琥珀色の石壁と青いドームの色調が特徴のオスマン様式のモスクで4本の72mの高さのミナレットをもつ。故ラフィク・ハリリ首相の尽力で建造され、彼の暗殺後2008年になって公開された。外壁の装飾は少なくシンプルで直線的な面で構成されており、洗練された印象を与える。礼拝堂内部は外見と打って変わり荘厳で、緻密なオスマン様式のドームのパターンに目を奪われる。設計はレバノンの建築家Azmi El Fakhouri氏によるもの。
ロケーション:ベイルート市内の旧市街中心にあり、近辺のホテルから徒歩で訪れた。旧市街との名ではあるが、周囲は戦争後の再建で復興した新しい建築物が立ち並ぶ。
Dubai, United Arab Emirates : ドバイ・アラブ首長国連邦 Dubai International Financial Centre (DIFC)は何棟にも及ぶオフィスタワーが連結した複合施設である。各々が連結しており、そのうちのGate Avenueと呼ばれるショッピングモールの屋上にあたる中庭に、ビルを背景に現代建築風の白いモスクが佇んでいる。まさかモールの屋上にモスクがあるというシチュエーションが分からず、訪れた時は地上の通りから周囲を探し、頭上遥か上にミナレットとそれらしき建物が見えた時は驚いてしまった。Gate Avenueのランドスケープは、世界各国で超高層建築や巨大施設を設計するイギリスの建築事務所であるRMJMが手掛けている。同じくモスクもRMJMによって設計されており、壁はガラスとそれを覆う斜めにカットされた白いパネルで覆われている。覆いはミナレットと同じく穴の開いたイスラーム文様で、アラビア半島の中層住宅建築で見かけるマシュラビヤと呼ばれる窓の覆いをヒントにデザインされたとのこと。換気と採光とプライバシーの守秘を同時に行う機構で彫刻や格子で飾られているものであるが、伝統建築を現代建築にミックスして甦らせるアイデアは面白いと思う。
Kuala Terengganu, Malaysia : クアラトレンガヌ・マレーシア クアラトレンガヌにあるイスラーム文化を紹介する公園に接する海上に、鋼とガラスでできたそのイメージから「クリスタル」の名のモスクがある。2008年完成、4本のミナレットをもつ。ガラスは角度によって光線と反射の加減で金色から黒へ変化し、不思議な色合いを見せていた。礼拝堂内からガラスのドームを見上げると色は付いておらず透明な光が祈りの場所を照らす。内部は白と金・黄色を基調にした幾何学と植物の文様が使われ、礼拝所を囲むガラスの壁も装飾され外光に文様が浮かび上がる。
Selangor, Malaysia : スランゴール・マレーシア クアラルンプール国際空港(KLIA)と市内を結ぶバスに乗るとちらりと見えて過ぎ去っていくのだが、際立った配色の大きなドームが記憶に残っていた。空港施設の一部として造られた正に空港モスクとしての立ち位置なのであるが、空港のターミナルからはだいぶ遠く離れていて、KL市内からは車で気軽に訪れる場所でもなくどんな人が行くのであろうかと思い訪ねてみることにした。モスクに着いた時点では、駐車場には車がたくさん止まっており、また大勢のアラブ系観光客の礼拝者が団体でモスクのエントランスにいて、観光バスも何台か止まっていた。車は地元の礼拝者か空港関係者であろうか、それ以外にも観光ツアーで自国への帰路途中に、礼拝の立ち寄りに利用されているようである。完成は2000年、名称はスランゴール州の故第4代スルタンの名から取られた。花が咲き乱れる庭園のような庭から、両端に2本のミナレット、正面のエントランス上にサブドームと、礼拝堂頭上に大きなメインドームが見える。メインドームは明かり取りのガラスが黄色い植物文様で縁取られ、頭頂部はターコイズの色の格子のパターンで飾られており、その台座は正方形をずらして重ねたようなイスラーム式の八芒星をしている。エントランスを入りそれを抜けると、円弧型に切り取られた空と屋根のついた回廊が突然現れる。中庭の向こうに先ほど外庭から見たメインドームがまたもう一度見え、視覚的な効果としても面白いのだが、実は空から見ると前述のドーム台座の「星」と弧の「月」が組み合わさったデザインになっている。航空機に乗って上空から眺めた姿をイメージしていたのだろうか。ドームの明かり取りの内側はステンドグラスになっており、透過するカラフルな光が白い荘厳な礼拝堂を鮮やかに照らしていた。
Kota Kinabalu, Malaysia : コタキナバル・マレーシア 1975年に完成した、5,000人を収容する州立モスクである。グレーと金の六角形のハニカム状のモザイクに覆われたドームに、金色の小ドームを据えたどっしりとした16本の柱が6角形の礼拝堂を囲んでいる。鉛筆型のミナレットは約65mの高さで3段のバルコニーをもち、礼拝堂の内部から天井のガラスを突き抜けるように聳え立つ。重厚さが独特の設計はDato' Ar. Hj. Baharuddin Abu Kassim氏率いるマレーシアの建築事務所であるJurubina Bertiga Internationalによるものだ。彼らはこのモスク以外にも Sultan Salahuddin Abdul Aziz Shah Mosque (ブルーモスク)や An-Nur Jamek Mosque などの著名なモスクも手掛けている。ドーム内側は茶色に塗られ金のカリグラフィーが映える美しいデザインだ。
Mostar, Bosnia and Herzegovina : モスタル・ボスニア ヘルツェゴビナ 1557年完成のオスマン様式のモスク。オスマン帝国支配下のモスタルで、数々の施設の建設を後援していたMehmed Bey Karadjozにより建てられその名を残した。建築の計画にはトルコの天才建築家ミマール・スィナンが携わっていたともいう。正面に3つの小ドームと大ドーム、鍾乳石状の装飾で支えられたバルコニーの付いた34.5mのミナレットをもつ。ボスニア内戦時にはミナレットも含めかなりの損傷を受けたが、修復された。礼拝堂内部は石灰岩で構成され、壁面の装飾は植物をデフォルメしたアラベスク模様でなく、実際の形状に近いままの植物類の絵が描かれている箇所もあり面白い。
Johor Bahru, Malaysia : ジョホール バル・マレーシア 重厚な英領コロニアル建築のモスクが、シンガポールとの海峡を見下ろす小高い丘に建っている。寄棟造りの大きな屋根をもつ礼拝堂にメインドームはなく、天井はフラットである。礼拝堂は長方形で左右対称であるが、建物自体は庭を前から見て左側が長い。ミナレットは4本あり、うちメインの2本はファサードと裏庭の側玄関の礼拝堂に張り出している。大きなアーチで車寄せを造り、その上に小さなドームの載った8角形のミナレットが建つ。最上階には丸い窓、ドームには冠のようにキューポラが載り、ミナレットらしかなるイギリスの時計台風の荘厳なデザインであるが、インドのムガール・ゴシック建築の折衷も感じられる。礼拝堂への訪問はできなかったが、開いたドアから金色の天井を少しだけ見ることができた。名称となったSultan Abu Bakarはイギリスのビクトリア女王と関連が深く、その治世である、ビクトリア時代に影響された建築がジョホール州に多く造られており、このモスクもその影響下にある。その名を冠したモスクが完成したのは1900年のことであるが、本人は完成を待たず滞在中のイギリスで亡くなっている。