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Al-Warqa'a Mosque

Dubai, United Arab Emirates : ドバイ・アラブ首長国連邦  ドバイ郊外の住宅地に佇むこのモスクを訪ねたのは、WEBサイトで見かけたミニマムなデザインの現代建築のモスクを見てみたかったからだった。外壁は砂漠の砂のオレンジ色の壁とシンプルなアーチで造られ、中庭を包む白い花の形のミニマムな幾何学パターンの内壁との間は回廊になっている。小さく開いた門をくぐると、真っ白な丸みを帯びた角をもつ長方形の中庭が広がり、3本の樹が植わっていた。隅に建つミナレットは外側の白い壁と同じパターンの円柱形だ。礼拝室のガラス窓とドアは、中庭とは外壁と同じデザインのアーチで区切られており、礼拝者の意識を外から門、中庭を経て礼拝室に入ることを意識させるという儀式を模したようだ。内部は2層に区切られ、天窓があり光が差し込んでいる。デッキ状の中2階は同じ幾何学パターンで装飾されているが、それ以外白いドームとミフラーブにも一切の装飾はない。外から見てもドームには何の装飾もない真っ白なものであった。実際に訪れてみて、このモスクのデザインはそぎ落としたミニマムさではなく、モスクの原点、礼拝の場としての機能と様式美をすべて併せもつ空間であることに気がついた。設計はドバイにある建築事務所Ibda DesignのWael Al Awar氏とKenichi Teramoto氏2人の建築家によるもの。門越しから中庭を見据えた空間が日本的に感じるのはそのためか、とても好きなデザインだ。

Msheireb Mosque

Doha, Qatar : ドーハ・カタール  ドーハの古い市場を改装したSouq Waqifのすぐ隣はMsheireb地区と呼ばれる再開発地区となっている。ツーリストで賑わう商業地区であるSouq Waqifから通りを隔てわずかに離れただけであるが、静寂の中にミナレットと白い石造りの立方体で構成された美しい現代のモスクが佇んでいた。外観は非常にシンプルで、長方形の敷地の正面に幾何学パターンで装飾された門と、先端に向かって細くなる円柱形のミナレットがある。門をくぐると屋根のある廊下に挟まれた吹き抜けの中庭があり、泉の奥に礼拝堂への大きな扉が開いていた。扉は高く、円形がモチーフの金のパターンで覆われている。デザインはイギリスの建築事務所であるJohn McAslan + Partnersによる。外観は直線的な現代建築であるが、モスクとして非常にわかりやすい、余分な装飾をそぎ落とした基本の伝統的なモスクの構成であると思う。残念ながら内部は見学できなかったが礼拝堂内部は照明を使わず、文様による採光と遮光のデザインがされているとのことで、過去のカタールのモスクとのつながりもモチーフであるようだ。

Dawatagaha Mosque

Colombo, Sri Lanka : コロンボ・スリランカ  コロンボ中心の車やバスや三輪タクシーが行き交う喧騒の中に、林立するムガール様式の白いミナレットと金色のドームをもつモスクが建っている。1885年完成の文字が刻まれた門をくぐると、いくつかの建物に分かれているのがわかる。向かって右側に表通りに面して建つ、小さなドームの付いた6本のミナレットのある建物が礼拝室となっていた。天井はフラットで2階がバルコニーとなっており、1階のみ見学ができたので最上階にある金色のドームは望むことはできなかった。入って中央すぐ右横には、頭上に緑色地に白い幾何学文様の入ったドームの付いた小さな部屋がある。この部屋は聖人であるSheikh Usman Waliullahの廟になっており、跪き祈りを捧げる人々が絶えない。ドーム内側はクリーム色に、内装は白と金で美しく装飾されている。入って正面の真ん中の少し背の高い塔には金色のドームが乗り、内側は濃いグリーンに塗られている。塔は吹き抜けで、1階から頭上のドームを見上げることができた。この棟は他のモスクとは違う特徴でもある、民間伝承の信仰の場になっており、油のランプが置かれている。その奥の部屋も表通りからは見えなかったが小さなドームをもち、内側は淡いグリーンの光で照らされていた。ここでは油売りの女性が油の鍋を壊してしまい、稼ぎがなくなり途方に暮れて眠りについてしまったところに緑の衣の老人が現れ、彼女を救うため油を地面から噴き出させたという奇跡が語り継がれている。そのため、非ムスリムであっても油ランプの部屋に緑の布を結びつけ願いを祈るために訪れるという珍しいモスクとなっている。

Hajjah Fatimah Mosque

Singapore, Singapore : シンガポール・シンガポール  その名はモスク建造の土地を提供した実業家Hajjah Fatimah氏より取られ、女性の名がつくモスクは珍しいのではないかと思う。1846年に完成し、デザインはムーア様式と西洋建築の折衷で、ベランダのついた3段のミナレットは教会の尖頭を模しているようでもある。そのミナレットは全体を俯瞰すると心なしか傾いて見えるのであるが、錯覚ではなく本当に傾いており、工事でこれ以上倒れないように止めているとのこと。金色のドーム内部は淡い緑色で塗られ、尖塔形をした教会風でもある緑色のステンドグラスが明り取りにはめ込まれている。ファサードは市内に立ち並ぶショップハウスでも馴染みのオレンジの瓦屋根も覗かせており、実にいろいろな要素が感じられるモスクだ。

Mohammed Al Ameen Mosque

Muscat, Oman : マスカット・オマーン  赤茶けた岩山をすり抜けるハイウェイの向こうに真っ白な大理石に覆われた荘厳なモスクが建つ。モスクの大きさに比べ門のある表庭以外の周囲のスペースは少なく、高さを感じさせる立体的で重厚な造りの壁はまるで城砦や船のような印象であった。館内には図書館や教室も擁するという。高台に建っており、緻密な透かし彫りのアイボリー色をした3個のドームと84mの2本のミナレットはかなり離れた場所からもよく目立つ。特に夜になるとライトアップされ岩山に浮かぶ幻想的なドームをSultan Qaboos Stからも望む機会があるかと思う。

Shaikh Isa Bin Salman Al Khalifa Grand Mosque

Muharraq, Bahrain : ムハラク・バーレーン  故バーレーン初代首長の名を冠した、2016年完成の白い透かし彫りと照明のついたドームをもつモスクだ。敷地に入ると一番最初に高さ45mのミナレットが目に入り、1本のアーチの廊下でエントランスへ繋がるという造りになっていた。800人以上を収容するメインドームのある礼拝堂は、中庭に面する大きな扉のメインエントランスとアーチのあるポーチをもち、頭上には小さな八角錐のガラスドームが収まっていた。中庭をはさみ対面にはマジュリスと呼ばれる集会所や図書館が入った建物がある。庭の周囲は美しいストライプ模様と彫刻で装飾された柱をもつ回廊に囲まれ、アーチが美しく並んでいる。ドームは夜間になり下地の照明が灯ると文様が浮き出てくる仕組みになっている。

Al-Ismaili Mosque

Wakaf Bharu, Malaysia : ワカバル・マレーシア  敬虔なムスリムの多いマレー半島東海岸にあるクランタン州ワカバルにあり、この街は地域最大のコタバル市街に川を挟んで接している。クランタン州内の街の看板はアラビア文字をもとにしたジャウィ文字も併記されており、イスラーム世界を強く感じた。このモスクはコタバルから向かうとケランタン川に架かる橋を越えた少し先にあり、1500人を収容する礼拝堂の白い壁に金色の光り輝く大きなドームが映えて見える。マレーシアでは珍しいことにミナレットは5本もあり、ムスリムの義務である五行(五つの行動)がテーマになっているとのことだ。ドームは大小合わせ合計で6個あり、こちらもムスリムが信じる六信(六つの信条)から来ているとのことである。

Gazi Mehmet Pasha Mosque (Bajrakli Mosque)

Prizren, Kosovo : プリズレン・コソボ  1563年から1574年にかけて、モスクやマドラサ(高等学校)、図書館などで構成される複合施設として建造された。周囲にはオスマン時代のハマーム(トルコ式の浴場)や他のモスクなどの歴史的建造物が集う。デザインは伝統的なオスマン様式により、正方形の礼拝堂は3方をポーチに囲まれ、上部は8角形の台座にドームをもつ。ポーチを覆う大きな屋根は茶色の木製で白い壁やアーチとのコントラストが映える。内部のミフラーブとミンバルは大理石で造られており、壁の塗装は1996年に大規模な修復を受けて今に至る。

Sinan Pasha Mosque -Gazimagusa (Famagusta)-

Gazimagusa (Famagusta), Northern Cyprus : ガジマウサ (ファマグスタ)・北キプロス  Church of Saint Peter and Paulを転用したゴシック様式のモスクであったが、すでにモスクとしては使われていない。その名は現在もモスクのままであるが、展示などの市民のためのスペースとして使用されており、内部は自由に見学できる。原型の教会は商人の寄付で1369年にかけて建てられた教会で、その後の1571年のオスマン帝国の侵攻によってモスクへと改変・改名された。その後も引き続きモスクであったのではなく、穀物倉庫として利用された時代もあった。外観はほぼ教会の姿から変化しておらず、教会の身廊と側廊の壁を支えるための頑強なフライングバットレスが2段で列になって並んでいる姿は勇壮である。リブヴォールト天井や側廊尖頭アーチは形状もそのままを保っており、唯一モスクらしいのはミナレットを付け足されていることだ。しかし後に崩壊してしまい、現在は途切れた状態のままで修復されている。また、中庭にはオスマン帝国の政治家高官・大使のMehmed Efendiの墓が残されている。

Kamalun Islam Mosque

Bangkok, Thailand : バンコク・タイ  バンコク郊外のムスリムが多く住むミンブリー地区近くにある、バンコクでは比較的大きなモスクで1,000人を収容する。当時のタイのSai Buri、現マレーシアのケダ州からの移民達が荒地に村を開き、現在のモスクは改築後の姿であるがその原型を200年ほど前に建造したという。センセープ運河と呼ばれる運河沿いに建ち、この流れは遥か遠くバンコク市内中心まで続いている。過去には運河を行くラーマ5世国王(在位1868-1910)の乗る船が偶然故障してしまい、岸に上がった際に改築中のモスクを訪れたというエピソードがあった。ドームは白を基調に緑と黄で塗られたメインドーム、緑が基調のミフラーブ上に置かれたサブドーム、またエントランス側の3本あるミナレットの真ん中の1本に小ドームが配置されている。内部はチーク材の天井をもち、2個のドームのガラスを通して淡く緑に照らされ、柱や窓のアーチが整然と並んでいる。全体に装飾は控え目ですっきりとしているが、それゆえにガラスのパターンが際立って見えた。茶と白で塗り分けられた窓の扉だけはイスラーム様式でなく、タイ様式のパターンを取り入れているようだ。