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Sayed Al-Shuhada Mosque

Madinah, Saudi Arabia : マディーナ・サウジアラビア  Uhud Mountainを背後に建つ巨大なモスクで15,000人もの礼拝者を収容する。2本のミナレットに1個のドーム、ほぼ長方形の端正なアラブ様式のモスクであるが、雄大な赤茶色の岩山の崖によく映える。この地は「Uhudの戦い」と呼ばれる、マッカでの布教の迫害から逃れマディーナに移り住んだムハンマドと、敵対しそれを追うAbu Sufyan率いるマッカの軍が激しく戦いあった戦地の史跡でもある。そのため、モスク自体は近年2017年に新しく造られたものであるが、多数の礼拝者が訪れる聖地となった。ムハンマドらの率いるイスラーム軍はこの戦いでは負けてしまうのであるが、その後も戦いを繰り返し最後にはイスラーム軍はマッカへ侵攻し、勝利を遂げることになる。そして、降伏したAbu Sufyanはマッカでイスラームへ帰依することになるという逸話も残った。モスクの傍には戦いの殉教者を弔う墓地と、前にはArchers' HillもしくはJabal Al-Rumahと呼ばれるムハンマドが弓兵を配置したという小高い岩の丘がある。その丘をモスクを訪れた礼拝者達が登り、戦地を眺め記念撮影をしていた。

Mukdahan Central Mosque

Mukdahan, Thailand : ムクダーハーン・タイ  タイ東北のメコン川沿いにある中都市ムクダーハーンにあるこの県内で初めて、唯一のモスクである。街はタイ東北のイーサーンと呼ばれる地域にあり、県内の人口は仏教徒がほぼ全体を占めている。それに続いて少数のキリスト教徒と僅かなムスリムがいるが、やはりモスクの建設への反対運動があり紆余曲折の後、2019年に完成した。玉葱型のグリーンのドームに2本のドームの載った角柱型のミナレット、尖塔アーチのポルティコと端正なデザインでタイ南部のムスリムの多い地域にもありそうな雰囲気である。なぜここにと思って調べてみると、メコン川対岸の経済特区のあるラオス・サワンナケートへのゲートウェイでもある街なのでムスリム投資家の便宜を図りたいとのことのようである。東北は前述の通りムスリムは少なく、県内にモスクは無かったため、礼拝場所としてそれを集約できることもあるだろう。

Jaidah Mosque

Doha, Qatar : ドーハ・カタール  ドーハ市内のやや郊外の住宅地に位置する、地元で愛されるような何気ないモスクであるのだが、実にフォトジェニックな水場のあるミナレットをもつ。モスクは2004年に完成、アラブ様式で1本のミナレットとメインドーム、それに中庭側の両脇に小さな2個のサブドームがあるシンプルなデザインである。特徴のある水場は目の前の通りからすぐに見え、赤・黄・緑、それにターコイズブルーの小さなタイルが色とりどりに並べられ、外側を同じターコイズブルーに金のカリグラフィーを描いた大きめのタイルが囲んでいる。少し残念なのは小さなタイルの一部が剥がれ落ちてしまっているのではあるが、それはご愛嬌。トルコ文化圏で見かけるような公共の飲用の水なのか手を洗うだけの場所なのかよくわからなかったが、礼拝前の清め(ウドゥ)の水場は中庭にきちんとある。モスクはコの字で囲まれるように3本の通りに面して建っていて、水場のあるミナレットとミフラーブのある裏側には小さなエントランスがあり、そのアーチをくぐると中庭に出る。中庭を区切る飾りのアーチを抜けると礼拝堂のドア、その向かいにはもう1本の通りへ出る大きな正門がある。デザインは最近ではAl Thumama Stadiumやカタール最大級の Imam Muhammad Ibn Abd Al-Wahhab Mosque(State Grand Mosque) などを設計した、カタールの建築事務所のAEB:Arab Engineering Bureauによるものある。アラビア半島だけでなく各地で大きなプロジェクトを建造しているが、このような無名といってはなんであるが小さなモスクも手掛けている。CEOでチーフの建築家はIbrahim M. Jaidah氏であるが、モスクの名前はJaidah Mosqueと名付けられている。

KLIA Sultan Abdul Samad Mosque

Selangor, Malaysia : スランゴール・マレーシア  クアラルンプール国際空港(KLIA)と市内を結ぶバスに乗るとちらりと見えて過ぎ去っていくのだが、際立った配色の大きなドームが記憶に残っていた。空港施設の一部として造られた正に空港モスクとしての立ち位置なのであるが、空港のターミナルからはだいぶ遠く離れていて、KL市内からは車で気軽に訪れる場所でもなくどんな人が行くのであろうかと思い訪ねてみることにした。モスクに着いた時点では、駐車場には車がたくさん止まっており、また大勢のアラブ系観光客の礼拝者が団体でモスクのエントランスにいて、観光バスも何台か止まっていた。車は地元の礼拝者か空港関係者であろうか、それ以外にも観光ツアーで自国への帰路途中に、礼拝の立ち寄りに利用されているようである。完成は2000年、名称はスランゴール州の故第4代スルタンの名から取られた。花が咲き乱れる庭園のような庭から、両端に2本のミナレット、正面のエントランス上にサブドームと、礼拝堂頭上に大きなメインドームが見える。メインドームは明かり取りのガラスが黄色い植物文様で縁取られ、頭頂部はターコイズの色の格子のパターンで飾られており、その台座は正方形をずらして重ねたようなイスラーム式の八芒星をしている。エントランスを入りそれを抜けると、円弧型に切り取られた空と屋根のついた回廊が突然現れる。中庭の向こうに先ほど外庭から見たメインドームがまたもう一度見え、視覚的な効果としても面白いのだが、実は空から見ると前述のドーム台座の「星」と弧の「月」が組み合わさったデザインになっている。航空機に乗って上空から眺めた姿をイメージしていたのだろうか。ドームの明かり取りの内側はステンドグラスになっており、透過するカラフルな光が白い荘厳な礼拝堂を鮮やかに照らしていた。

King Fahad Mosque

Jeddah, Saudi Arabia : ジェッダ・サウジアラビア  サウジアラビアや他の湾岸諸国では見かけることの少ないモロッコの建築様式でデザインされており、特に角柱型の2本のミナレットとピラミッド型の瓦屋根が目立つ特徴的なモスクである。他にも外壁の装飾にモロッコの伝統的なモスクで見られる多弁形アーチやエントランスの幾何学文様を彫り込まれた馬蹄形アーチ、幾種類かの繰り返す幾何学パターンで壁面を網目のように覆う「Sebka」と呼ばれる近辺では使われない装飾を用いている。ピラミッド型屋根をもつポーチにあるエントランスの木製のドアを開けると、正方形の中庭が広がる。それを四角く囲むアーチの回廊があり、その奥に更に礼拝堂への扉がある。アーチは細かい多弁形で、アーチ内部の曲線の面部分にも美しい装飾が施されているのが特徴だ。礼拝堂内部の装飾も、外装と同じく巨大な多弁形アーチと白い幾何学文様の壁に囲まれ、荘厳である。メインドームは外観では前述のピラミッド型の屋根としか見えないが、内部から見上げると明かり取りの窓のついた半球状になっていた。

Al-Azhar Great Mosque

Jakarta, Indonesia : ジャカルタ・インドネシア  アラブ様式でデザインされ、中心に玉葱型のメインドーム、正面向かって右に1本の頭頂部にドームの飾りをつけたミナレット、ミナレットの無い左側には飾りの小さなドームがある。また、メインドームは四角形の台座に乗り、角に立つ4本の先の尖った細い塔で囲まれている。際立った装飾は殆どない、シンプルな外観である。礼拝堂は2階にあって、正面と左右の重厚な壁のある階段を使って上る。階下は多目的ホールがあり、訪問時は結婚式をしていた。完成したのは1958年と古いがメンテナンスされており、青空に純白の美しいドームが映える。教育財団が設立者であるため、モスクも教育機関としての機能も合わせ持っており、現在、モスクの敷地には大学や高校が立ち並んでいる。礼拝堂は1層で、アーチ型の窓が4方に続く。全体に緑色と茶色を基調とした落ち着いた内装だ。ドームはすぐ上に見上げることができ、淡い緑色で彩られ、明かり取りの窓から入る光がカリグラフィーを照らす。

Hamad International Airport Mosque

Doha, Qatar : ドーハ・カタール  ドーハ空港ターミナルの真正面に、礼拝堂全体が半球状のドームになったモスクが建っている。ドーム全体は3角形の鏡面状のガラスパネルが組み合わされており、宝石にように角度ごとに太陽を明度の異なったブルーに反射させている。空港の旅客ターミナルビルの屋根は大きなうねりのなった起伏があり、波のようにダイナミックにエアサイドからランドサイドののファサードに向かって屋根が切れているのだが、その波の向こうにこのモスクがある。空港全体のデザインは建築物も景観も全てアメリカの建築事務所であるHOKが手掛けており、モスクは水滴をイメージしたものであるそうだ。落ちていく水滴というよりも、表面張力で球になった水のイメージなのだろうか。モスクの広場は大きく取られていて、空港を訪れた旅行者だけでなく、空港の関係者もたくさん礼拝に訪れていた。モスクの周囲は池がぐるりと囲っていて、礼拝堂の壁とそれを覆うパネルの隙間が一周する回廊になっていて歩くことができる。回廊から見上げると3角形のアルミのパネルが組み上げられていて、そこから離れて遠くからドームのガラスをよく見ると濃淡のパターンがあり、全ての光が内部へ透過しているのではないことがわかる。内部へは入れなかったのだが、モスクのエントランスから切り取られた一部分を見上げると、壁にあたる部分と屋根となるドーム部分の間にカリグラフィーがあり、およそのドームのパターンは想像できるが、やはり全体は見てみたかったと思う。

Al-Masjid An-Nabawi (Prophet's Mosque)

Madinah, Saudi Arabia : マディーナ・サウジアラビア  ムスリムの聖地として1番目となるのがマッカ(メッカ)のAl-Masjid Al-Haramであり、2番目の聖地となるのがこのAl-Masjid An-Nabawiである。西暦では622年、預言者であるムハンマドがモスクとしてはイスラーム史上で2番目に建てたものだ(最初のモスクは同じマディーナの Quba Mosque とされる)。ムハンマドの安息の地とされ、本人ともう二人の墓があるために霊廟になっており、Prophet's Mosque、日本語では「預言者のモスク」とも呼ばれる。多神教がアラビア土着の宗教として存在していた時代に、イスラームの預言者としてマッカにいたムハンマドらが布教への迫害を避けてこの地に移り、イスラームのコミュニティを作ったところからこのモスクの歴史が始まる。元々は住居であったところで、最初は簡素な小さいモスクであったが、改装、修復、拡張に拡張を重ね巨大なモスクへ変貌した。現在の収容人数は100万人という規模で、周囲は聖地への礼拝者のためにホテルが林立し、マディーナの街はこの巨大なモスクを中心に環状の道路で囲むように造られている。ミナレットは10本あり1本を除いて、台座から正方形・8角形・円柱となる段階ごとに形状が変化し幾何学文様を彫り込んだマムルーク様式のデザインで改築され、それを更に模倣したモスクも多い。うち他より高さの低い1本だけがBab As-Salam Minaretと呼ばれ、先端がドームと同じく緑色に塗られた鉛筆型のオスマン様式を今でも残している。主なドームは2個あり、ムハンマドの霊廟上に緑色に塗られた大きなドームが、その隣に銀色に輝く少し小さなドームが配されている。また広大な中庭には礼拝者の暑さ避けのために巨大な傘型の覆いが立ち並ぶ。1日5回の礼拝の時間になると、「万」の規模の礼拝者が集まり広い中庭を埋め尽くす様子は圧巻で、まさに息を吞むばかりだ。

Haji Muhammad Salleh Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  シンガポールの高層ビルが立ち並ぶビジネス街Shenton Wayが、巨大なコンテナ埠頭の手前でKeppel Rdにぶつかる辺りに小さな山がある。正確には小高い丘のようなものなのだが、Mount Palmerと呼ばれるこの山はシンガポールの市街地が途切れたはずれに突然現れる。それだけでなく、麓にモスクとその上に霊廟が建立されているという商業都市の都会ではなさそうな珍しい場所である。全体でHaji Muhammad Salleh Mosqueとは呼ばれるが、ドームのあるモスクに見えるにぶく光る建物が廟で、崖下のような場所に建つ白い建物がモスクである。隣には高速道路が走っており、山頂が同じくらいの高さになるようだ。モスクのある麓から廟へ行くには長い階段を上り、開け放れたドアをくぐると小さな何もない小部屋があり、そのカーテンの奥に廟と頭上にドームが見える。山頂で祀られているのは、Habib Nohと呼ばれたシンガポールのムスリムコミュニティ間で信仰される1866年に亡くなった聖人のひとり。モスクの名であるHaji Muhammad Sallehはモスクの原型を造ったHabib Nohの友人の名前である。モスクの礼拝堂には時間によるのであろう、人はいなかったが、この小さな廟には沢山の人が座り込んで、色とりどりの蘭の花で飾れれた聖人に祈りを捧げていた。モスク側にはドームがなく、屋根を支える白い柱と柱頭の金色の装飾に木製の梁と筋交いの武骨さが相まって凛とした印象だ。

Al-Hasan Mosque

Muharraq, Bahrain : ムハラク・バーレーン  バーレーンでは珍しいブルーのドームと尖った鉛筆型のミナレットを持つオスマン様式のモスク。海が近く、ミナレットを舞うのは中東のモスクといえばハトであるが、ここではカモメという島国バーレーンならではの姿を望む。市内のAl-Fateh Mosqueに続き公式に開放されたモスクであり、限定された曜日に異教徒や観光客の受け入れをしている。モスクは2018年に完成し、訪問の受け入れを開始したのは2022年からであるが、担当のガイドによって内部を丁寧に案内をしてもらえる。設計はトルコ人建築家によるもので、伝統的なオスマン様式をモダンにアレンジしている。小ドームのある回廊部分の屋根が途切れ、テント状の屋根が張られている隙間から空が見えるのはなかなか格好いい。建物は大きくL字形に建っており正面の礼拝堂と向かって右側に事務所棟がある。礼拝堂のドアをくぐると、天井の低い礼拝室が先にあり、通常の少人数の礼拝はこちらで行われるとのこと。訪問当日もその奥にある金曜日だけに開放される大ドームのあるメインの礼拝堂とは区切られていたが、見学をすることができた。シャンデリアや絨毯などの内装もトルコのモスクと寸分たがわないが、ミフラーブはエジプトの工芸家による作品である。バーレーンで最大の大きさであるが、その緻密なモザイクの幾何学文様を目の前まで近づいて見ることができる。