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Old Friday Mosque

Malé, Maldives : マレ・モルディブ  ディベヒ語では「Hukuru Miskiiy」と呼ばれており、モルディブ最古のモスクであり、マレの史跡となる歴史建築でもある。珊瑚石(石灰岩)でできたクリーム色の壁と石彫り、内部の緻密な深い茶色の木彫り、灯台のような形の太い円柱状の縞模様のミナレットと、特徴のある要素をもつ。モルディブの海を訪れる際、マレ市内を観光で巡る機会もあまりないかとも思うが、歴史建築に興味があるのならモスクの天井や柱や壁、ミフラーブ等のデザインはなかなかの見どころではないかと思う。修復とメンテナンスされているので外見からはあまり古さは感じないが、細部からは十分に長い歴史を感じられる。白い中庭には墓地と幾つかの歴代スルタンの霊廟が並び、モスクの礼拝堂は段々になった金属製の屋根の細長い建物である。起こりは1153年にスルタンであるMohamed Ibn Abdullahによってモルディブで初めてのモスクが造られ、その後現在のモスクの原型の建造が1656年に開始した。円柱状の大きなミナレットは1674年に完成し、以降モスクは幾たびか改装・修復されて今に至る。

Bait Ur Rouf Mosque

Dhaka, Bangladesh : ダッカ・バングラデシュ  ミナレットやドームの無い、レンガを積み上げた現代建築のモスクがダッカ郊外にある。建造されたのは2012年、当時ではイスラームの伝統的な意匠を敢えて用いない、モダンでミニマムなデザインのモスクの先駆けであったであったと思う。レンガは積まれた壁の部分と、1段置きに斜めに隙間を作って入れ込んでいる部分があり、そこから光と風を取り入れる。モスクの礼拝堂は角度のついた正方形で、その周囲は円周で囲まれており、その外側をさらに外壁の正方形で囲んでいる。光と風は外壁からだけでなく、内部の湾曲した中庭状の吹き抜けと天井の4隅からも採られているので、中はレンガに囲まれた外側から見るよりだいぶ明るい。採光と通風も、できるだけ自然の力を利用しようとしているのがわかる。天井はドームは無いのだが台座上の天井があり、ランダムに開けられた丸い穴と前述の4隅から神秘的に光が注ぐ。ミフラーブは通常のモスクにあるような凹みはなく、キブラ壁にレンガで湾曲した壁に1本の隙間を作り、そこから直線の光が入るだけである。デザインはバングラディシュ人の女性建築家であるMarina Tabassum氏で、このモスクでアガ・カーン建築賞を受賞した。バングラディシュ国内で同じようなコンセプトでモスクや他建築のデザインもしており、レンガを積んだミニマムな美しい建築を見ることができる。

Ortakoy Mosque (Buyuk Mecidiye Mosque)

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  ボスポラス橋をバックに海峡の岸辺に建つなかなか絵になるモスクで、市街地から若干離れている場所ではあるが、礼拝堂はその美しさからであろうかツアー客でいっぱいであった。2本のスリムなミナレットを抱くコの字のピンク色をしたファサードは西洋建築風である。その後ろに正方形の礼拝堂が控える独特の形状で、巨大なドームはオスマン様式のシンプルな青銅色のものであるが、ドームの載った台座から下の4隅の4本の柱とアーチの形状は美しく絢爛に装飾されている。デザインはトルコへ西洋建築技術を持ち込み国内にたくさんのモスクや公共建築を建造した、アルメニア建築家一族のBalyan家の父Garabet Balyan氏と子であるNikoğos Balyan氏。イスラーム建築と西洋建築の融合させた建築で名高い建築家であるが、このモスクもネオバロック様式の華麗なデザインを取り入れている。礼拝堂でドームを見上げると、正方形のモスクの壁は美しく装飾された細長い窓を当てがった垂直性を相当に感じさせるデザインで、その煌びやかさと共に天井の高さに驚く。イスタンブールの歴史的なモスクは基本的に窓が小さく薄暗いが、ここはその4面の窓からもたくさんの光が差し、内部は非常に明るい。ドームの内壁も、オスマン様式で見られるような平面的な植物文様の繰り返しとは異なり、緻密な絵画のような独特なものであった。

Al-Jabbar Grand Mosque

Bandung, Indonesia : バンドン・インドネシア  バンドン出身の建築家、州知事でもあるRidwan Kamil氏渾身の作となる巨大モスク。途中工期の中断もあり、外装が完了してからもなかなか工事は進まず5年を費やして完成した。礼拝堂だけで約10,000人を収容する。氏の設計したモスクはバンドン郊外のキブラ壁を取り払い、グレイのブロックを積む無機的な構造で話題になった Al-Irsyad Mosque があるが、他にもおよそモスクには見えないモスクをデザインし建造していることでも話題である(最近のモチーフは花や折り紙などであった)。このAl-Jabbar Grand Mosqueもインスピレーションは魚の鱗とのことで、巨大な三角形の庇と菱柄の段差のついたガラスパネルのモチーフをドーム状に重ねた壮大なデザインである。モスクは貯水池の中にあり、礼拝者は入場と出場に分かれた2本の橋でアクセスする。鋭角の4本のミナレットは池の水中から突き出している。文様は幾何学的なイスラーム文様が基本的に使われているのだが、鱗の庇の裏側だけはBatik Megamendungと呼ばれる雲柄が使われており、氏の郷土愛からなのか。訪れたのは日曜日のせいか、礼拝者が詰め掛けており、中庭の外周の回廊ではたくさんの人々が座り込んでくつろいだり食事を取っていた。

Al-Shafei Mosque

Jeddah, Saudi Arabia : ジェッダ・サウジアラビア  Jeddah旧市街の歴史地区、Al Balad地区にある市内で最古ともいわれる歴史あるモスクである。旧市街は伝統的な格子を使った装飾が特徴の中層の建築群が立ち並ぶ地域で、その入り組んだ路地の中に隣り合ってミナレットが建っている。門をくぐり、モスクは通りより低い場所にあるため通常のモスクへの入場と違い階段を降りるのも珍しいが、すると中庭にある四角く開けた空間が広がっている。周囲と建築と違って平屋建ての建築様式は独特で、アラブ様式ではあるが原型は13世紀頃の建造、その後大規模な改築とのことで、中庭の木製の柱と梁、十字型の彫刻の装飾で支える2面のアーケードが美しい(以前の写真を見ると構造的には4面がぐるりと中庭を囲む回廊だが、現在はガラス窓がはまっており作り変えられた)。礼拝堂は列柱のアーチが整然と続き、中庭と同じ木製の天井にシャンデリアが輝く。暗く見えにくいが、ドームも木造である。現在はモスク全体のさらなる修復が終わっており、洗練されている中に初期イスラーム建築のプリミティヴな雰囲気も残っていて、個人的に見学したサウジアラビアのモスクの中では一番好きなタイプのモスクである。ミナレットはこのモスクの様式とまったく関係なく、エジプトで見られるような2段になった緻密なムカルナス装飾のバルコニー、柱が四角形から上部へ向けて八角形に、頭頂部が球状になったデザインだ。モスクが建つ前から別のモスクがあり、そのミナレットをそのまま使っているのか。年代もこのモスクの建造より古いそうで、確定できていないようである。モスクは開放されているかどうか、はっきりとわからなかったが、中庭はガイドが率いる観光客の団体や、おそらく個人的に訪れる観光客もみかけたのでおそらく中庭までは許可がなくとも入ることはできそうなので、旧市街探索の建築巡りのハイライトとしてお勧めする。

Zeyrek Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  Monastery of the Pantokratorという修道院の複合施設を転用した、イスタンブールのビザンツ様式建築の中ではHagia Sophiaに続き、2番目に大きいモスクである。庭正面から見ると左右非対称なのは、1棟と2棟の増築された教会が平行に建ち統合されたためで、向かって左から南棟のChurch of Christ Pantocrator、中棟のChapel to St Michael、右が北棟のChurch of the Theotokos Eleousaである。多くの皇帝が埋葬されたため、真ん中は皇帝の霊廟などとも呼ばれる。南北の教会は、ビザンツの正教会建築である四円柱式内接十字型で造られた。礼拝堂上のドームは南北に1個、真ん中に2個、それぞれ違う規模で違う文様で装飾されている。南棟のエントランス側にもう1個ドームがあるが、1階から構造上見られることができなかった。各々の礼拝堂は正教会で見られる礼拝堂へ入れない者のためのナルテックスと呼ばれる細長い通路状の構造で接続されており、また、もうその外側がアウターナルテックスが出っ張りのようになって南棟と中棟を接続している。ミナレットはナルテックス側、エントランス側に建つ。ビザンツ帝国時代の教会、霊廟から一時的にラテン帝国時代の宮殿、オスマン帝国の侵攻後にマドラサ、モスクとなりその後は放置され外壁は崩壊が始まるほど荒廃してしまったが、その長い歴史に渡る建築の意匠は綿密に調査されて現在は美しく修復されている。

Bogor Grand Mosque (Al-Mi'raj Grand Mosque)

Bogor, Indonesia : ボゴール・インドネシア  ジャカルタ郊外のボゴール市は街の中央に大きな植物園があり、モスクは駅周辺の繁華街からはその公園を越えた高台に建っている。モスクの敷地は大きく中庭が取られ、中庭を挟んで2棟の建物が建っているのだが、メインドームと2個の小ドームを持つ礼拝堂にはミナレットはない。構造は少し変わっていて、礼拝堂はアーケード状の回廊で別棟と繋がっており、その別棟は下層がイスラーム開発研究ボゴールセンターの事務所などに使われ上層がミナレットになっている。ミナレットは台座の長方形から8角形になり、段々に細くなっていく。設計はジャカルタの Istiqlal Mosque を設計した建築家Frederich Silaban氏であるが、モスクの原型は大規模に改築されて現在は異なっているようだ。礼拝堂は2層で、金のカリグラフィーを纏うコの字のバルコニーと金で装飾された大きなミフラーブが目に入る。バルコニーの床下に当たる部分は8角の星をモチーフで繰り返し装飾されている。 ロケーション:ボゴールはジャカルタ近郊の街でジャカルタ市内のJakarta Kota駅からManggarai駅経由のKRLコミューターのBogor Lineに乗って1時間半。徒歩では駅を降りて、繁華街を抜けると大きな正方形状の植物園があり、迂回しながら歩くのと工事で道が寸断されていたりと1時間程かかった。途中で植物園にも寄っているのでモスクまで徒歩で来てしまったが、ボゴール駅からAngkotと呼ばれるミニバスもありモスクの前まで行くことができる。 訪問:モスク入口のカウンターで門番に確認、英語が通じなかったが身振りで伝えた。 撮影:外観・内装ともに制限なし。ドーム直下まで撮影可能。

Al-Ghamamah Mosque

Madinah, Saudi Arabia : マディーナ・サウジアラビア  Al-Masjid An-Nabawi (Prophet's Mosque) 前の広場に建つサウジアラビアでは珍しいオスマン様式のモスクである。Madinahで最古のモスクのひとつともいわれるが何度も改築されているので原形は定かでない。オスマン・サウジ戦争で負けたサウード家の国家からオスマン帝国の治世下に移った際、オスマン様式に改築されて今に至る。名称はアラビア語の「雲」から、確かに名称のアラビア文字を削って検索すると雲が出てきた。雲の名は雨(雲)を呼ぶ祈願から取られたという。聖地を前に孤高の存在であるが、ムハンマドが祈りを捧げたことで高名で、礼拝者を集めている。黒い石造りのモスクというのもなかなかなく、格好いい。後ろから見るミフラーブ上のドームがメインドームの1個であり、他5個のドームが礼拝堂上に合わせて3個が2列、合計6個が礼拝堂上に並ぶ。ファサードのアーチで支えられたポルティコ上部にも、形状が異なるお椀を伏せたようなドームが5個あり、中央の1個は少し高くなっている。

Tesvikiye Mosque

Istanbul, Turkey : イスタンブール・トルコ  瀟洒な洋館のような趣のある、アルメニア人の建築家Krikor Balyanによって造られたネオバロック様式のモスクである。ファサードのコリント式柱頭の4本の柱と頭上のペディメントに掲げられたオスマン帝国の国章が印象的だ。1階左右端の表玄関の扉の上の紋章は国章の一部、アラビア文字の署名である。ミナレットもトルコのオスマン様式のモスクで一般的なものと一味違う、バルコニーは鍾乳石模様でない彫刻が施され、先の尖った鉛筆状でない丸みを帯びた段の飾りのようになっている。Balyan家は西洋建築の技術をオスマン帝国に持ち込んで多数の宗教建築や公共施設を造った多数の建築家を生んだ建築家一家でなのであるが、その一人であるKrikorも、このモスクをイスラーム文化とネオバロック様式の折衷でデザインしている。礼拝堂内部はトルコのモスクは外見を地味に、内装を飾り付けるのが常であるが、ここは伝統的なタイルの花柄で覆いつくすようなものではなく金色をふんだんに使った豪華なもの。特にミフラーブ周りは金を使いバロック様式の建築の外観のようにデザインされていて、しかし派手な煌びやかさではなく重厚感のある美しいものだった。

Ilidza Central Mosque

Sarajevo, Bosnia and Herzegovina : サラエヴォ・ボスニア ヘルツェゴヴィナ  サラエヴォ市街の西端の街、Ilidzaに2016年に完成、2017年に公開された。1,500人を収容する付近では最大の規模のもの。大きな街ではないが、モスクは周囲にあまりなく中央モスクの建造は念願であったそうだ。サラエヴォ市内は伝統的なオスマン様式で建造されたモスクが多いが、ここは赤銅色の巨大なドームそのものが礼拝堂になった珍しいデザインである。現代建築風ではあるが、どことなくオスマン様式との折衷を意識しているのもわかる。ミナレットはコンクリートの円柱形で2段のバルコニーを模した輪で装飾されている。礼拝堂の外周のアーチには6角星がくり抜かれた日除けがつけられている。窓が大きいので、採光には十分で礼拝堂内部は明るい。内部はシンプルで、ドーム状の天井の装飾はカリグラフィーのみ。ミフラーブは中庭に向かってドーム状の躯体がすぼむ後ろ側に設置されている。 ロケーション:トラムの西端の終点、Ilidža駅下車。駅を降りて広場から住宅街の中を何度か道を曲がりながら15分歩く。 訪問:特に断りはなし。 撮影:外観・内装ともに制限なし。