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Secretariat Mosque

Hyderabad, India : ハイデラバード・インド  Hussain Sagar Lake湖畔に近いSecretariat地区にある2023年に公開されたモスクである。開発で壊された「Masjid-e-Hashmi」と「Masjid Dafatir-e-Mautamadi」の2箇所のモスクの代替としてテランガーナ州政府によって新しく建造された。華美な装飾はなく、8角形の台座をもつ玉葱型のドームと純白の外壁が青い空によく映える。エントランスから礼拝堂への通路はゴシック建築で使われるバットレス(控え壁)が並ぶ、インドのモスクでは見かけない現代建築風の要素もある。中庭は通路を挟んで反対にあり、外からは見ることはできない。北端の礼拝堂・通路・エントランス・ミナレットと続く棟と離れて、南端に別棟のドームがある礼拝堂があり、前述の「Masjid-e-Hashmi」と旧名が壁に書かれている。

Rustem Pasha Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  モスクの周囲は巨大なバザールに面しており、初めて訪れた時は一体どこがモスクの入り口なのか分からなかった。幾人かの礼拝者達が小さな入口から階段へ向かうのを、人混みのバザールの通路で見かけて付いて行き、やっと訪れることができた。狭い階段を登り抜けると突然視界が広がり、2階の細く長い中庭へ導かれる次第だ。1階のバザールから中庭への通路は両端に2箇所。モスクは意外にも大きく、傾斜のついた庇に乗った5個の小ドームのポルティコが現れる。イズニク地方の青い花模様のタイルで飾られており、非常に美しい。青いタイルはファサードだけでなく、礼拝堂内部の柱や壁やミンバルにもびっしりと貼られており、必見。土台の建物は長い月日が経っている感じがするがモスクは清潔にメンテナンスされている。伝統的、典型的なオスマン様式の建築で、鉛筆型の1本のミナレットをもつ。オスマン帝国時代の天才建築家であるミマール・スィナンの作品で、モスクの名称は建立の依頼を受けたオスマン帝国政治家のRustem Pashaより採られた。

King Salman Mosque

Malé, Maldives : マレ・モルディブ  1万人の収容人数を誇るモルディブ最大級の現代建築のモスク。ドームではない鋸の刃のような独特の錐状の屋根をもち、首都マレの人口ビーチ横に海を臨んで建てられている。サウジアラビアのSalman bin Abdulaziz Al Saud国王からの寄付で完成し、その名を冠した。最終的なデザインはトルコの建築事務所であるBütüner Architectsである。元々のデザインはマレーシアのNRY Architectsがモルディブ伝統建築をモチーフに創り上げたところ、建設の遅延から円錐形の屋根やイスラームの五行を表す5本のミナレットなどの要素を、トルコ側が引き継いで造られた(それについては後々揉めていることがニュースになった)。長らく開いているのかよくわからない状況であったのだが、2024年現在は礼拝所として開放されている。あまり大きく見えないが、6階建てでメインの礼拝堂は階段を登った2階にあり、その他会議場のような多目的ホールやと図書館などが付帯したイスラームの複合施設となっている。

Baitul Mukarram National Mosque

Dhaka, Bangladesh : ダッカ・バングラデシュ  メッカの聖殿カアバを模した、4万人もの礼拝者を収容できる、首都ダッカを代表する巨大モスクである。全体のデザインは連続した尖頭アーチをモチーフに使い、ムガール様式も意識して造られている。1階もまた、ほぼ全てが巨大なマーケットになっており、商店で埋め尽くされているのには驚いた。運営事務所は1階にあるが、モスクや中庭などの礼拝の施設は全て台座上になった2階にある構造になっている。礼拝堂には3個のアーチとドームのあるポルティコが、メトロの走るTopkhana Road面した側と市場Bangabandhu Aveに向かう広大な中庭側の2箇所にある。角丸長方形のバルコニーが層になった礼拝堂上部にはドーム状の文様が入るが、実際はドームはなく礼拝堂の建物は正にカアバの様な直方体の形状である。通常の日々の礼拝でも、沢山の人々が礼拝堂内には入らずに、中庭で礼拝をしているのが見える。国立競技場に沿って中庭が造られているため、緩くカーブの続く、美しいフォルムのアーチで造られた回廊が続く。ミナレットは1本、中庭の一番端の重厚な巨大アーチのゲート側に建つ。完成は1968年、バングラディシュ独立前の東パキスタン時代の建築であり、設計はパキスタン人建築家の故Abdulhusein Meheraly Thariani氏。

Sultan Ismail Mosque

Muar, Malaysia : ムアル・マレーシア  ジョホール州には過去、統治していたスルタンがイギリスと強く結びついており、その後の植民地時代を通じて西洋建築の技術を取り入れた建築物が多くある。ジョホール州境手前に近いムアルに街を代表する大きなモスクが2箇所あるのだが、このモスクも、また Sultan Ibrahim Jamek Mosque と呼ばれるモスクも英国植民地時代を彷彿させる西洋建築とイスラーム建築が融合したデザインで造られた。街を流れるムアル川を挟んで、どちらもなぜかほぼ同じような構造である。寄棟造りの屋根と西側面に大きなドーム、反対側の東側面に細い柱で支える四角形のバルコニーと窓のあるミナレットと、一見ではパーツごとの区別は難しいくらい似ている。礼拝堂内部はアーチや柱頭に西洋建築らしさも感じるが、マレーやアラブの文様なども取り入れている。大きな木製の彫刻が施されたミンバルが独立して立っており、キブラ壁にある凹みをもつ形状のミフラーブはない。その背後にはブロークン・ペディメントで装飾された星の文様入りのドアがある。ドアの裏は外から見ると側壁の大きなドームのある半円形の部屋なのだが、特に部屋に何か宗教的な機能があるようでもなかった。寄棟造りの屋根なので、天井は外から見る限り普通の屋根だが、ドームは礼拝堂中心上部にある。

Toli Masjid / Mosque

Hyderabad, India : ハイデラバード・インド  ハイデラバード郊外に建つ、ゴールコンダ王国時代のインド・イスラーム建築の集大成のような美しいモスクである。規模としては市内中心の巨大な Makkah Masjid に比べれば大きくはない静かなモスクであるが、ファサードの5個のアーチと重厚な両端のミナレット、アーチ上部の漆喰の繊細な欄干や幾何学文様のスクリーン状の装飾など訪れる価値は非常に大きいと思う。モスクは嵩上げした長方形の台座に建ち、中庭に清めのための長方形の水場がある。内部の礼拝堂の天井は長方形で、その奥のミフラーブとは更に3個のアーチで区切られている。ドームはなく、ドームを模したような平面の装飾が見られる。

Old Friday Mosque

Malé, Maldives : マレ・モルディブ  ディベヒ語では「Hukuru Miskiiy」と呼ばれており、モルディブ最古のモスクであり、マレの史跡となる歴史建築でもある。珊瑚石(石灰岩)でできたクリーム色の壁と石彫り、内部の緻密な深い茶色の木彫り、灯台のような形の太い円柱状の縞模様のミナレットと、特徴のある要素をもつ。モルディブの海を訪れる際、マレ市内を観光で巡る機会もあまりないかとも思うが、歴史建築に興味があるのならモスクの天井や柱や壁、ミフラーブ等のデザインはなかなかの見どころではないかと思う。修復とメンテナンスされているので外見からはあまり古さは感じないが、細部からは十分に長い歴史を感じられる。白い中庭には墓地と幾つかの歴代スルタンの霊廟が並び、モスクの礼拝堂は段々になった金属製の屋根の細長い建物である。起こりは1153年にスルタンであるMohamed Ibn Abdullahによってモルディブで初めてのモスクが造られ、その後現在のモスクの原型の建造が1656年に開始した。円柱状の大きなミナレットは1674年に完成し、以降モスクは幾たびか改装・修復されて今に至る。

Bait Ur Rouf Mosque

Dhaka, Bangladesh : ダッカ・バングラデシュ  ミナレットやドームの無い、レンガを積み上げた現代建築のモスクがダッカ郊外にある。建造されたのは2012年、当時ではイスラームの伝統的な意匠を敢えて用いない、モダンでミニマムなデザインのモスクの先駆けであったであったと思う。レンガは積まれた壁の部分と、1段置きに斜めに隙間を作って入れ込んでいる部分があり、そこから光と風を取り入れる。モスクの礼拝堂は角度のついた正方形で、その周囲は円周で囲まれており、その外側をさらに外壁の正方形で囲んでいる。光と風は外壁からだけでなく、内部の湾曲した中庭状の吹き抜けと天井の4隅からも採られているので、中はレンガに囲まれた外側から見るよりだいぶ明るい。採光と通風も、できるだけ自然の力を利用しようとしているのがわかる。天井はドームは無いのだが台座上の天井があり、ランダムに開けられた丸い穴と前述の4隅から神秘的に光が注ぐ。ミフラーブは通常のモスクにあるような凹みはなく、キブラ壁にレンガで湾曲した壁に1本の隙間を作り、そこから直線の光が入るだけである。デザインはバングラディシュ人の女性建築家であるMarina Tabassum氏で、このモスクでアガ・カーン建築賞を受賞した。バングラディシュ国内で同じようなコンセプトでモスクや他建築のデザインもしており、レンガを積んだミニマムな美しい建築を見ることができる。

Ortakoy Mosque (Buyuk Mecidiye Mosque)

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  ボスポラス橋をバックに海峡の岸辺に建つなかなか絵になるモスクで、市街地から若干離れている場所ではあるが、礼拝堂はその美しさからであろうかツアー客でいっぱいであった。2本のスリムなミナレットを抱くコの字のピンク色をしたファサードは西洋建築風である。その後ろに正方形の礼拝堂が控える独特の形状で、巨大なドームはオスマン様式のシンプルな青銅色のものであるが、ドームの載った台座から下の4隅の4本の柱とアーチの形状は美しく絢爛に装飾されている。デザインはトルコへ西洋建築技術を持ち込み国内にたくさんのモスクや公共建築を建造した、アルメニア建築家一族のBalyan家の父Garabet Balyan氏と子であるNikoğos Balyan氏。イスラーム建築と西洋建築の融合させた建築で名高い建築家であるが、このモスクもネオバロック様式の華麗なデザインを取り入れている。礼拝堂でドームを見上げると、正方形のモスクの壁は美しく装飾された細長い窓を当てがった垂直性を相当に感じさせるデザインで、その煌びやかさと共に天井の高さに驚く。イスタンブールの歴史的なモスクは基本的に窓が小さく薄暗いが、ここはその4面の窓からもたくさんの光が差し、内部は非常に明るい。ドームの内壁も、オスマン様式で見られるような平面的な植物文様の繰り返しとは異なり、緻密な絵画のような独特なものであった。

Al-Jabbar Grand Mosque

Bandung, Indonesia : バンドン・インドネシア  バンドン出身の建築家、州知事でもあるRidwan Kamil氏渾身の作となる巨大モスク。途中工期の中断もあり、外装が完了してからもなかなか工事は進まず5年を費やして完成した。礼拝堂だけで約10,000人を収容する。氏の設計したモスクはバンドン郊外のキブラ壁を取り払い、グレイのブロックを積む無機的な構造で話題になった Al-Irsyad Mosque があるが、他にもおよそモスクには見えないモスクをデザインし建造していることでも話題である(最近のモチーフは花や折り紙などであった)。このAl-Jabbar Grand Mosqueもインスピレーションは魚の鱗とのことで、巨大な三角形の庇と菱柄の段差のついたガラスパネルのモチーフをドーム状に重ねた壮大なデザインである。モスクは貯水池の中にあり、礼拝者は入場と出場に分かれた2本の橋でアクセスする。鋭角の4本のミナレットは池の水中から突き出している。文様は幾何学的なイスラーム文様が基本的に使われているのだが、鱗の庇の裏側だけはBatik Megamendungと呼ばれる雲柄が使われており、氏の郷土愛からなのか。訪れたのは日曜日のせいか、礼拝者が詰め掛けており、中庭の外周の回廊ではたくさんの人々が座り込んでくつろいだり食事を取っていた。