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Showing posts from December, 2020

Salahuddin Mosque

Nakhon Si Thammarat, Thailand : ナコーンシータンマラート・タイ  マレーシアのクランタン州から当時のナコーンシータンマラート(リゴール)王国の首都であるこの街に移民したムスリム達が、原型となるモスクを建設したのが歴史の始まりとなる。1897年建造の原型のモスクは学校建設のために存続できず、新しい場所にモスクを建て直すのだがその場所はWat Tha Changという仏教寺院の跡地を使用していたため、法律上モスクとしての登録ができないままとなってしまったのだ。そこでラーマ9世国王へ請願し、王室の支払いにより土地の問題を解決し1954年に承認に至るという長い道程を経て今のモスクがあるという。国王は旅の途中にモスクに立ち寄り、ミンバルに座る姿を写したその当時の写真も残されている。モスクの外装はベージュ・茶とグレーの色調でまとめられ、壁に線の細い植物文様と、柱にストライプ、天井に花をアレンジした幾何学文様で飾られており、柔らかさとシャープさが相まって美しさを醸し出す。メインドームはムガール様式の影響を受けたと思われるが、半球でなく8角形の台座をもつため、面ごとに光を反射しまた影を造る。近隣のマレーシアの Zahir Mosque やインドネシアの Al-Mashun Grand Mosque と同じ技巧だ。深い緑色が南国の青空と白い雲に実に良く映える。礼拝堂から独立して立つミナレットは5段のバルコニーがあり、特徴的なデザインであるが、古い写真から後で付け足されたのがわかる。外側に階段があるが閉ざされてしまっており、2階は登ることはできなくなっていた。外から眺めると2階建て部分の壁のアーチからは空の向こうが見えるので、天井がなく飾りの壁と欄干で台座の高いドームを囲っているようである。1階の礼拝室の天井はフラットでドームは望めない。

Wilayah Mosque (Federal Territory Mosque)

Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア  絢爛なアラベスクで彩られたターコイズブルーの22個ものドームが幾重にも重なる、「連邦直轄領モスク」の名を冠するモスク。1万7千人を収容するマレーシア最大級の規模をもち、2000年に完成した。全体のデザインはトルコの Sultan Ahmed Mosque 、通称ブルーモスクをベースにインスパイアされたもので、特にメインドームとそれを支える半ドームのオスマン様式の構造と、あまりの大きさに全容が掴みにくいが門をくぐり壮大な中庭の向こうに立つモスクの配置にそれを感じる。ほかに、メインドームと半ドームの外装はイランのImam Mosque(王のモスク)からの黄色の植物文様をモチーフにし、オスマン様式のドーム外装は通常では地味な配色であるが、このモスクは艶やかな色彩である。回廊の馬蹄形アーチと多弁形アーチはモロッコからの、内装の木材の彫刻はマレーからの、四角の2本のミナレットはエジプトからのと多岐に渡るデザインソースを融合させている。また、中庭の正面に見据える礼拝堂へのメインエントランスの大きなアーチはインドのタージマハルのメインゲート(白い著名な廟ではなく、赤い門の建造物)がモチーフとされている。そのゲートと同じイメージで施された花柄の装飾はペイントではなくモザイクで造られている。Saray Designというカリグラフィーの彫刻やモスクの内外装を手掛ける職人グループの作品で、ほかにアブダビの Sheikh Zayed Grand Mosque の回廊の柱も手掛けており、このモスクでも見せる緻密で可憐な細工は必見だ。内部は結婚式場などもある複合施設になっており、中庭、その後ドームのある礼拝堂へとガイドによって導かれる。礼拝堂のドームは外装からもわかるようにトルコの伝統的なモスクと相似の構造で、色彩は全体に淡いクリーム色とブルーを組み合わせている。ドーム内側は植物のモチーフは使われず小さいのサブドームの外装で使われている幾何学文様を施されているのが見える。

Al-Akbar Mosque -Colombo-

Colombo, Sri Lanka : コロンボ・スリランカ  このモスクの建つSlave Islandは、コロンボ市内のフォート地区からベイラ湖の運河を隔てた半島状の地区であり、長い植民地時代に連れてきた奴隷達を住まわせていたことからそう呼ばれている。ポルトガル時代からオランダ時代を経て、イギリス時代となる1859年にTalep Akbarと呼ばれた商人によって建立された。正面真ん中の大きなアーチ上部に欄干に隠れて上手く見えないがメインドームあり、バルコニー型の装飾付いた4本のミナレットがそれを囲んでいる。ベージュ色の重厚なコロニアル建築に聳えるシャープなミナレットのバランスが美しい。内部は思いのほか広く、いくつかの礼拝室があった。訪問時は広い駐車場にたくさんの車が停まっており、そのすべてではないであろうがたくさんの人が訪れていた。メインドームは一度入り口から入った後に廊下を伝い、見上げることができるが礼拝室上ではなく左右からの廊下と廊下が交わるアーチに囲まれた狭い真っ白な空間にある。然して重要な空間ではないのか、短い時間ではあったが滞在中に誰も来ることはなかった。

Mukaram Mosque (Bang Tao Mosque)

Phuket, Thailand : プーケット・タイ  タイの有数のリゾートであるプーケット島にある、プーケット県内では最大級のモスク。敷地は広く取られており、庭から正面を見ると背後の緑濃い山並みに抱かれ、月の紋章が乗ったダークグリーンのメインドーム、台座の隅に4個のサブドーム、ドームの載ったバルコニー付きの4本のミナレットと、美しいバランスをもった配置であるのがわかる。建物はほぼ長方形で礼拝堂は道路に平行に建ち、ミフラーブのあるキブラ壁は海岸の方角へ向く。1966年に建てられ、その後改装されている。朝に訪れたのだが、モスク前の路上にはハラールの軽食を売る露天が並んでいて地元の人々が集まっており、近くに住んでいるというムスリムの青年から日本語で話しかけられるという出来事があり驚いた。礼拝堂の内部は2階建てで、1階から丸く切り取られた吹き抜けのあるバルコニー越しに白いドーム内側を見上げることができる。

Muhyiddin Juma Mosque (Vizhinjam Mosque)

Kovalam, India : コヴァラム・インド  コヴァラム海岸沿いの入り江の突端にあり、モスクはインド洋と湾の両側を見渡せる高台に建っている。なぜかそのさらに突端側のすぐ隣にも、もう一つ少し小さな別のモスクが建っているという不思議な立地である。コヴァラムビーチで有名なランドマークの灯台であるVizhinjam Lighthouseを越えた漁村で、モスクの庭からは湾に沿ってたくさんの船が浜辺に並ぶのが見える。付近には小さな地元民向けの海鮮料理店などもあり、車で高台からの景色を見に来たインド人観光客らが幾組もいた。モスクはインド、スリランカ、ミャンマー辺りで見かける小さな商店が一体となった建物で、商店のある1階道路側からは階段を登り、門をくぐると庭になる。訪れた時間にはモスク2階の四角の窓が並ぶ部屋で授業があり、制服を着た子供達がたくさん入って来た。門に書かれた「Dargah Sharif」はローマ字転写の表記に揺れがあるが、インド国内で一般的にいうイスラーム神秘主義(スーフィズム)の廟を意味するのと思う。塗装は良くメンテナンスされていて、時折塗り替えられているのだが、色の組み合わせをその都度変えてしまっている。付近の街の名前から「Vizhinjam Mosque」とも呼ばれ、また商店の壁には「Muhiyideen」と書いてあったが一般的にはMuhyiddin Juma Mosqueと呼ばれているらしいので、それに倣った。

Tengku Kelana Indian Muslim Mosque

Klang, Malaysia : クラン・マレーシア  インド人街の真ん中にあり、繁華街となった大通り沿いから見る表側は平面的だが、どっしりとした3重のバルコニーのついたミナレットが目立つ。正面玄関は3つの多弁形アーチをもち、大きな真ん中の開口部は地面のレベルからすぐに階段となっている。モスクの前だけは歩道は広く取ってあるが、商店街の通りの入り口から2階のホールを経てガラスドアで区切られたドームのある礼拝堂へ繋がっている。モスク横側に回るとテラスと吹き抜けになった構造を覗け、壁や門にイスラーム建築の立体的な技巧が伺える。メインドームはターコイズグリーンに金の菱模様が入っている。金色の塗装は大部分が剥げてしまい、ほとんど濃い緑色になっている。ドームを囲むミナレットは等間隔に4本あるが、ドームはその中心に無く大通り側から見ると少し奥に配置されている。モスクの原型は、南インドのタミルナードゥ州からのムスリム移民コミュニティによって礼拝所が造られたことから始まり、やがて1910年にモスクが完成した。その後解体され、1973年になって新しいモスクができ、さらに2009年に3階建ての現在の姿となった。礼拝堂の天井は八角形のドーム台座の上段に窓、下段に星の文様を薄いクリーム色のムカルナスで造り、小さな半ドーム状の飾りを繰り返すものだ。ドーム内側も同様に装飾されている。星はブルーの五芒星(いわゆる、星)・六芒星(ヘキサグラム)の両方からなるもので、特に六芒星はユダヤ教のイメージがあるがイスラーム建築でも使用されている。たくさんの六芒星を際立たせてドームに使う例はあまり見たことがないのだが、マレーシアではほかにZahir Mosqueでアーチ部分の装飾に使われてもいる。

Meera Maccam Mosque

Kandy, Sri Lanka : キャンディ・スリランカ  キャンディ市内の商業地区の端、喧騒が途切れた辺りに建つ。敷地は道路から少し高台になった土地にあるため、街を抜けてモスクに着くと階段からモスクを見上げることになる。モスクに上がる階段真正面は線路が走っており、モスクに着くとちょうど、列車が走り抜けて行った。1824年に建造されたモスクの建物は長方形で、長い辺の側にミナレットやドームを模した装飾が繰り返し並ぶ特徴的なファサードをもつ。メインのミナレットやドームはなく、平面的な装飾を建物に貼り付けているような構造だ。 過去の資料を見ると、訪問時は白を基調に緑のアクセントを入れた塗装であったが、白とオレンジ、ほかにも緑の濃淡の組み合わせと、時折まったく違う色に塗り替えられている。訪れた時点では外壁の白さはくっきりしており、塗り替えられてあまり時間は経っていないようだ。内部は木製の扉とステンドグラスのアーチでいくつかの部屋で区切られており、立ち並ぶ窓からの柔らかい光に照らされていた。