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Showing posts from December, 2022

Al-Islah Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  モスクはシンガポールのニュータウン、Punggol地区の公営集合住宅(HDBフラット)群の中に忽然と現れる。Punggolは元々マレー系が入植した村から始まっており、古いモスクがあったのだが取り壊されて、2015年にこの新しいモスクが完成した。緑に囲まれていて全貌がつかみにくいのだが、一番大きな礼拝堂、教育部門と全体の構造から少し斜めに角度がついた管理部門の3棟が繋がっている。最近のシンガポールで多く見かける現代イスラーム建築のモスクと共通して、ミナレットは象徴としての細い尖塔型のデザインである。このような現代風のモスクではドームは最近のシンガポールでは省かれていることが多いのだが、実はここには従来の天井を見上げるようなモスクのドームとは違う、こちらも象徴としてのドームが屋上にあってそれが見どころでもある。シンガポールの建築事務所であるFormwerkz Architectsによって設計された。モスクは「開放性」を銘打っており、物理的にも開放的で広く取られたエントランスからから障壁なくまっすぐに礼拝の方角へ向かう。礼拝堂は格子のスクリーンを通し光が差し風が流れて、屋外と室内の境界を感じさせない。一番奥のキブラ壁にはカリグラフィーが飾られ、上方は高く吹抜けになっていて空気の流れを作る換気塔のような役目を果たしている。ドームへは、1階からエレベータを上り教育部門の棟から礼拝堂の上層にかかる連絡通路を渡って向かう。礼拝堂の屋上が公園のようなコミュニケーションスペースになっていて、その1区画となる。中にはベンチがあり、その上に屋根状のドームがあるのだが、完全に覆っている構造ではない。ここも1階と同じように格子状にデザインされて、光や風が内部を通ることができる。今までモスクへ行くたびに見上げていたドームではなく、その中に入ることに意味を持たせているのであると思う。

Cut Meutia Mosque

Jakarta, Indonesia : ジャカルタ・インドネシア  旧オランダ植民地時代のジャカルタがバタビアと呼ばれていた時代に造られたダッチコロニアル建築で、そのオフィスビルをモスクへ転用したという変わり種のモスクである。そのため、一見はその象徴となるような半球状のドームやミナレットはなくモスクにはなかなか見えないが、屋根の頭頂部に月の紋章と四隅の柱には玉葱型の装飾がついていることに気がつく。設計はオランダ人建築家のPieter Adriaan Jacobus Moojenで、1912年に完成した。元々は現在のモスクがあるGondangdia地区の開発のために設立されたMoojen本人の建築事務所であった。当時の社名のN.V. de Bouwploegの名は建物側面の外壁に「NVDE BOWPLO」とおそらく長い名称を頭字語として簡素に変化させたのではないかと思うが、書き残されている。吹抜けになった高い天井はデザインや採光だけでなく、中東の湾岸諸国都市で見られる外気を取り入れ空気を循環させる採風の効果もあるそうだ。正面から見ると段になった礼拝堂の入り口と2階への階段が左右対称にあり、その上に2階の外バルコニー、奥に塔状になった高窓のある吹き抜け上の屋根が続く。室内は吹き抜けを見上げると、カリグラフィーの入った2階回廊のアーチとバルコニー、シャンデリア、高窓と格子状の天井と続く。様々な要素が一体となって飛び込んでくるのだが、手すりと天井は同じクリーム色でまとまっていて目に眩しくない。バルコニー正面が落ち込んでいるのはその構造から想像できるように、1階へ向かう階段を取り除いてしまったからである。このモスクの礼拝堂での最大の特徴は、オフィスビルを転用したためにメッカの方角に向かう礼拝の軸が45度ずれてしまっていることだ。ミフラーブ様の凹みと説法台となるミンバルは建物の構造に合わせ入口から見て真正面にあるのだが、実際の礼拝の方向は建物に対して斜めのため、絨毯のラインはキブラを示す壁はなくともメッカへ向けて合わせてある。礼拝は礼拝堂の構造に対して斜めの方向に向うのである。青銅色の角型ドーム状の屋根、白い壁、2階のオレンジ色の瓦屋根、アーチの窓やバルコニーの装飾、とバランスの良い端正な造りのコロニアル建築と、改装された内部のイスラームの意匠の融合は見事であると感じ