Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール
モスクはシンガポールのニュータウン、Punggol地区の公営集合住宅(HDBフラット)群の中に忽然と現れる。Punggolは元々マレー系が入植した村から始まっており、古いモスクがあったのだが取り壊されて、2015年にこの新しいモスクが完成した。緑に囲まれていて全貌がつかみにくいのだが、一番大きな礼拝堂、教育部門と全体の構造から少し斜めに角度がついた管理部門の3棟が繋がっている。最近のシンガポールで多く見かける現代イスラーム建築のモスクと共通して、ミナレットは象徴としての細い尖塔型のデザインである。このような現代風のモスクではドームは最近のシンガポールでは省かれていることが多いのだが、実はここには従来の天井を見上げるようなモスクのドームとは違う、こちらも象徴としてのドームが屋上にあってそれが見どころでもある。シンガポールの建築事務所であるFormwerkz Architectsによって設計された。モスクは「開放性」を銘打っており、物理的にも開放的で広く取られたエントランスからから障壁なくまっすぐに礼拝の方角へ向かう。礼拝堂は格子のスクリーンを通し光が差し風が流れて、屋外と室内の境界を感じさせない。一番奥のキブラ壁にはカリグラフィーが飾られ、上方は高く吹抜けになっていて空気の流れを作る換気塔のような役目を果たしている。ドームへは、1階からエレベータを上り教育部門の棟から礼拝堂の上層にかかる連絡通路を渡って向かう。礼拝堂の屋上が公園のようなコミュニケーションスペースになっていて、その1区画となる。中にはベンチがあり、その上に屋根状のドームがあるのだが、完全に覆っている構造ではない。ここも1階と同じように格子状にデザインされて、光や風が内部を通ることができる。今までモスクへ行くたびに見上げていたドームではなく、その中に入ることに意味を持たせているのであると思う。
ロケーション:MRTのNorth East LineのPunggol駅から徒歩で10分。
訪問:ドームの見学はガイドが必要なようで、1階外から入るオフィスでスタッフへお願いした。常時見学可能なのか好意であったかどうかは不明。1階の一般の礼拝堂はガイドは不要で訪問可能。
撮影:外観・内装ともに制限なし。ドームはモスクの構造上、礼拝堂からは見えないが上記の通り屋上で撮影可能。