Pasha Mosque

Prizren, Kosovo : プリズレン・コソボ  プリズレンにモスクや時計塔などの建築物を残した貴族一家のMehmed Emin Pashaによって造られ1832年に完成した。歴史のあるモスクであるが、2014年に庭やモスクの外装と内装の修復があり、特に内部のブルーが基調の植物文様の装飾は美しく描かれている。トルコの機関からの援助があり、修復完成時の式典にはトルコの首都アンカラからのビデオリンクでエルドアン大統領も参加したという力の入れようだ。オスマン様式のモスクであるが、おそらくプリズレンで観光客が一番最初に訪れることが多いであろう Sinan Pasha Mosque に似ており、そのコピーとして建てられたとのことである。特に奥へ突き出したミフラーブの上部に半ドームが載った構造はまったく同じであり、描かれた絵も同じく太陽のモチーフに4本のミナレットのモスクが描かれていた。もし時間があれば見比べるのも面白いと思う。

Malabar Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  南インドのタミールや、ケララのマラバールと呼ばれる地域からの移民商人コミュニティによって運営されている1963年に完成したモスク。大通りの交差点に建ち、金色に輝く大ドームと3個のドームと8角形のミナレット、そしてブルーの外壁がよく目立つ。近くに寄ると壁は3色の白に近い薄いブルーから濃いブルーまで、そして金色の小さなタイルで緻密な幾何学文様のパターンで造り込まれているのがわかる。現在のタイル外壁に改修されたのは1995年のことで、完成当初のデザインはまだタイルで覆われておらず、クリーム色の壁で造られていた。ファサードのアーチをくぐると2階の礼拝室に続く階段があり、上りきると角屋根のメインの礼拝室になっている。階段はさらに3階まであり、登りきるとドームが見え、その真下にも小さな礼拝室があった。バルコニーのついた3階の回廊からは、2階の礼拝室を眺めることができる。

Satuk Bugra Han Mosque

Bishkek, Kyrgyzstan : ビシュケク・キルギスタン  ビシュケク市のはずれ、中低層のアパートが続く景色の中に大きなモスクが現れる。トルコの支援によりKyrgyz-Turkish Manas Universityの敷地内に2012年に建設が始まり、2016年に完成した。4,000人を収容するという大きな礼拝堂は典型的なオスマン様式のデザインで造られ、3個のバルコニーの付いた59mもの高さの2本の鉛筆型のミナレットをもつ。内装も中央アジアの伝統様式は感じられず、ストライプのアーチやステンドグラスの配置など、まったくトルコのモスクのデザインだ。モスクの名称はテュルク系王朝のカラハン朝の始祖であり君主の名から取られた。

Omar Ali Saifuddien Mosque

Bandar Seri Begawan, Brunei : バンダルスリブガワン・ブルネイ  通称オールドモスクとも呼ばれるブルネイを代表する国立モスクの一つ。1958年に完成し、ブルネイの28番目のスルタンの名を由来としている。ムガール様式の金色に輝くドームと、市内では一際高いミナレットをもつ。薄いベージュ色の外壁は全体に直線的なデザインであるが、ポーチや回廊はロープをモチーフにした捩れのある独特な柱と曲線のアーチが組み合わされている。敷地の中には整備された庭園と大きな弧を描く人工のラグーンがあり、対岸からは水面に写るモスクの姿を望むことがきる。モスクの前から伸びる2本の橋のうち1本はラグーンの周囲を巡る対岸の遊歩道へ、もう1本は池の真ん中に浮かぶ王室船を模したモニュメントへ続いており、どちらも通行できる。内部は撮影はできないが、白地に金の装飾の入った荘厳な天井は息を飲む美しさであり、必見。

Koski Mehmed Pasha Mosque

Mostar, Bosnia and Herzegovina : モスタル・ボスニア ヘルツェゴビナ  モスクはモスタル市内を流れるNeretva川の崖上に建ち、裏庭からはモスタル観光のハイライトであるStari Mostと呼ばれる橋の正面に据えて眺めることができる。モスクの入り口は橋へ向かう人々が行き交う旧市街の商店が並ぶ小道にあり、低いアーチの門をくぐると洗い場のある中庭が拡がりを見せる。このモスクへもたくさんの観光客が訪れていた。モスクの原型は1618年ごろに完成しているようであるが、近年の内戦で破壊されてしまい現在の姿は再建後のものだ。モスタル出身のオスマン帝国の軍人Mehmed Pasha Koskiの命で作られたが彼は完成を見ず亡くなっておりその兄弟が後を継いだ。典型的なオスマン様式のモスクであるが、木製の斜めになった庇形の屋根がポルティコを覆っているのが特徴でこれは近くにある Karadjoz Bey Mosque にも似ている。メインドームのほかに3個の小ドームをポルティコ上部にもち、28mになる鉛筆型の1本のミナレットをもつ姿も似ている。だが、こちらのミナレットにはバルコニーに鍾乳石状装飾(ムカルナス)がなく、台座にのみわずかにシンプルな装飾があるのが違いであった。

Almaty Central Mosque

Almaty, Kazakhstan : アルマトイ・カザフスタン  アルマトイ市内の大通り交差点に面して建ち、建物のバランスに比べると大きめの金色に光るドームが目立つ。大小計2個のドームと4隅に4本の短いミナレットをもち、外側にある1本のメインのミナレットは47mの高さがある。白い大理石で造られたペルシア様式のモスクは通りに沿って横に長く、ドームとミラーブは交差点側にあり、その反対側に青地に白い文字で描かれたカリグラフィーで飾られた大きなイーワーンがある。据えられたドアをくぐると、すぐに対面のミフラーブまで側廊を携えた細長い通路状のホールがまっすぐに続くという独特な構造になっている。キリスト教会を訪れたときに感じる距離感がこのモスクにもあった。

Sultan Salahuddin Abdul Aziz Shah Mosque

Shah Alam, Malaysia : シャーアラム・マレーシア  ブルーモスクの名で呼ばれ、首都クアラルンプール近郊においてプトラジャヤの Putra Mosque 、通称ピンクモスクとともに多くの観光客が訪れる有名なモスクである。4本のミナレットは142mもの高さを誇り、3段のバルコニーをもつ鉛筆型をしており、ミナレットだけはオスマン様式の特徴を取り入れていると感じる。ただし、デザインは現代的にアレンジされて、先端はブルー1色に塗られ、1段目だけは鋸の状の幾何学模様で彩られている。アルミニウム製という巨大なドームもブルーが基調となった格子状の幾何学模様と白地に青いカリグラフィーが描かれている。上部を切り取った4角錐の屋根を8枚の板状の柱で支えており、その上に先端がやや尖った玉子を切った形状をしたドームが載っているの特徴である。外装だけでなく中庭の屋根やステンドグラスから入る光で内部もブルーに照らされ、ブルーモスクと呼ばれる所以だ。

Luang Kocha Itsahak Mosque

Bangkok, Thailand : バンコク・タイ  倉庫やショップハウスの立ち並ぶ古いバンコクの中華街の路地に美しいモスクが唐突に現れる。ミナレットもドームもないコロニアル風の2階建て西洋建築で、黄色く塗られた姿が通りから一瞬だけ見えるが、時折通りかかる外国人の観光客は知らずに通り過ぎてしまうだろう。タイは植民地時代がなく古い西洋建築は多くはないが、過去にバンコクの中心であったこのチャオプラヤー川周辺にはまだ残っており、このモスクもその一つだ。その名になったLuang Kocha Itsahakは、当時のタイのSai Buri、現マレーシアのケダ州から来たマレー語の通訳をする役人で、祈りの場がないムスリム商人のために土地を手に入れ、この地にモスクを造った。

Bandung Grand Mosque

Bandung, Indonesia : バンドン・インドネシア  3個のドームをもち、広場に面し大きく南北に広がった姿が特徴だが、近くではとても全貌を見渡すことができない。低層であるが、奥行きもあり、1万3千人を収容する大きなモスクだ。81mの高さの2本のミナレットが遠くからでも良く目立つ。モスクはかなりの数に亘る改装を繰り返し、現在の姿になったのであるが、1930年代に改装された際のインドネシア伝統建築様式の3段屋根のデザインは現在もオマージュとしてミナレットの上部の飾りに残されている。また、当時の礼拝堂の真ん中にあったその3段屋根の位置に現在ではクリーム色のメインドームを配し、当時の南北にある2段屋根の位置に金色の小ドームを配するという、構造にもオマージュを込められている。

Abdul Gaffoor Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  シンガポールのインド人街、リトルインディア地区にあるユニークな外観のモスク。1859年にインド系イスラーム教徒が多かったこの街に木造のモスクが造られたのが始まりとなった。その後弁護士事務所の書記官であったShaik Abdul Gaffoor bin Shaik Hyderが老朽化したモスクの代わりとなる新しいモスクのために資金を作り、1907年に建設を始めさせた。完成したのは彼の死後の1927年となり、モスクにその名を残した。その歴史から1979年に国定記念物に制定されている。繰り返す星のモチーフを散りばめられた緑と黄色の外壁と、建物を囲むムーア様式の多弁式アーチが特徴。メインエントランス上には日輪型をした預言者のカリグラフィーが、屋上に林立したミナレットには月のモチーフが並んでおり、その対比が面白い。建物自体はムーア様式だけでなく、ムガールとゴシックを合わせたインド・サラセン様式のデザインを取り入れており、特に円柱や柱や壁の持ち送り装飾は古典的な西洋建築のデザインを感じる。玉葱型のドームが西洋風の欄干に囲まれているのもマルチカルチャーのシンガポールらしく、多様多彩で個性的なモスクであると思う。

Jashar Pasha Mosque

Pristina, Kosovo : プリシュティナ・コソボ  オスマン帝国時代の現在マケドニア・スコピエ市の総督も後に務めたJashar Mehmet Pashaの名を冠したモスクであり、プリシュティナ旧市街にいくつかある歴史的建造物の一つ。モスク自体は15世紀ごろに建造されたものであるが、プリシュティナの裕福な市民であった彼の資金提供により1834年に、今の原型に改築された。一見、鉛で覆われたドームと鉛筆型のミナレットをもつ典型的なオスマン様式のモスクであるが、通常のオスマン建築にあるようないくつかの小ドームが載った柱廊玄関は道路の拡張で破壊され、このモスクの特徴でもある木製のポーチに置き換えられた。その後、ポーチも含め全体をトルコの機関により修復されている。ポーチと礼拝堂を区切るファサードの壁やドア、ドームなど内部の装飾は、緑や青や茶色を使い、植物をメインのモチーフに使っており可憐で美しい。バルコニーは大きくオレンジ色が使われ、ミンバルやドームの花のモチーフなどにも差し色で使われているのがわかる。

Osman Fazil Polat Pasha Mosque

Gazimagusa (Famagusta), Northern Cyprus : ガジマウサ (ファマグスタ)・北キプロス  北キプロスの港街ガジマウサに2015年に完成した新しいモスクで、オスマン様式で建造された。トルコとその周辺で造られた典型的なオスマン建築と違ってシンプルな白い外壁が特徴のデザインで、ドームまでも同じく白1色で塗られたモスクは南北キプロスでは見られないと思う。大きさに対して細身で3段のバルコニーのついたミナレットが青空に映える。その名の由来はキプロス紛争時のトルコ軍指揮官Osman Fazil Polat中将から取られたものである。

Klang Royal Town Mosque

Klang, Malaysia : クラン・マレーシア  クラン川の岸に建ち、市内へ入る橋を渡ると金色のドームが目立つ姿を現す。クラン市に従来からあった2箇所のモスクでは増加する礼拝者を受け入れることができなくなり、1,500人の巡礼者を収容するこのモスクが計画されることになった。2003年に建造が始まり、長い期間を経て2009年に完成した。上から見ると星型八角形で造られ、中心の大ドームは8個の同じく金色の半ドームで支えられている。内部は全体に白と淡いピンク色で塗られ、見上げると半ドームの直下に半円形のベランダがせり出している。ドームの装飾はシンプルで天井が高く感じられる。無数に開いたひし形の窓から光が入り、アクセントになっていた。

Taza Pir Mosque

Baku, Azerbaijan : バクー・アゼルバイジャン  ロシアのサンクトペテルブルグで学んだアゼルバイジャンの建築家であるZivar bey Ahmadbayovにより、モスクの原型は1914年に完成し、その後すぐの旧ソビエト連邦時代には工場・倉庫に使われるという不遇の時代を経ていた。その後大統領イルハム・アリエフの命によって 2009年に再建されている。シルヴァン・アブシェロン様式のデザインでファサードのポーチは3つのアーチで支えられ、1個のメインドームと長方形の礼拝堂の前面両側に2本のミナレットをもつ。ミナレットは建物に対して高さはなく、どっしりとした印象だ。ミナレットの頭頂部のドームと、メインドームの縁取りの装飾やカリグラフィーには金が使われており荘厳である。敷地内に建つコの字形の建物はBaku Islamic Universityである。

Al-Serkal Mosque

Phnom Penh, Cambodia : プノンペン・カンボジア  2014年にその名になったアラブ首長国連邦のEisa Bin Nasser Bin Abdullatif Al-serkal氏の資金提供にて建造された。開会式典には氏と、そしてフンセン首相が参加している。近隣諸国では見かけないオスマン様式のデザインで、1,200人を収容するカンボジアで最大のモスクとなった。現在のカンボジアは人口のほとんどが仏教徒であるが、特にチャム族と呼ばれるマレー系イスラーム王朝であるチャンパ王国の末裔は現在もイスラーム教の信仰が続いている。この地にも1968年に造られたモスクがあったが2012年に解体されその跡地に新しくこのモスクが置き換えられることとなった。ドーム外装は茶ともえんじ色とも取れるような不思議な色合いをしている。内部の壁は薔薇も色で、天井の花のモザイクとドームは柔らかな色味のクリームとターコイズブルーで彩られている。紺地に金のカリグラフィーはアルジェリアの職人の作品である。 

Sultan Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  モスクの名称となった英領時代以前のジョホールの王Sultan Hussein Shahの命で、1824年にこの地Kampong Glamでモスクの建設が始まった。完成当時の1階建てのモスクから現在に至るまで数回の改築を経ている。現在の大きな姿の原型は1932年に完成し、以降2016年に施設は修繕され今に至る。デザインは当時から数々の歴史的な宗教・商業建築を手がけていたシンガポールの建築事務所Swan&Maclaren ArchitectsのDenis Santryによるもので、英領時代のインドのコロニアル建築で見られる、ゴシックとムガールを合わせたインド・サラセン様式を取り入れた。1975年には国定記念物として指定されている。金色のドームのすぐ下の黒く塗られた台座は、注意深く見ると凸凹になっている。そこにはガラス瓶がはめ込まれており、王が貧しい教徒でもモスクの建設に参加し貢献できるように瓶を寄付として集めた、という逸話が残っている。