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Haydar Pasha Mosque

Lefkosa, Northern Cyprus : レフコシャ・北キプロス  垂直の高さのある控え壁(バットレス)と細長い尖頭アーチ窓をもつゴシック様式のモスクであったが、現在はすでにモスクとして使われていない。もとになったのは14世紀に建造されたSaint Catherine's Churchと呼ばれるゴシック教会であり、キプロスへ侵攻したオスマン帝国軍によってミナレットを付け足されモスクとして1570年に転用された。長くモスクとして使われておらず、近年の修復の後、現在はHP Galleryとも呼ばれる展示スペースとして使用されている。3枚の扉のうち南の正門側にある扉には、今でも当時の緻密な彫刻や紋章の細工が残っている。内部は残念ながら見学できず。名称は現在もモスクの名のままで通用しているため、そのままタイトルとした。

King Faisal Mosque

Sharjah, United Arab Emirates : シャールジャ・アラブ首長国連邦  シャールジャ市街の基点となるランドマークのような存在のモスクで、シャールジャの景色として紹介されているのをよく見かける。地域最大級の大きさを誇り、サウンジアラビアの王の財団King Faisal Foundationによって建設され1987年に完成した。Al Ittihad Square Parkと呼ばれる大きな公園に隣接しており、全貌が遠くからでも窺える。約17,000人を収容することができ、内部には図書館も併設されている。2本のミナレットと1個の装飾のない卵型のシンプルなドームをもち、モスク全体が3段で造られている。コーナーのシャープなステップ状のデザイン、そしてファサードと両サイドのカーブを帯びて斜めに突き出たカンチレバー構造の日除けとアーチが特徴的である。

Al-Khamis Mosque

Manama, Bahrain : マナーマ・バーレーン  バーレーン最古のモスクといわれ、名称はモスクとのままであるが現在はすでに礼拝の場としての機能はなく歴史建築物として保存されている。敷地はモスクの遺構とその紹介をする資料館となるビジターセンターで構成されている。名称のKhamisは木曜日という意味で、モスク近くで木曜日に開かれていた市場から取られた。モスクの原型は8世紀初頭に建造され、11世紀ごろに改修、その後にミナレットを付け足した。現在は2本のミナレットと、円柱とそれに載るアーチが残されているのみ。クルアーンを刻まれたミフラーブの石碑はセンター内部で保存されている。2本の高さ約21mのミナレットは小さなドームを頭頂部にもち、バルコニーが付属している。ミナレットは東西わずかながら高さが異なり、建てられたのも同時でなく、最初の1本は12世紀に、その後14世紀にもう1本が追加された。その後もミナレットやモスクに何度かの修復があり、現在に至る。

Said Bin Taimur Mosque

Muscat, Oman : マスカット・オマーン  赤銅色の多数のドームをもつモスクで、オスマン様式で1999年に建造された。メインドームは2個の半ドームで支えられ、礼拝堂にはミフラーブをカバーするものも合わせ大小14個ものドームで飾られている。中庭の回廊にも16個の小さなドームが配され、イスタンブールの Sultan Ahmed Mosque へのオマージュを感じるデザインだ。50mの高さの2本のミナレットも、鍾乳石飾りのついた2段のバルコニーをもつ伝統的なオスマン様式の筆型で造られている。シャープに尖った頭頂部もドームと同じ赤銅色に塗られており青空に映えるデザインだ。モスクの名は現国王Qaboos bin Saidの父、亡きSultan Said bin Taimurの名を冠している。

Bang Uthit Mosque

Bangkok, Thailand : バンコク・タイ  チャオプラヤー川沿いの古い船着き場と倉庫街をリニューアルした観光スポットであるAsiatique The Riverfrontの前に、小さなモスクが建っている。一見、バンコク下町のムスリム街区で時折見かける大きくはない普通のモスクだが、エントランスと内装にバンコクの多くのモスクとは違う特徴がある。チャオプラヤー川沿いのこの地区周辺は古くから河川を使った貿易の拠点となっており、ほかにも外交施設や教会などの歴史的建築物が多く残っている。このモスクも20世紀初頭に建造されており、当時のシャム王国のムスリムとオスマン帝国皇帝Abdul Hamid II との間で送られたイスラームへの忠誠を示す紋章をエントランスに残しており、必見だ。モスクはそのような関係からトルコの政府機関によって現在は改修されており、ドームのないフラットな天井に丸くオスマン様式の美しい装飾を施され、トルコからの白い大理石で造られた美しいミンバルとミフラーブをもつ。

Sultan Sulaiman Royal Mosque

Klang, Malaysia : クラン・マレーシア  イギリスの建築家Leofric Kestevenによって設計されたこの王立モスクは、アールデコ様式で建造されたモスクとしては珍しいキリスト教会に似た外観である。深い卵黄色に塗られたメインのドームを白い4個のサブドームが囲み、周囲には8本の小さなミナレットと中央のドーム手前に1本の背の高いミナレットをもつ。特にメインのミナレットには直線が強調されたアールデコのデザインを感じる。当時のマラヤではまだ珍しかった鉄筋コンクリート造りで完成は1932年。その後、2015年に内装と外装の改修が始まり2017年に完了している。独特の形状をした天井をもつアーチのアーケードを通り、ポーチから内部には入ると、金のドームを頭上に頂く木製のミンバルが目に入る。モスクであることは明白であるが、礼拝室の8角形の壁には直線的な幾何学模様のステンドグラスがはめられており、モザイクを通して照らされた光に拠るものなのか外装のデザインだけでなく礼拝室もキリスト教会の雰囲気を感じる。ドームの内側にもあまり例をみないカラフルなステンドグラスがはめられており、天井から光を通して輝いていた。

Al-Warqa'a Mosque

Dubai, United Arab Emirates : ドバイ・アラブ首長国連邦  ドバイ郊外の住宅地に佇むこのモスクを訪ねたのは、WEBサイトで見かけたミニマムなデザインの現代建築のモスクを見てみたかったからだった。外壁は砂漠の砂のオレンジ色の壁とシンプルなアーチで造られ、中庭を包む白い花の形のミニマムな幾何学パターンの内壁との間は回廊になっている。小さく開いた門をくぐると、真っ白な丸みを帯びた角をもつ長方形の中庭が広がり、3本の樹が植わっていた。隅に建つミナレットは外側の白い壁と同じパターンの円柱形だ。礼拝室のガラス窓とドアは、中庭とは外壁と同じデザインのアーチで区切られており、礼拝者の意識を外から門、中庭を経て礼拝室に入ることを意識させるという儀式を模したようだ。内部は2層に区切られ、天窓があり光が差し込んでいる。デッキ状の中2階は同じ幾何学パターンで装飾されているが、それ以外白いドームとミフラーブにも一切の装飾はない。外から見てもドームには何の装飾もない真っ白なものであった。実際に訪れてみて、このモスクのデザインはそぎ落としたミニマムさではなく、モスクの原点、礼拝の場としての機能と様式美をすべて併せもつ空間であることに気がついた。設計はドバイにある建築事務所Ibda DesignのWael Al Awar氏とKenichi Teramoto氏2人の建築家によるもの。門越しから中庭を見据えた空間が日本的に感じるのはそのためか、とても好きなデザインだ。

Msheireb Mosque

Doha, Qatar : ドーハ・カタール  ドーハの古い市場を改装したSouq Waqifのすぐ隣はMsheireb地区と呼ばれる再開発地区となっている。ツーリストで賑わう商業地区であるSouq Waqifから通りを隔てわずかに離れただけであるが、静寂の中にミナレットと白い石造りの立方体で構成された美しい現代のモスクが佇んでいた。外観は非常にシンプルで、長方形の敷地の正面に幾何学パターンで装飾された門と、先端に向かって細くなる円柱形のミナレットがある。門をくぐると屋根のある廊下に挟まれた吹き抜けの中庭があり、泉の奥に礼拝堂への大きな扉が開いていた。扉は高く、円形がモチーフの金のパターンで覆われている。デザインはイギリスの建築事務所であるJohn McAslan + Partnersによる。外観は直線的な現代建築であるが、モスクとして非常にわかりやすい、余分な装飾をそぎ落とした基本の伝統的なモスクの構成であると思う。残念ながら内部は見学できなかったが礼拝堂内部は照明を使わず、文様による採光と遮光のデザインがされているとのことで、過去のカタールのモスクとのつながりもモチーフであるようだ。

Dawatagaha Mosque

Colombo, Sri Lanka : コロンボ・スリランカ  コロンボ中心の車やバスや三輪タクシーが行き交う喧騒の中に、林立するムガール様式の白いミナレットと金色のドームをもつモスクが建っている。1885年完成の文字が刻まれた門をくぐると、いくつかの建物に分かれているのがわかる。向かって右側に表通りに面して建つ、小さなドームの付いた6本のミナレットのある建物が礼拝室となっていた。天井はフラットで2階がバルコニーとなっており、1階のみ見学ができたので最上階にある金色のドームは望むことはできなかった。入って中央すぐ右横には、頭上に緑色地に白い幾何学文様の入ったドームの付いた小さな部屋がある。この部屋は聖人であるSheikh Usman Waliullahの廟になっており、跪き祈りを捧げる人々が絶えない。ドーム内側はクリーム色に、内装は白と金で美しく装飾されている。入って正面の真ん中の少し背の高い塔には金色のドームが乗り、内側は濃いグリーンに塗られている。塔は吹き抜けで、1階から頭上のドームを見上げることができた。この棟は他のモスクとは違う特徴でもある、民間伝承の信仰の場になっており、油のランプが置かれている。その奥の部屋も表通りからは見えなかったが小さなドームをもち、内側は淡いグリーンの光で照らされていた。ここでは油売りの女性が油の鍋を壊してしまい、稼ぎがなくなり途方に暮れて眠りについてしまったところに緑の衣の老人が現れ、彼女を救うため油を地面から噴き出させたという奇跡が語り継がれている。そのため、非ムスリムであっても油ランプの部屋に緑の布を結びつけ願いを祈るために訪れるという珍しいモスクとなっている。

Hajjah Fatimah Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  その名はモスク建造の土地を提供した実業家Hajjah Fatimah氏より取られ、女性の名がつくモスクは珍しいのではないかと思う。1846年に完成し、デザインはムーア様式と西洋建築の折衷で、ベランダのついた3段のミナレットは教会の尖頭を模しているようでもある。そのミナレットは全体を俯瞰すると心なしか傾いて見えるのであるが、錯覚ではなく本当に傾いており、工事でこれ以上倒れないように止めているとのこと。金色のドーム内部は淡い緑色で塗られ、尖塔形をした教会風でもある緑色のステンドグラスが明り取りにはめ込まれている。ファサードは市内に立ち並ぶショップハウスでも馴染みのオレンジの瓦屋根も覗かせており、実にいろいろな要素が感じられるモスクだ。