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Betong Central Mosque

Betong, Thailand : ベトン・タイ  空色のドームは色褪せてしまっていたが、そのモスクはタイの南、最果ての地に孤高に佇んでいた。緑濃いタイ深南部ヤラー県の山中に忽然と現れる都市ベトン。意外にもイスラーム人口が圧倒的に多いこの地域の中で、珍しく際立って中国系タイ人が多い街だった。それでもあと数kmでマレーシアとの国境ということもあり、ムスリムもやはり多く住んでいる。タイで見かける多くの中規模のモスクは重厚な造りの印象があるのだが、このモスクはドームや外壁の色調、白いアーチの回廊、礼拝堂は正方形でミフラーブのあるキブラ壁を除く3方にサブドームを頂くポルティコを配するなど、全体のバランスに気品を感じる。どちらかというと、マレーシア側のプルリス州やケダ州にあるモスクのデザインに近いのではないかと思う。タイ側からみると辺境とも言える場所になるのだが、マレー文化圏側から見るとこのような端麗なデザインのモスクがこの街にあるのも頷ける。ミナレットは1本でアーチを嵌め込まれたバルコニーに小さなドームを載せ、正面から見ると奥側にある。内装は白く、ドーム外装に使われている同じ空色を差し色に使用している。ドーム内部に装飾はなく、白色の無地。ドーム台座と天井近くに連なった丸い窓は、青や黄色に彩られて礼拝堂の中を照らしていた。

Jamia Mosque -Bangalore (Bengaluru)-

Bangalore (Bengaluru), India : バンガロール (ベンガルール)・インド  バンガロール旧市街に拡がる巨大な市場街にあり、バンガロールには大きなモスクが多いがこのモスクも市内最大級の大きさを誇っている。真っ白な大理石を使用し1940年に完成したと言い、混沌とした広場に立ちはだかるようにマッシブな姿を見せる。3個の玉葱型のムガール様式のドームに、層を成すバルコニーや多弁形アーチと林立するミナレットが起伏に富んで続いており、モスクの周囲をぐるりと巡っても飽きさせない。モスク外部の喧騒とは打って変わり、足を踏み入れると静寂の空間が拡がっていた。シャンデリアの下がるドーム直下の礼拝室へは入る人も少なくミフラーブに備わった灯りのみがついていた。案内をしてくれたスタッフは、礼拝の呼びかけであるアザーンを唱えるムアッジンと呼ばれる担当の男性で、マイクやアンプなどの設備のある部屋も少しだけ見せてもらえることができた。

Sultan Abdul Samad Jamek Mosque

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  クアラルンプール市内の中心にあり、市の名前の語源になった二つの河の合流点に建つ。歴史的建築物としてもクアラルンプールのハイライトとして必ず紹介されている有名なモスクである。最近のマレーシアの観光スポットになるようなモスクらしい派手さはないのだが、周囲は英領マラヤ時代の建築が多く残る地域で訪れる価値は十分にある。1909年に建造され、クアラルンプールで最初の大型なモスクとも言われているのだが、比較的新しくも感じるのはおそらくクアラルンプール自体が英領時代に発展を遂げたからであろう。設計したイギリス人の名建築家であるArthur Benison Hubbackはムガール様式をベースにしたインド・サラセン様式にムーア様式を折衷させたデザインを取り入れることでも知られている。このモスクでも、玉葱型ドームの形状や3個のドームと両端の背の高い2本のミナレットとの構図がムガール調であったり、外壁にストライプ模様やアーチが馬蹄形のムーア調を組み合わせたりと、手の込んだデザインを見せている。レンガの色が薄くドームとミナレットがある真ん中の礼拝室のある建物が原型のモスクで、渡り廊下で繋がったレンガの色が濃い建物は増築部分となる。八角形のドームは植物文様の入った天井で塞がっているような状態でその内側を見ることはできなかった。ドーム台座に馬蹄形アーチをかたどった灯り取りの窓がはめ込まれていたり、ミフラーブも馬蹄形アーチ型をしているなど、内部も外装と同じような趣向のデザインを施されている。

Al-Yusraw Mosque

Bangkok, Thailand : バンコク・タイ  金色の装飾をあしらった重厚なアーチのエントランスと、天に向かい聳える2本のミナレットはまるでどこか中東の湾岸諸国にあるモスクに見えるのだが、このモスクが建つのはバンコク郊外のサパーンスーンと呼ばれる地区である。特に目立つのはやはりこのミナレットで、バンコクのモスクの中でも技巧的で一番の美しさではないかと思う。デザインは明らかにサウジアラビアのマディーナにある「預言者のモスク」のミナレットにインスパイアされており、非常に良く似たデザインである。ドームの濃いグリーンの色合いも頭頂部の金色の飾りも同じモスクの影響を受けているのであろう。モスク全体は大きく開けた駐車場側からほぼ真横を見れるのみで、上述の大きなメインエントランスは運河の流れぎりぎりに面している。その向こう岸は小学校の壁になっており真正面から俯瞰できる場所がないのが残念だ。アーチの奥はドームのあるメインの礼拝堂がある2階への階段がすぐに続いている。日常の礼拝はこの階段を使って2階に上がるのではなく、1階に礼拝室と出入り口が別にあり、そこで行われている。礼拝堂の両側は整然とアーチが並ぶテラスがあり、その軒下や天井は木材を使用している。ドーム内部は白く、外壁のアーチと揃ったストライプと金のカリグラフィーで飾られている。ドーム内部は白く、外壁のアーチと揃ったストライプと金のカリグラフィーで飾られている。

Khadriya Mosque

Bangalore (Bengaluru), India : バンガロール (ベンガルール)・インド  頭上に赤銅色の玉葱型ドームを頂くムガール様式のモスク。デリーの Jama Masjid のように、イーワーンと呼ばれる庭に向う大きな開口部と空間をもち、その前面は金のカリグラフィーで装飾されている。左右両翼に伸びるストライプのアーチのバルコニーの端には、2本のミナレットが建つ。格子模様で飾られ頭頂部には小さなドームが乗っているのが見える。案内をしてくれた親切な男性は話好きで、一通り内部と庭を案内してくれた後、近所のムスリムが集まる立ち飲みカフェへ連れて行ってくれた。1981年完成とのことで内部は白、黒、ベージュ、金、赤銅と色調が整えられて、ドーム内側とミフラーブ上部の文様は共通しているなど、現代風にまとまった雰囲気である。緑が濃く椰子の生い茂る美しい庭園にモスクは建っており、憩いの場となってたくさんの人々が樹の下のベンチでのんびりと寛いでいた。

Al-Zawawi Mosque

Muscat, Oman : マスカット・オマーン  真正面から望む三角の尖ったアーチが印象的なモスクで1985年に完成した。金のメインドームとバルコニーのついた重厚なミナレット、チョコレート色の扉、わずかにピンク色がかった薄い砂漠の砂のよう色合いの外壁と、バランス良くまとまっていてアラブのモスクらしいと思うデザインだ。大きく目立つドームは同じデザインで、庭にある清め(ウドゥ)のための洗い場の屋根にも置かれている。周囲はハイウェイ状の大通りに面して中層ビルの立ち並ぶビジネス街であるが、敷地は大きく取られ、庭園は整った芝生の地面に樹木が並んでいる。モスクの名称はオマーンの経済発展に努め亡くなった実業家のAbdul-Munim Al-Zawawi氏、一族の名であるZawawi家から取られており、その家族らの手によって建立された。

Salahuddin Mosque

Nakhon Si Thammarat, Thailand : ナコーンシータンマラート・タイ  マレーシアのクランタン州から当時のナコーンシータンマラート(リゴール)王国の首都であるこの街に移民したムスリム達が、原型となるモスクを建設したのが歴史の始まりとなる。1897年建造の原型のモスクは学校建設のために存続できず、新しい場所にモスクを建て直すのだがその場所はWat Tha Changという仏教寺院の跡地を使用していたため、法律上モスクとしての登録ができないままとなってしまったのだ。そこでラーマ9世国王へ請願し、王室の支払いにより土地の問題を解決し1954年に承認に至るという長い道程を経て今のモスクがあるという。国王は旅の途中にモスクに立ち寄り、ミンバルに座る姿を写したその当時の写真も残されている。モスクの外装はベージュ・茶とグレーの色調でまとめられ、壁に線の細い植物文様と、柱にストライプ、天井に花をアレンジした幾何学文様で飾られており、柔らかさとシャープさが相まって美しさを醸し出す。メインドームはムガール様式の影響を受けたと思われるが、半球でなく8角形の台座をもつため、面ごとに光を反射しまた影を造る。近隣のマレーシアの Zahir Mosque やインドネシアの Al-Mashun Grand Mosque と同じ技巧だ。深い緑色が南国の青空と白い雲に実に良く映える。礼拝堂から独立して立つミナレットは5段のバルコニーがあり、特徴的なデザインであるが、古い写真から後で付け足されたのがわかる。外側に階段があるが閉ざされてしまっており、2階は登ることはできなくなっていた。外から眺めると2階建て部分の壁のアーチからは空の向こうが見えるので、天井がなく飾りの壁と欄干で台座の高いドームを囲っているようである。1階の礼拝室の天井はフラットでドームは望めない。

Wilayah Mosque (Federal Territory Mosque)

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  絢爛なアラベスクで彩られたターコイズブルーの22個ものドームが幾重にも重なる、「連邦直轄領モスク」の名を冠するモスク。1万7千人を収容するマレーシア最大級の規模をもち、2000年に完成した。全体のデザインはトルコの Sultan Ahmed Mosque 、通称ブルーモスクをベースにインスパイアされたもので、特にメインドームとそれを支える半ドームのオスマン様式の構造と、あまりの大きさに全容が掴みにくいが門をくぐり壮大な中庭の向こうに立つモスクの配置にそれを感じる。ほかに、メインドームと半ドームの外装はイランのImam Mosque(王のモスク)からの黄色の植物文様をモチーフにし、オスマン様式のドーム外装は通常では地味な配色であるが、このモスクは艶やかな色彩である。回廊の馬蹄形アーチと多弁形アーチはモロッコからの、内装の木材の彫刻はマレーからの、四角の2本のミナレットはエジプトからのと多岐に渡るデザインソースを融合させている。また、中庭の正面に見据える礼拝堂へのメインエントランスの大きなアーチはインドのタージマハルのメインゲート(白い著名な廟ではなく、赤い門の建造物)がモチーフとされている。そのゲートと同じイメージで施された花柄の装飾はペイントではなくモザイクで造られている。Saray Designというカリグラフィーの彫刻やモスクの内外装を手掛ける職人グループの作品で、ほかにアブダビの Sheikh Zayed Grand Mosque の回廊の柱も手掛けており、このモスクでも見せる緻密で可憐な細工は必見だ。内部は結婚式場などもある複合施設になっており、中庭、その後ドームのある礼拝堂へとガイドによって導かれる。礼拝堂のドームは外装からもわかるようにトルコの伝統的なモスクと相似の構造で、色彩は全体に淡いクリーム色とブルーを組み合わせている。ドーム内側は植物のモチーフは使われず小さいのサブドームの外装で使われている幾何学文様を施されているのが見える。

Al-Akbar Mosque -Colombo-

Colombo, Sri Lanka : コロンボ・スリランカ  このモスクの建つSlave Islandは、コロンボ市内のフォート地区からベイラ湖の運河を隔てた半島状の地区であり、長い植民地時代に連れてきた奴隷達を住まわせていたことからそう呼ばれている。ポルトガル時代からオランダ時代を経て、イギリス時代となる1859年にTalep Akbarと呼ばれた商人によって建立された。正面真ん中の大きなアーチ上部に欄干に隠れて上手く見えないがメインドームあり、バルコニー型の装飾付いた4本のミナレットがそれを囲んでいる。ベージュ色の重厚なコロニアル建築に聳えるシャープなミナレットのバランスが美しい。内部は思いのほか広く、いくつかの礼拝室があった。訪問時は広い駐車場にたくさんの車が停まっており、そのすべてではないであろうがたくさんの人が訪れていた。メインドームは一度入り口から入った後に廊下を伝い、見上げることができるが礼拝室上ではなく左右からの廊下と廊下が交わるアーチに囲まれた狭い真っ白な空間にある。然して重要な空間ではないのか、短い時間ではあったが滞在中に誰も来ることはなかった。

Mukaram Mosque (Bang Tao Mosque)

Phuket, Thailand : プーケット・タイ  タイの有数のリゾートであるプーケット島にある、プーケット県内では最大級のモスク。敷地は広く取られており、庭から正面を見ると背後の緑濃い山並みに抱かれ、月の紋章が乗ったダークグリーンのメインドーム、台座の隅に4個のサブドーム、ドームの載ったバルコニー付きの4本のミナレットと、美しいバランスをもった配置であるのがわかる。建物はほぼ長方形で礼拝堂は道路に平行に建ち、ミフラーブのあるキブラ壁は海岸の方角へ向く。1966年に建てられ、その後改装されている。朝に訪れたのだが、モスク前の路上にはハラールの軽食を売る露天が並んでいて地元の人々が集まっており、近くに住んでいるというムスリムの青年から日本語で話しかけられるという出来事があり驚いた。礼拝堂の内部は2階建てで、1階から丸く切り取られた吹き抜けのあるバルコニー越しに白いドーム内側を見上げることができる。