ムガール様式で建造されることが多いインドのモスクの中で、異彩を放つムーア様式建築のモスク。スパニッシュ・モスクという別名でも呼ばれ、ハイデラバードの貴族らとその一人Iqbal Ud Daulaによって建造が始まり、1906年に完成した。モスクの名にもなった彼がイベリア半島を旅行中に見たムーア様式建築に感銘を受け、それをインスピレーションにデザインされ造られたという。そのため、通常のモスクにあるような円柱形の高いミナレットやドームはなく独特な八角形の尖ったデザインの尖塔型のミナレットをもつ。
ロケーション:ハイデラバードの中心にある湖、フセイン・サーガルの北側にある。歴史建造物のある観光客の集まる地区とは反対側で、公共の交通機関は分からずオートリキシャで訪問した。
Sarajevo, Bosnia and Herzegovina : サラエヴォ・ボスニア ヘルツェゴヴィナ サラエヴォ市内のオスマン帝国時代の建築が多く残る旧市街から少し離れた場所にこのモスクはある。中低層の建物や新しいショッピングモールなどが建つエリアであるが、このモスクだけは広く緑地が取られ樹木が立ち並ぶ中で静かに佇んでいる。オスマン帝国時代の高官であるハディム・アリ・パシャが名の由来であり、オスマン様式で建築され1561年に完成した。1本のミナレットと1個の大ドーム、回廊の上部に3つの小ドームをもっている。ボスニア内戦時に損傷を受けたがその後改築された。メインのドームの内側を飾る装飾はなく、白く塗られたドーム周囲に窓枠とそれを模ったデザインの枠があるのみ。控えめなデザインが美しい。
Doha, Qatar : ドーハ・カタール ドーハ市内のやや郊外の住宅地に位置する、地元で愛されるような何気ないモスクであるのだが、実にフォトジェニックな水場のあるミナレットをもつ。モスクは2004年に完成、アラブ様式で1本のミナレットとメインドーム、それに中庭側の両脇に小さな2個のサブドームがあるシンプルなデザインである。特徴のある水場は目の前の通りからすぐに見え、赤・黄・緑、それにターコイズブルーの小さなタイルが色とりどりに並べられ、外側を同じターコイズブルーに金のカリグラフィーを描いた大きめのタイルが囲んでいる。少し残念なのは小さなタイルの一部が剥がれ落ちてしまっているのではあるが、それはご愛嬌。トルコ文化圏で見かけるような公共の飲用の水なのか手を洗うだけの場所なのかよくわからなかったが、礼拝前の清め(ウドゥ)の水場は中庭にきちんとある。モスクはコの字で囲まれるように3本の通りに面して建っていて、水場のあるミナレットとミフラーブのある裏側には小さなエントランスがあり、そのアーチをくぐると中庭に出る。中庭を区切る飾りのアーチを抜けると礼拝堂のドア、その向かいにはもう1本の通りへ出る大きな正門がある。デザインは最近ではAl Thumama Stadiumやカタール最大級の Imam Muhammad Ibn Abd Al-Wahhab Mosque(State Grand Mosque) などを設計した、カタールの建築事務所のAEB:Arab Engineering Bureauによるものある。アラビア半島だけでなく各地で大きなプロジェクトを建造しているが、このような無名といってはなんであるが小さなモスクも手掛けている。CEOでチーフの建築家はIbrahim M. Jaidah氏であるが、モスクの名前はJaidah Mosqueと名付けられている。
Bandar Labuan, Malaysia : バンダルラブアン・マレーシア マレーシア・ボルネオの連邦直轄領であるラブアン島に、この宇宙船の発着場のような不思議な形のモスクがある。外装はほぼグレー、そして白、黒だけで構成されている。当初ラブアン島が属する旧サバ政府にて建設計画が始まったが技術的な事情で延期の後、ラブアンが直轄領となり連邦政府の元で1987年に完成したという。2本の管制塔のようなミナレット、鋸の刃状の文様が入るドーム、それを支える丸い膨らみをもったモスクの屋根、半円に切り取られた格子状の採光の窓、船のような直線的なカットの事務所棟(図書館などがあるという)、という近未来的な形状をしている。内部は外見と異なりターコイズブルー単色に塗られたドームに茶色の壁という構造だ。構造から天井が非常に高く見え開放的だが、色調から落ち着いた感じである。
Bishkek, Kyrgyzstan : ビシュケク・キルギスタン 2017年に完成した、2層の礼拝室で5,000人を収容するという、ビシュケクでも最大級のモスクである。11世紀にキルギスタンに住んでいたという言語学者、マフムード・カーシュガリーの名が付けられた。ファサードはクリーム色とこげ茶色のコントラストが美しい立体感のある植物文様のアラベスクで覆われている。デザインは東方アジアのイスラームとアラブのデザインを合わせ、石を切り出したそうだ。内装も植物文様をふんだんに使っていて、ドーム内側の格子状に区切られた文様は見事だ。
Bar, Montenegro : バール・モンテネグロ アドリア海の港街バールの旧市街に、モンテネグロ=「黒い山」の国名どおりの黒い山々と空に向かって聳えるミナレットが映える美しいモスクがあった。全体の外装はベージュでアーチだけに赤茶色のストライプを配し、ドーム外装はすべて黒、幾何学文様はなく、わずかに鍾乳石飾り(ムカルナス)を模したデザインが隅に見られるほどの整然としたデザインだ。中心にあるモスクは2本の高さ42mのミナレットをもち、施設内に1,800人を収容する。トルコ政府機関の資金協力で完成した。モスクは湾曲した回廊に囲まれ、回廊には幼稚園・ハラールレストラン・図書館・ホールなどがあり、祈りの場としてだけでないイスラーム文化継承のための複合施設となっている。中庭は広く取られ、ヨーロッパの街角で多く見かけるオープンカフェとなっており人々が憩いに訪れていた。
Aqaba, Jordan : アカバ・ヨルダン アカバ市内の中心にあるモスクで、1975年に完成したアラブ様式のモスク。モスクのエントランスは中庭を囲む回廊の一部で、そこから中へ入ると水場のある大きな中庭になっており、その先に礼拝堂のエントランスがある。中庭は天井に幕を張っており、日陰になっているが写真の撮影が難しく、訪問後は背後の高台へ向かっていく庭園側へ登り、全景の写真を撮った。長方形の礼拝堂は幅が随分と広く、天井には1個のメインドームを抱く。ミナレットは8角形で3段のバルコニーをもち、中庭に隅に建つ。ミフラーブ、ミナレット中段とドームの外装は鋸歯状の波線文様で装飾されている。モスクの名はオスマン帝国への蜂起、独立運動の指導者であり、現ヨルダン国王家の先祖でもある故Sharif Hussein bin Aliから採られている。
Kuala Lumpur, Malaysia : クアラルンプール・マレーシア クアラルンプール市内を巡るKLモノレールの車窓から、美しいアラベスクを描かれたドームを見かけたツーリストも多いのではないかと思う。このモスクは、クアラルンプールのイスラーム美術館創設も手掛けた、マレーシアAl-Bukhary財団によるもので、白いミナレット、ブルーと黄色が冴えたコントラストのドームが街並みから際立って目立つ。ドームの文様はイラン・イスファハンのShah Mosque、王のモスクやイマームのモスクなどとも呼ばれる、からインスパイアされたもので、またミナレットの形状はマディーナの預言者のモスクからのものだ。この構成は同じ財団が建造したアロースターにある同名の Al-Bukhary Mosque にも採用されている。現在このクアラルンプールのモスクのドームは、塗装の修復後に以前より青みが強いものになったが、以前はやや緑がかったイランのオリジナルに近いターコイズ色をしていた。ちなみに前述のイスラーム美術館のドームにも類似の文様を採用しているのは興味深い。礼拝堂内部は金のカリグラフィー以外はほぼ真っ白でドーム内部は花や植物のモチーフが彫刻されている。